第9話

  オレはずっと、家が嫌いだった。否、家だけじゃなくてババァも嫌い。親父と祖父は別にどうでも良いけど、ババァは嫌いだった。

小さい頃からオレに「将来は当主になるんだよ」と言い続けていた。まぁ、家を継ぐことを望まれていたのだろう。

本来、当主になる子は霊力が高い方が良い。真央も霊力が高いが、オレの方が高かった。

オレが死んでから夏谷家の当主は真央になったけど。

 オレ達には能力がある。水と氷、真央が操った水をオレが凍らせる。今はコンボ技として使うことが多いけど昔は、、、それこそ生きていた時はオレだけで戦っていた。後ろで怖がる真央を守りたかったから。

 それなのに、ババァは真央をののしった。夏谷家に生まれていながら憑き物を怖がるなんて、そう言いたいのだろう。

『、、、巫山戯ふざけるな』

真央は優しい子だ。

優しい、ただの子供なんだ。

それに関しては、誰よりも深く知っている。

「兄さま?どうしたの?」

『何でもない、、、』

 お前が十歳の頃、ババァに折檻せっかんされて座敷牢に閉じ込められた時、怖くて、泣いていたよな。何度も「兄さま助けて!」ってオレに助けを求めたよな。力尽きて起き上がれなくなって、床を爪で引っ掻いていたよな。ごめんな、助けてやれなくて、、、。

もそうだ。お前を悲しませて、ババァから冷たく当たられるようになった原因を作ってしまったのは他でもない、オレなのだから―――。

 真央が好きだから、この世の誰よりも愛しているから、、、だから、頼む。お前は生きてくれ。

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