戦場でハッピーバースデイ
霜月 識
第1話 Happy birthday 戦争
銃弾が飛び交うところ、人の死が当たり前なところ、価値観や倫理観、感情が壊れていくところ。
それが僕の今の仕事場、戦場。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…。」
この戦争は、ちょうど今日で三年目。そして、僕の二十四回目の誕生日でもある。
「ハァ…、戻りました。」
「おう、戻ったかロス。」
この人はハリマン大佐。僕の上司であり、ここメイーリー地区の僕たちカルア軍を仕切っている指示者でもある。
「お前たち斥候部隊のおかげで結構相手を押し返せた。よくやったな。」
「ありがとうございます。」
「うし、今日はもう休め。」
「はい。」
そうして僕は、簡易テントに入った。
「はぁ…、疲れたなぁ。」
そんなことをぼやいていると、
「…いつ終わるんだろ、こんなくだらないこと。」
反射的に僕は口を塞ぎ、テントの周りを見回した。
「危ない…。」
(こんな発言したら非国民だと捉われかねない。)
だが実際にそうなのだ。開戦から三年も経っているが、いまだに終わる気配がない。
「はぁ、こんなこと考えだしちゃキリがない。もう寝よ…。」
戦争三歳の誕生日はそれで閉じた。
次の日、その日は朝から慌ただしかった。
「なんだって⁉イレキ軍が本隊と接触して手薄なこっちから攻めてくるだと⁉」
「なんですって⁉」
(本隊がこっちに来られたら終わりだ。全滅する!)
「大佐!」
「なんだ!ロス!」
「僕たちが時間を稼ぎます!あなたたちはそのうちに本部に!」
「ばかやろう!お前らだけ置いていけるか!」
「大丈夫です。こっちにはマキがいます。」
マキとはこのメイーリー分隊最強といわれている男だ。
「くっ…、分かった。その代わり生きて戻れよ!」
「守りたいですが、ちょっとできなさそうな相談ですね!」
「じゃあな!」
そう言って、大佐は行った。
「さて、お前ら。大佐にあんなタンカを僕は切ったわけだが。見てみろ。手の震えが止まらない。」
「……。」
「だけど、お前らがいれば勝てる!絶対に勝って突破するんだ!」
「……!」
「行くぞ!」
「おーー!!!」
その場にいた者全員が鬨の声をあげた。
しかし、結果は惨敗だった。人数の差であっという間に全員殺された。
「う…、み、んな…。生きてるか…。」
返事は帰ってこない。
「みんな…?おい…、おい…!」
力を振り絞り立つと、全員、体という入れ物が壊れていた。
内臓はぐちゃぐちゃになり外に出て、骨は折れてむき出しになっていた。
「あ、あ…、あああああ……、あああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
その時やそのあとの記憶は少 とんで る。出し 声がじぶ の声なのか、笑ってい のか泣いている か、今の僕にはどうでもいいことだっ 。
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