第4話 街めぐり
魔法少女は俺にとって神に等しかった。
そんな神と一緒に世界を守りたかった。
それなのに、今の俺は魔法少女という名の悪魔と契約してしまっていた。
闇堕ちを報告しない代わりに、命と立場、そして、魔法少女としての活躍を保証するという契約を。
「──ねぇ、どっちが似合ってる?」
ここは俺には全く無縁のオシャレなアパレルショップ。
そんな場所に、俺と竜華は来ていた。
これは俺と竜華との契約の一部だった。
竜華は俺とストレス解消をすることで、ペンダントの濁りを治すことができる。
そのストレス解消の一環が、毎回恒例の街巡りだった。
15歳の中学生と20歳を超えたおじさんが街巡りをする。
そんなできる限り取りたくない不健全なリスクを、俺は取らざるをえなかった。
そうしなければ、竜華のペンダントの濁りは治らないから。
「監督、私の話全然聞いてないよね……」
そんなことを考えながらボーっとしていると、いつの間にか試着室から竜華が出てきてしまっていた。
俺は意識を取り戻し、目の前に立つ竜華を見つめる。
竜華は怒ってはおらず、ただ酷く乾いた瞳で俺を見つめていた。
「す、すまん! ……あ、ああ、うん。いいと思う。凄く似合ってるぞ」
俺は気を取り戻し、なんとか笑顔を作り竜華にそう言った。
実際、竜華の着ている赤いワンピースは竜華にとても似合っていた。
まぁ似合ってなくても、似合ってるって言ってたけど。
しかし、この際どうでもよかった。
「そう……」
竜華はそう小さな声で答えると、そのままレジの方へ歩いて行った。
その反応は竜華が満足しているのか、それとも逆に怒られてしまっているのか。
俺には全く判断がつかなかった。
************
俺は竜華の機嫌を良くできないまま、数時間に及んだ街巡りを終えてしまった。
結局、竜華は赤いワンピースのみを購入し、その他に見回ったものは買わなかった。
女子中学生がいかにも欲しそうなアクセサリーもグッズも、竜華は一切買わなかった。
今回、俺は考え事をしすぎていた。
濁る周期が明らかに短くなっていることの焦りが、俺の脳内にずっと残り続けていた。
そのせいで、俺は全く竜華との街巡りに集中できなかった。
帰る途中、竜華にペンダントを見せてもらうと、半分あった濁りは見分けがつかないほどにしか治っていなかった。
「監督、焦ってるんでしょ? 私が闇堕ちするかもって」
そんな帰り道の電車の中、俺の向かいの席に座る竜華はそう呟いた。
俺は竜華のあまりに図星な指摘に、思わず吊革を強く握り締めてしまう。
「それはそうだ。1ヶ月に1回のペースで濁ってたら、いつその日が来てもおかしくない」
俺は誤魔化さず、竜華に本心を伝えた。
「その日が来るかは、監督次第よ」
竜華はそう言って、膝上のスマホに視線を落とした。
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