これは、ある友人のお話。

　私なりの"友人の定義"なるものがあった。

　定義にそぐわ無い者は、友人とは言えない。

　他人の趣向や興味に"価値の有無"を見出さ無いこと。それが私の定義だ。

　では万が一の場合、友人では"なくなった"者とは、どう接するのがいいのだろうか。関係を断つ、それとなく距離を置く、一度話し合ってみる。様々な接し方が見つかるだろう。まあ、私なら——慈悲深い私であれば、慈善活動に使おうと思う。

　ねずみ、と呼ぶ友達がいた。あまり良い響きではないだろうが、それは彼が自分の呼称に対する命名権を私に売ったので仕方がない。彼は人一倍好奇心が強いくせに、いつも金が無かった。野鼠のようにキョロキョロと這い回るように、意地汚く刺激や興奮を求めて出かける様があだ名の由来となっている。まあ、言うなればそういったものの中毒になってしまっているのだ。どうしようもない。

　ねずみからある時メッセージがあった。海外にいるんだが、金がなくなった、と。売れるものは売ったかと聞くと、衣食住までは、と返ってきた。

　すぐに電話をかける。帰ってきたら支払えよ、と前置きして、名前、借りている部屋、必要そうな性格や家族構成をいくつか挙げて、電話を切る。十分後に変なメッセージが届いた。

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　熱を冷まし形作る基をもつということは、真冬の生まれではないでしょうか。すると、カードが示すには、貴方はアメシズムの遣いと推測できます。オーラの観点から言えば、七耀色支のうち、紫と白のちょうど間に当たります。基と七耀色支が重なり合う形になりますので、絶対使命の数は多いですが、三つとなるでしょう。

　一、セレネの糸車。集めて照らす使命

　二、フォアルスの銀糸、注目を受ける使命

　三、ディアソスの手綱。まとめて自然的に導く使命

　アメシズムの遣いの方は、光を注がれて輝く性質が存しています。あなたには、光、すなわち太陽のような、はつらつとした行動や楽しいことを享受し体現していくことで、さらに内側からの輝きを放つことができます。使命のうち、一、二は前述の行動、そしてそれらを整える"三"を務めとして行うことで、あなたが発する光は反射し、また次へ、と拡散されていくことでしょう。

　耀阿暗示占告専門セメステア　代表佐藤

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　紐解いていけば連想ゲームのような取るに足らない言葉遊びなんだろうが、大学を読者のために二回も留年しただけある、それらしくなっていて思わず笑ってしまった。

　数日後すぐに帰ってきたねずみに未払いの件で呼び出されたところ、会うなり、売り物も遊び場で楽しくやってたぜ、まあこっちには無いから戻らんかもな、と言ってきた。まあ、現地で美味しくサラダでも楽しんでるならいいか。澄んだ空の下では草がよく育つだろう。運命的に、最適だろうなあとタバコを押し消しながら思った。

「で、今回は何で払わせてもらえるんすかね」

「いや、いいよ。手数料ってことで」

　え、と疑問を音にしたままポカンと立ち尽くすねずみを背に、右手を振って駅に戻った。今夜のお店はかぼちゃのラビオリがあるらしい。なんていい日だろう。