うつら綴

辺伊豆ありか

仕事ができない奴という

 私の働く先でも、仕事のできない奴、と言われる人が何人かいる。

 「できる」とはすごく曖昧な表現だ。何が「できている」のだろうか。成果を上げているのか、円滑に進むよう各々に気を配れるのか。はたまた、あっと驚くような策略を練り実行する力があるのか。「できる」で表せられる内容を並べてみればキリがない。私の場合——しがない料理人にしてみれば、まあ盛り付けが素早いだとか、現時点ですべきことへの判断が早いとか、そういったことになるだろう。レシピに忠実な店で、一、二年も働けば嫌でも仕事の8割は迅速な判断と細かなルーティンだと気づけるはずだが、悲しいかな、狭い所で働く者の幾つかは、仕事の慣れを能力の著しい向上と勘違いし、他人を「できる」か否かと見極める側の人に成ったと思い込んでしまうようだ。


 人それぞれ、仕事に於いて譲れぬ点は異なる。その人が何を軸に動いているかを見ずに、あいつは仕事ができない、などとは言い切れないものだ。他人が何故その行動を取るかに着目すれば、優劣などという浅慮な判断をすることもなくなるだろう。豊かに泰然と歩みたいものだ。


 まあ、寝れぬと薬を貪りながらも、ボツボツと暗闇で文をこさえている奴ほど浅慮な者はいない。明日も仕事だ。目を瞑ろう。

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