LosHearts -ロズハーツ-
鈴木巴也
第 ✕ ✕0話「『 “ これ ” を読む君へ』」
~ ✕ 歴 ✕ ✕24年 ✕ ✕ 月28日~
「――ここは……?」
今しがた居たはずの場所から一変。空は青く果てしなく、
「ようこそ、新しい “
「――?!」
咄嗟に声の方へ振り返ると、一人の少女が立っていた。先刻見回しても誰もいなかったはずのこの場所に、風に運ばれてきたかの如く現れた彼女。長い
「まさか君が “
「ここは一体……?」
疑問を投げかけると、少女はこちらの手元を指差す。
「 “
突然の出来事に意識から抜け落ちていたが、確かに自分の手には彼女の持っているものと瓜二つの書物があった。
「――そうだ……! さっきこれを開いて、そしたらいつの間にかここに……結局これは何の本なんだ――」
表紙をめくろうとすると、少女は遮るかのように語り始める。
「『始まりは “
「……?」
「 “
彼女は目を瞑り、暗唱を再開する。
「『
『始めに目覚めし
『幾百ばかりの朝迎え、始まりの希望が産まれた。少女は憧憬に招かれ、王の原石はそれを追い、聖者は君主を裁くだろう。
『先と同じだけ夜を越え、王は悪意に覚まされる。秘めたる力を暴く時、
放たれし鳥は籠の
騙られし悪を語る時、蛇は七つの海を呼ぶ。
盛者必衰の日は白夜。招かれざる者、報いよう。
聖火灯せば花は散り、聖水満たせば花は咲く。天使の悲願に心せよ、死が神々を睨むから。
謀反は悪意と限らない、追憶は愛が写すから。小屋を襲えば夜が来る、山羊を率いて天を喰う。
幾千もの星降り落ちど、一つの願いも叶わぬ
弱者が歩みを止めた時、月への道は閉ざされた。狼は犬の爪を研ぎ、龍は虎の牙を折る。従属の契りを交わせば、遂に許しを得るだろう。
全て疑い、全て信じろ。それは最たる盾となる。
血を暴かれし叛逆者、向かう戦場に風が吹く。敵は無邪気な求道者、諸王へ仇なす先導者。例え神を越す異能とて、真髄は壁を壊すだろう』
『
呪物もかつては聖遺物、還せば穢れは祓われよう。天命に憂いなど要らない、聖人もまた勇者だから。だが狐は
伽藍堂の玉座巡る儀、裁きの目は
偽りの血より雨を晴る、緋色の神と黒き
――既に
海は底で渦を逆巻く。奇跡の贄は神の血肉、また
それは最も深い影、重ねし空は光越す。醒めれば縛りは何も無い。
「あんたは一体……?」
「そうか、私とした事が自己紹介が遅れてしまったね。では改めて……」
少女は胸に右手を当て答える。
「――〈女神〉と。そう呼ばれていた」
人ひとりが放つには大きすぎる存在感と神秘的な雰囲気は、彼女が人ならざる者であると納得するには充分であった。
「私はいわゆる “ 語り部 ” さ。ここへ来た人々にある物語を読み聞かせる、それが託された役目だ」
「物語ってさっきの?」
「ふふ、これからさ」
〈女神〉はこちらへ歩み寄り、書物をおもむろに開いた。
「では始めよう。君がこの世界を知る為の物語を――」
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