神造兵器(第一章完結)
「うわあ、何これ」
私は、さっきとは別の声をあげた。
ディーはしれっとした無表情を崩さない。
「何って、コレット様が想像した強い存在ですよ」
「明らかに巨大ロボットじゃん! お台場とかに立ってるあれじゃん! こんなデザイン大丈夫? 著作権がどうとかで訴えられない?」
「異世界に来てまで訴訟なんか起こせませんよ」
「それはそうだけど」
ロボットはなぜか長い棒状の武器を持っていた。
先端に重りがついた鈍器。
いわゆるメイスというやつだ。
確かに、剣や刀に比べて、壊れにくくて何度も使えそうだけど。
装備が生々しすぎて怖い。
「時間がありません、行きますよ」
がくん、と巨大ロボットが膝をついた。
お腹の装甲が開いて、コックピットが姿を現す。
こんな構造までアニメそっくりである。
ディーは私を抱き上げると、ロボットの中に乗り込んだ。
コックピットの中には縦にふたつ並んで座席が設置してある。
「私が操縦します。コレット様はとにかく、そこに座っていてください」
私がここに乗り込むのは、女神の力の節約のためだもんね。
おとなしくしてますとも。
虹瑪瑙のペンダントを見ると、石はほぼ真っ黒になっていた。石像の改造に力のほとんどを使ってしまったらしい。
作った道具の維持に力はいらないけど、動かすにはそれなりの力が必要だ。
すべての力がなくなるまでに、どうにかしなくちゃ。
前の座席にディーが座ると、お腹の装甲が閉じた。周りの壁が液晶モニターに切り替わる。
「行きます」
ぐん、と後ろ向きに重力が加わったかと思うと、ロボットは走り出した。
あっという間にワイバーンへと近づいていく。
銀の鎧型ロボットという新たな存在に、戦場のすべての視線が集まる。
一番手前にいたワイバーンが、不思議そうな顔でこっちを見た次の瞬間、その脳天にメイスが叩き込まれた。
べしゃ、とワイバーンは地面に崩れ落ちる。
「これでひとつ……!」
ワイバーンが倒されたからだろう。
虹瑪瑙がほんの少し青い光を取り戻した。
「ディー、回復してる!」
「ではそれがなくなる前に、次のワイバーンを倒します!」
ぶん、とロボットがまたメイスを振るう。
ロボットが大きな動きをするたびに、虹瑪瑙の色が暗くなる。
敵を倒して力を補充して、その力がなくなる前にまた敵を倒す。
とんでもない自転車操業バトルだ。
「はあっ!」
またロボットがメイスをワイバーンに叩きつけた。
重い一撃はかすっただけでも大ダメージだ。
羽を破られ、ワイバーンが地面に落下する。身動きがとれなくなったところに、とどめを刺したら、石の色がまた明るくなった。
倒して、倒して。
気が付けば石の色はまた明るい青へと戻ってきている。
「ディー、女神の力が」
「わかっています」
ディーがロボットの体をイースタン陣営に向ける。
いつの間にか、人間の兵士たちはこちらから距離をあけていた。
「退却するようです」
「奥の手を倒されたんじゃ、逃げるしかないよね」
ワイバーンも、その体を翻す。
劣勢とみて彼らも退却するみたいだ。
作戦失敗が確定したからだろう、虹瑪瑙は青から緑、緑から黄に変わり、さらに虹色の光を放ちだした。
「なんとか……なった?」
「そうですね」
ロボットが動きを止める。
イースタン兵も、ワイバーンも、もう姿はなかった。
よかった……なんとかなった。
一時はどうなることかと思ったけど、レイナルド兄様たちを守りきることができたみたいだ。
ほっと息を吐いたと同時に、周りからわあっという歓声があがった。
「な、なにごと?!」
慌ててモニターを見ると、サウスティ兵がロボットを取り囲んで大騒ぎしていた。
ロボットの装甲ごしに声が響いてくる。
「神だ!」
「神が降臨された!」
「創造神様の御使いだ!」
彼らは涙を流してロボットを拝んでいる。
「えええ……なんなの?」
「彼らにしてみれば、突然創造神の石像がロボットに変身して、邪竜を倒したわけですからね。当然の反応ではないでしょうか」
「ええ……」
いやそんな大したモンじゃないと思うんだけど。
あれ? どうしよう。
今コクピットあけて中から出てきたら、とんでもないことになるんじゃないの。
私自身が神様として祀られかねないんだけど。
「何をいまさら。あなたはそもそも、女神の天啓をうけた聖女でしょうが」
そうなんだけど。
確かにディーの言う通りなんだけど。
「どうしよう、これ……」
私はコクピットに座ったまま、頭を抱えた。
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というわけで!
とんでもない状況ですが、姫君の逃走劇第一章完結です!こんなところで終わるわけもなく……
続きは、しばらくまたプロットをねりねりして……「クソゲー悪役令嬢」のほうを1章連載をはさんでからの連載再開予定です。
次の展開をのんびりお待ちください。
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詳細はまた、活動報告などで発表していきますのでお楽しみに!!
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