【2024/11/29書籍①発売】無理ゲー転生王女(クソゲー悪役令嬢外伝)~隣国王子に婚約破棄されたけど、絶対生き延びてやる!
タカば
転生王女は敵国から脱出したい
始まりは婚約破棄
「コレット・サウスティ、お前との婚約を破棄する!」
結婚式の当日に、婚約破棄を言い渡された。
いや当日どころの話じゃない。
今私たちが立っているのは、イースタン王国最大の神殿ホール中央。結婚式で花嫁と花婿が立つ場所だ。
私たちの間には神官が立ち、ホールには見届け人がずらりと並んでいる。あとは祭壇に祀られた運命の女神に誓いを立てさえすれば、婚姻が成立する。
そんな時になって、今。
婚約を破棄する?
「アクセル様……」
私は婚約者の名前を呼ぶ。
破棄を言い渡されたけど、私はその宣言を了承していない。まだ婚約者と呼んでいいはずだ。
「ご冗談は、およしになってください」
「冗談ではない。お前とは結婚しない!」
アクセル王子は、きっぱりと断言した。
見届け人たちの目の前で。
「あなたは、この結婚の意味がわかっているのですか? 私はサウスティ王国から輿入れしてきた王女、あなたはこのイースタン王国の第一王子です。婚約を破棄するとはつまり、両国の関係を……」
「同盟も破棄する」
ざわ、と見届け人の多くがざわめいた。
それもそのはず。
彼らの多くは、サウスティとイースタンの同盟強化を見届けるために、周辺国から集まった要人である。彼らの母国はいずれも、両国の同盟を支持している。
それが目の前で破棄されようとしているのだ。
慌てずにはいられないだろう。
「サウスティの支援なしにどうやって東のアギト国と戦うのです」
イースタンの国土の東端には険しい山脈があり、さらにその先には異民族国家アギト国があった。西の豊かな国土を狙うアギト国は、山を越えてたびたびイースタンへと攻め込んできている。周辺国の支えなしに、イースタンが国土を守るのは不可能だ。
この結婚だって、その結びつきを強化するためのものだったのに。
「アギト国とは戦わない」
「え?」
すっ、と王子の後ろに控えていた侍女のひとりが立ち上がった。
ただの侍女だと思っていたその少女が王子の隣に立ち、頭からかぶっていたベールを脱ぐと、立会人たちに更なる動揺が走る。
漆黒の闇を写し取ったような黒髪に、黒い瞳。
きめの細かい象牙の肌。
美しい少女はその身に異民族の特徴を色濃く宿していた。
「アギト国の第三王女、エメルだ。俺は彼女と結婚する」
同盟国の王女との婚約を破棄し、敵国の姫君と結婚する。
それが意味するのは。
私と同じ結論に至った神官が声をあげた。
「い……イースタンは、アギトと手を組むというのですか?! 運命の女神を邪神と蔑む異教の国と!」
詰め寄る神官から、アクセルは嫌そうに顔をそむけた。
「ハ、運命の女神など、こっちから手を切ってやる」
「なんと不敬な! それは女神への冒涜……」
「うるさい」
神官の言葉は最後まで紡がれなかった。
アクセルが腰にさげていた剣で、切りつけたからだ。
「……っ」
声もなく、神官が床に崩れおちる。
その姿を見て、見届け人たちの間から一斉に悲鳴があがった。
「なんてことを!」
そのうちの数名が、王子に向かっていこうとしたが、かなわなかった。
事前に配備されていた屈強な騎士たちがさっと間に入り、彼らの行く手を阻んだからだ。
花嫁予定だった私だけが、アクセルの近くに立っていたけど、何もできなかった。
一歩でも動いたら最後、私も神官と同じように殺されてしまう。
「イースタン王国はアギト国と同盟を組む。そして、サウスティ、オーシャンティア、ノーザンランド三国とは同盟関係を破棄し、宣戦を布告する!」
アクセルの声が神殿に響き渡った。
今度は逆に全員が無言になる。
元婚約者は、やっと私を振り返った。
「コレット・サウスティ、そして見届け人の使者たちには、この戦争の人質になってもらう」
花嫁になるはずだったその日。
私は人質になった。
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というわけで新シリーズが始まりました!
500年前の聖女のお話です。
こちらもクソゲー悪役令嬢ともどもよろしくお願いします!
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