第24話
人前で恥をかかされる結果となったロージスがさぞかし怒り狂っているだろうと予想したダイアンとティオーナだったが、昼休みに顔を合わせたロージスは無表情でどこかぼんやりとしていた。
ロージスのことだから、「これじゃあ俺があの地味女にふられたみたいじゃねえか!」とでも言って腹を立てるかと思っていたので、ふたりは拍子抜けした。
「大丈夫か、ロージス」
「ああ……」
尋ねると答えは返ってくるが、ロージスは心ここにあらずの様子だ。
「どうしちゃったのかしら?」
「人前でふられたのがショックすぎて虚脱状態なのかもな」
ダイアンとティオーナはしばらく放っておこうと決めて肩をすくめた。
人前でも誓約書を持ち出して無視を続けたハリィメルに、ロージスは最初ダイアンとティオーナが想像したとおりに腹を立てた。
(何故、俺がこんな恥をかかされなければならない!? こうなったら、あいつにも同じかそれ以上の恥をかかせてやる!)
弱みを握って自分に逆らえなくしてから、人前で冷たくあしらってやるのはどうだろう。と復讐を企てながらハリィメルの様子をうかがっていたロージスだったが、見ているうちにふと気づいた。
今日のハリィメルはいつもより気が張りつめているように見える。休み時間にも勉強をしているのは普段と同じだが、表情からは苛立ちと焦燥が読み取れた。
(なにかあったんだろうか)
あんなに気が立っていては集中なんてできないだろうに、それでも彼女は教科書を手放そうとしない。
何故、あれほど必死に勉強に打ち込むのだろう。
(なにか理由があるのか? 親が厳しくて、一番じゃないと叱責されるとか……)
知らない。ロージスはハリィメルのことをなにも知らない。
成績は一番で、放課後はいつも図書室で勉強していて、ナッツが食べられない。
知っているのはそれだけだ。
自分に夢中にさせると言っておきながら、相手のことをなにも知らないまま空回りしていた。まずは情報収集から始めるべきだったか、とロージスは反省した。
(よし。今日はハリィメルが帰るまで粘ろう。一緒に帰って家まで送ってやれば、話す機会はあるはずだ)
ハリィメルが勉強している間、ロージスも勉強すればいいのだ。そうすれば、ハリィメルも「帰れ」とは言いづらいに違いない。
(……そういえば、ハリィメルはいつも何時まで図書室に残っているんだ?)
ハリィメルが帰宅する姿を一度も見たことがないのに気づいて、ロージスは首を傾げた。
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