さなみ…

慰問コンサートの当日だ。会場は、基地内にある、古い講堂。既に講堂内は、基地内勤務の兵士が多挙して押し寄せている。皆、歌姫が来ることを心待ちにしてるつ~わけ…薄闇の中タバコの白いスモッグと下世話な会話が講堂を包み込む。俺とジムは、ちょいと早く会場について、前から3番目くらいの席に座ってた。

頭が禿げ上がった中年の司会者の男がショーの開幕を告げる。

さなみという、俺以外の皆が待ち望んだ歌手は、肌が小麦色にほどよく焼け、髪もロングで左右にカールしている。第一印象は、正直に言ってマジ良かった。まぁ歌声は、甘くスウィーティーな中に哀愁という名のほろ苦さを漂わせていた。そんな歌声に周りの兵士は皆ノックダウンする。俺は、どっちかつ~と彼女、さなみの独特の雰囲気に惚れちまったどこか、俺のような苦労人と似た何かを感じさせるのだ。それがなんかは、歌を聴いてる時は分からんかったが…

さなみは十三曲ほど歌い、兵士達の前から去った。最後まで笑みを欠かさなかったが、どこか悲しさが付き纏っているように感じた。さなみが歌う時、俺は、充電満タンの補聴器をわざと外してた。そうすると彼女が涙を流す、道化のようにも思えた。俺は、つい、彼女を心配しちまった。ジムと部屋に戻った俺は、机の上のオレンジランプをつけ、彼女へのメッセージを(そりゃ手紙って言う)綴った。

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