第6話

イカれランバンくんとのイカれ特訓から早数日、学校来ちゃった。帰ってきちゃった。クソが。

はぁぁぁぁぁぁぁ、ホンマランバンくんさぁ、一応即応迎撃ってなってるけどさ。匙ぶん投げクソ無能作戦立てるの辞めない?辞めないか、そうか。うんじゃあ仕方がないね死ね!!カスが!!!うおおおあああああぐっくくくくく、クソッタレェーッ!!

フゥーッ!!フゥーッ!!キチゲが大分溜まってきましてよ!!そろそろキチゲ解放してしあわせになりたい。


閑話休題、美味い飯を食わせてもらってる以上最低限の仕事はしますがねええ。中二病にも一宿一飯の恩ってのはあるんや。

そんなこんなで教室に怯むこと無く入っていくことにしよう。うっわ弓華の机の上に花添えてある…マジかおいマジでか。吐き気が止まらない。本当に殺してしまったんだという空虚さと罪悪感を腹の底から感じる。すぅ───────


無駄に空気ばかり吸い込む。心からの後悔なんていつぶりだろうか。嫌だ。無理だ。こんな空気のなか、正常に生きていけるはずがない。今日はもう帰らせて欲しい、と言うかもう二度と来たくない、と拒絶反応が沸き起こる。


吐き気のあまり思わず手を口へと当てたが、漠然とした不安感に全身が包まれる。水底に引っ張られ溺れたかのように呼吸が苦しくなる。


それをどうにか飲み込み歩を進める。ロザリオに片手で触れ、少しの安心感、優しさを感じながら自席を探す。席替えはなかったようで、自分の席はすぐに見つかった。

約一週間ぶり、と言うこともあって色んな人から声をかけられたが無難に流しておいた。クラスメイトの死に関しては色々と俺が原因なのだがそれに気づかれた様子はない。気づかれても困るんだが。そんなこんなを考えていると後ろから抱きつかれる。


「重っ…。」


「正義~ッ!!会いたかったぞ!!」


「…盟友じゃないか。久しぶりだな。」


頭をわしゃわしゃとかき回しながら俺に抱きついていたのは我が心の友──福井ふくい 賢人けんとだった。彼は高校で初めて出会った友人で、俺のこの癖のある言動を全て理解する超人である。

聞けば聞くほどぶっ飛んでるが要は読心術の使い手である。よって今、俺大ピンチ──と本来なら言っていたのだが、どうやらコイツ、最近浄化教に吸収された別の組織のアルカナ持ちだそうで、持っているアルカナは《月》。テレパシー。念話。呼び方は様々だがそういったものを司る能力だそうで今現在俺とランバン、花音、賢人、そして《塔》を持つというエレジーという人物をそのネットワークで繋いでおり不測の事態があれば即座に伝達が可能らしい。彼の得意の読心術も能力の一端なんだとか。なんでも目と目があってさえいれば読心がある程度までは可能らしい。どうやら《正義》のアルカナに目覚めた俺に効くかどうかは分からんらしいが。

それにしても最近身の回りがキナ臭くてたまらんな。まあ実を言うと俺もランバンもコイツを完全に信用しきってはない。吸収された組織と言うのがスティールヤードに媚を売って生計を立てていたような組織らしく、今現在も何らかの繋がりがあってもおかしくはないそうだ。


(聴こえるか、正義。俺のテレパシーは俺を中心に半径50メートル内が一番安定して効力を発揮する。基本的に俺とお前、ツーマンセルで動くことになるだろうからその範囲からは出ないでくれると助かる。)


(ああ、了解した。頼んだぞ盟友。)


(任せとけ、相棒。)


彼が俺から離れたのを確認して一人脳内で頭を抱える。読心術の使い手が居るんじゃ下手に離反も脱走も企てられねーじゃんどうしてくれるんだよ!!アイツがスティールヤードの使いである可能性に賭ければ別に悪くはない状況なのだが、そうじゃなかった場合ランバン辺りにナニカサレテしまってもおかしくはない。《塔》のエレジーの能力が判明していないのもあり、今下手に行動を起こすのは不味い。てか賢人の能力がぶっ飛びすぎている。なんだよ安定性を無視すれば距離無制限のテレパシー能力って!!俺の能力なんて防御貫通と自己再生だけなんだが?もうちょっとこう、なんというか、派手でも良かったんじゃないっすかね。その辺り俺に力を与えた神であろうナニカは浪漫が分かってないよな。


そんなことを考えているとチャイムが鳴り響く。始業の時間だ。さーて、授業について行けるかな、些か不安だがどうにかするしかないだろう。まあ、やってやる、やってやるさ。


◆◆◆◆


そうしてなんやかんやで学校も終わり、賢人とも別れて一人浄化教の本部へと自転車で帰る俺なのであった。自転車で走ること40分程度で教会についた。聖堂には人がちらほらとだが見られ、ちゃんと宗教してるのがよく分かる。

こんな中で堂々と中央の扉を開けて入ろうものならランバン辺りに助走をつけて殴られそうなのできちんと脇の小さな関係者専用の扉を通って地下通路へと出る。てかこれがあるなら中央の扉要らなくないか。嫌でも中二病的にはポイントが高い。デカい扉ってカッコいいし浪漫があるよな。分かるよランバン。


「おや、《正義》様!」


「《正義》様だ!!」


「…ああ、元気だな。これからも頑張ってくれよ。」


「ハッ、有り難きお言葉です!」


すれ違う教団の構成員に若干の皮肉を込めて言ったら喜ばれたんだが。Mか?Mなのか?まあ良いや。こいつらをスルーして自室へと向かう。しっかし長いな距離が。自室に向かうのも一苦労だぜ。


「おや、正義様。ちょうど良いところにいらっしゃいましたね。」


「ランバンか。何だ。問題でもあったか。」


向かいからランバンが歩いてきて俺を呼び止めた。何だ、お前からの用事って今までろくなことだった思い出がないぞ。


「ええ、あの組織を吸収できたことで戦力にも余裕が出来たことなので今から宣戦布告をしようと思いまして。」


「…ほう、どこにだ。」


宣戦布告ゥ!?ほらみたことかろくでもない!!ってかスティールヤードじゃないだろうな?スパイ容疑がかかってるヤツも居るのにそんな馬鹿なことしないよな?


「《夢幻》です。厄介な《愚者》を仕留めに行きます。」

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