27.普通の特別

 待ってくれ!! 何だその能力!! 俺はそんな凄い人間じゃないぞ!? ただの人間のはずだ!! もし自分の人生を選べたとしても、そんな人間にはなりたくもない。どう考えても自由はないし、働き詰めになる未来しか見えないんだから。


 アイラさんによると、その子達が生まれてきた時、全員に会いに行ったらしい。そうしたらまだ生まれたばかりで、ほとんど動けない赤ん坊が、皆の話しを理解し、言葉を発していたと。しかもどの言語も関係なくだ。


「まさか、ティニーが!?」


『それはまだ分からないわ。なにしろそういう子は生まれた瞬間、それ相応の力を持っていて、私達にならすぐに分かる反応があるのよ。後はそれと分かるような印が、体の刻まれているとか。でもこの子にはその反応も、印も出ていないでしょう』


「確かにそんな印はないわね」


『それに、さっき言った魔法や物理的な攻撃も、動けない状態でも、誰にもの習わずに色々やっていたのよ。それもティニーにはないでしょう?」


「確かのこいつには何もないな。ミルクを飲んだら寝るだけの、その辺の赤ん坊と同じだ。それに全てのレベルが低すぎるくらいだ」


 え? そうなの? 俺のレベルって低すぎるのか? 何でミルバーンがそんな事を知っているんだろう? あれか、鑑定とかの力があって、俺が里のきた時に調べてたとか?

 後で教えてくれないかな? 俺のレベルを知る事ができるのなら、知りたいじゃないか。


 と、まぁ、それは置いておいて、低すぎるってそれはそれで問題では? あっ、でもこれでミルバーンの言ったことが本当なら、俺は神の使いとか、愛子とか、そんなんじゃないな。良かった良かった。ふぅ。


『だからティニーを、あの子達と比べても仕方がないのだけれど。もしかしたら言葉が分かるっていう能力だけ、神様から与えられていたら? 時々あの神様、ミスをするから。たまたま何かの拍子に、言葉の能力だけティニーに授けていたら』


「そういえば、神の関係者とか関係なく、ただただ普通の子供が力を与えられてしまって。その力のせいで、問題が起こった時があったわね」


『そう、それでその子は後で神と連絡をとって、その能力を消してくれって言って。他にも何人か、問題があったでしょう』


「ミスが多すぎるだろう」


『だからもしよ、神のミスで言語能力を与えられて生まれてきたとしたら。それならティニーが私達の話しを理解していても、おかしくないでしょう? 赤ちゃん言葉しか話せないのは、もともと普通の赤ちゃんなのだから当たり前のことだしね』


「じゃあ、こいつらが赤ん坊の言葉が分かるのは?」


『なんとなくだよな!!』


『うん! なんとなく!!』


『時々分かんないけどぉ、でもほとんどあってたよねぇ、たぶん』


「なんとなくで話していたのか? 自信満々に言ってきていたじゃないか」


『『『なんろなく!!』』』


『名前を付けてもらったら、もっとよく分かるようになって、ちゃんと言葉になった』


『うんうん!!』


『これで普通にお話しできるようねぇ。僕達の言葉は分かんないかもだけどぉ』


『名前を付けてもらった事で、もしかしたらあなた達の力が上がって、なんとなくが完璧に変わったのかもしれないわね。名前をつける事で、色々変化が起こると言ったでしょう。きっとその中の1つが、言葉だったのかもしれないわ』


『分かるの良いよな!!』


『あれ? でも、みんなの言葉が分かるなら、それに僕達がティニーに言葉が分かるようになったなら、ティニーも分かるんじゃない?』


『ティニーとお話しできるのぉ?』


『そうかもな!! 聞いてみるか!!』


『ねぇねぇ、僕達の話し分かる?』


『お話しできるうぅ? お話しできるなら、ぼく、お話ししたいなぁ』


 まぁ、ここまで色々あったし、名前も付けたし、今の話し合できっと。みんな俺が話しが分かるって、多分から確信に変わってるんじゃないかな? まぁ、それならそれで良いか。


 ただ何を聞かれても、転生についてだけは黙っておこう。もしも転生してきて、前世の記憶があるなんて話したら。

 それでその前世の知識を話すことで、この世界にはない何かを生み出しでもしたら。それこそ俺は神の使いなんじゃないか、愛子なんじゃないかって言われそうだし。


 ただの赤ちゃんで、言葉は分かるけれど、他のことは分からない。そう俺はただの赤ちゃん。うん、それでいこう。


『なぁ、分かるか?』


『僕達の言葉分かるなら返事して』


『お話ししよぉ』


「あぶう、ばぶう!!」


 今のは、話し分かるよ。そうしたらみんな、今日1番の笑顔をみせてくれた。


『わぁ!! 分かるんだね!!』

 

『ティニーに分かるって!!』


『分かる、分かる。お話し、お話しぃ』


「あぶあ、ばぶう、ばうあ」


 言葉は分かるけど、他は分からない。分からないことばっかり。と、俺の今の状態を知らせる。それをみんながみんなに伝えてくれて。


『そうなのね。やっぱり言葉が分かるのね。そして他のことは分からない。それはそうよね、だって生まれたばかりだものね』


 レイナさんが俺を抱き上げる。


「あなたは、この世界に生まれて来たのよ。生まれる、分かるかしら? 私達と出会うために、あなたに事を神様が、ここへ連れてきてくれたの」


『あなたは特別よ。最初から特別な人達もいるけれど、あなたは普通の特別。神のミスだったかもしれないけれど、でも素敵な力を授かったわね』


『そうだぞ!! 俺達と話しができるんだぞ!!』


『ねぇ、お話しできるなら、これからもっと楽しくなるよね!!』


『お話し嬉しいねぇ』


『そうだ!! まずは俺達のこと教えるぞ! 俺の好きな物は……』


『僕が先だよ!!』


『ぼくの好きな物は、お昼寝とぉ』


『おい、俺が先だぞ!!』


『フラフィーが先だよ!!』


 誰が先に言うかで揉める中、フランイングして色々話し始めたラピー。それを見て笑う俺。


「ふふ、驚いたけれど、みんなが楽しそうだから良いかしら」


『そうね。それに言葉が分かると分かったのなら、これから色々と教えてあげないとね』


「……面倒が増えた」

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