26.ある事実、まさかそんな!?

「さぁ、それじゃあ、始めましょうか」


 少しして戻ってきたレイナさん。みんなにお茶を配って。何とシャイン達のお茶のコップまで用意してくれて。みんなサイズのコップ? そんなのあるのか? と、思わずそっちに気がいった俺。だけどすぐに、心の中で頭を振って、みんなの話しを聞いた。


「それでティニーの事なのだけれど、どこまで私達の話しを分かっているのか。みんなはティニーに話しかけた時、何か気づいた?」


「私は何もありません。可愛くて、可愛くて、なでながらいっぱい何か話した気がしますが。その時にティニーがどんな様子だったのかは、言葉に関しては詳しくは覚えていません。でも笑ってくれていたのだけは覚えています!!」


「ええ、エリノアはそうでしょうね。はぁ」


 エレンさんの小さなため息。俺もほぼ同時にため息を吐く。いやさぁ、エリノアさん。俺の事を抱っこしようとして、赤ちゃんを抱っこする事に慣れていないのか。ミルバーン同様に色々やらかしてくれて。


 1回なんて、俺のことを落としそうになったんだよ。それからレイナさんは、立ったままの抱っこは禁止されて。それ以降は座っての抱っこになったんだけど。その時の様子が……。

 恥ずかしくなるくらい可愛い可愛いって、抱っこのほとんどの時間をそう言っていて。


 可愛い可愛い以外だと、なんて可愛い子なんだろう、可愛い子にはあの花が似合うんじゃないか、可愛い子には、あの色のリボンが絶対に似合うとか。結局可愛いからは離れるず。俺に言っているようで、実は自分が思った事を口に出しているだけっていう。


 だから俺がその時に何を考えていたかなんて、表情の変化なんか見ているわけもなく。それをレイナさんも分かっているから、そうでしょうねって言ったんだと思うよ。


「いいわ。じゃあミルバーンは?」


「俺も何も……。というか、色々気づける程、俺は共に過ごしてはいない」


 あ~、まぁ、そうですよね。レイナさんの特訓中だ、俺に構っている暇なんてないよな。長く話したのは。話したっていうか、夜中のミルバーンが来て、寝たふりをしていた俺に、勝手に話しをして、勝手に部屋を出ていたった時くらいだし。


「そうよね。あなたもそうよね」


 ミルバーンとエリノアさんの話しは、さっさと終わってしまった。


「そうなると、私とアイラさんの時の様子で考えるしかないけれど……」


『確かに時々、ティニーが何か言うと、この子達は私達にティニーがこう言っていると、伝えてくれていたわね』


「ええ。それで何度か、話しが進んだことは間違いないですね」


『確かにこの子達は、ほんの少しは分かると言っていたは。半分以下だと。だから後は、ティニーを観察しているうちに、こういう時はこういう反応をするっていうのが分かるようになって。その反応を私たちに教えてくれていると』


「私もです。そして私は一応、シャイン達の言葉をティニーに伝えていたけれど。アイラさんと同じで、赤ちゃんなのだから伝わっていないと思っていました。時々返事をするように声を発していたけれどたまたまだって」


 いや、中身はおじさんだから、分かるっちゃ分かるよ。ただこれもさ。俺は最初から言葉が分かっていたけれど、実はミルバーン達はエルフ語で話していないか? この世界にはどれだけの言語があるのか分からないけど。


 人間の言葉は人間の言葉、エルフの言葉はエルフの言葉って。共通語もあるかもしれないけど。そうなると、俺がこうやって言葉が分かるのは、神様がそうしてくれたって考えるのが、1番しっくりくるんだよ。


ただそれだと、なんで精霊のアイラさんの言葉は分かって、シャイン達の言葉は分からなかったのか。どうして急に分かるようになったのか。


『もしかしらなのだけれど。私は今までに、数人そういう人達に会った事があるのだけれど』


 何だ? アイラさん、これのことで何か知っている事があるのか? 実はと、話しを始めるアイラさん。


 アイラさんは過去に数人、特別な赤ん坊に会った事があるらしい。そしてその赤ん坊達は皆、特別な存在の赤ちゃんだったらしく。

 皆時代はバラバラだけど、2人は後に聖女に、5人は人でありながら、神の使いとしてこの世界で生き、他の3人は神の愛し子としてこの世界に生まれてきたと。


 何だその、豪華なメンバー。この世界には聖女やら、神の使いやら、神の愛子やら、そんな凄い人間が存在するのか? 異世界みたいだな。って俺からしたらいこの世界は異世界だもんな。そんな存在が居てもおかしくないのか。


「確かに、そんな子達がいた時期があったわね」


『その子達の力は凄かったのを今でも覚えているわ。まぁ、途中で3人ほど、その任を解かれたけれどね。自分達が偉いと勘違いして、色々やらかしたから』


「そういえば俺は直接は知らないが、世界を巻き込んだ戦争になりかけたんだったか」


『ええ。自分が1番偉いと勘違いして。この世界の全てを手に入れようとした。そのせいで戦争になりかけたわ。他にも同じように事をして、その任を解かれたのよ』


 何だそいつら、最悪だな。もしかして地球から来た奴らだったりして。俺は寿命でただ単に死んだだけだけど。

 ライトノベルそのままに、その世界を救ってくれ、守ってくれって言われて、ここへ転移させられてさ。でも自分の力に溺れて、色々面倒ごとを起こすってやつ。もし地球の人間だったら申し訳ない。


『まぁ、それは今は良いのだけれど。その子達は生まれた時に、ある共通の能力を持っていたのよ。魔法とか物理的攻撃とか、そう言ったものじゃなくてよ。実はみんな赤ん坊の時から、私達の言葉が分かっていたのよ』


 な、何ですと!?

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