10.俺と蝶達とスライムの関係、そして契約

 俺を見つけた時、すぐに逃げた蝶達とスライム。みんなにとって人間は危険人物らしくて。その辺はサラッと話しが進んでしまったから、理由は分からない。だけどたぶん、人が精霊に対して何かやったんだろう。

 ほら、それこそライトノベルに出てくるみたいに、捕まえて売り飛ばしたり、無理やり契約して、その力を使わせたり、森を破壊したりもしたんだろう。


 だけど何故かこの時、蝶達もスライムもすぐに止まったらしい。何故かとっても俺のことが気になって。それで戻って来たんだけど、でもやっぱり少し怖かったから、ちょっと離れた所で俺を観察していたと。


 すると少して俺が目を覚まし、籠に中で暴れ出したって。だけど暴れていると言っても、籠さえ動かないくらいの暴れ方だったって。それ、暴れてたんじゃなくて、慌ててただけだからな? 


 いくら待っても大した暴れ方しかしない俺。魔法も使わないし、それどころか魔力が少ないって気づいて。それで俺が何もできないんじゃないか。何もできないってことは、危険あ存在じゃない? そう考え始めて、だんだんと俺への警戒心が薄まってきたと。


 するとそのうち力尽きた俺が眠りに落ち、これはチャンスと俺に一気に近づいて来たみんな。見た感じは危険じゃなかったけど、しっかり調べないとってことで、俺が寝ている間、俺のことを調べたらしい。

 

 その調べによって、俺は危険じゃないという結論に至ったと。それどころかこれだけ何もない人間を、こんな場所に1人で置いておけない。誰かが来るまで自分たちで守ろうと、考えてくれたんだ。


 もちろんこの事を、アイラさんに伝えたみんな。みんなはどんなに離れていてもアイラさんと話しができるらしい。そして話しを聞いてアイラさんの指示で、俺の下半身を綺麗にしたり、飲み物を飲ませてくれたりと、お世話をしてくれたんだ。


 そうして俺の世話をしているうちに、俺にある感情が芽生えたみんな。俺を最初に見た時にも、変な感じはしていたけど。何か俺に感じるも物があって、それが更に大きくなっていった。


 自分達はずっと俺と一緒にいたいって、側にいて守るのは勿論。それだけじゃなくて。家族になりたいって。

 もちろんアイラさんとは家族だけど、でも主人と仕える精霊でもあって。だからそういう家族じゃなく、みんなで色々な事をして、みんなで喜んだり、たまには喧嘩したり。


 主人と使える者、そんな関係ではなく、ただ一緒にいて幸せって思える、そんな家族になりたいって。そう考えるように。


『多分あなたに運命を感じたのね。今言ったのは、確かにこの子達が思ったことだけれど。でもきっと、理由なんかなくても、きっとあなたといたいと思ったでしょう』


 初めて会った俺に、そこまで思ってくれたのか。なんか嬉しいな。


 その後、俺と居たいって事を、アイラさんに伝えたみんな。アイラさんはみんなの気持ちが分かっていたから、すぐに了解して。ついでにここ何年も、みんな外に出ていなかったから、外のことを知った方が良いと思ったらしい。


 そしてそんなみんなのことを、了承したアイラさんは。やっぱり力の爆発に気づいて、こちらに向かっていたエルフ達に全て丸投げすることに。丸投げ。まさかの丸投げだった。


 その事を話していたのが、ほら最初のゴブリンを掃除した後の、ミルバーンとみんなとの言い合いだったんだよ。そっちに連れて行けば良かったのにって、ミルバーンが言ったやつ。あれはそんなに俺が気に入って側にいたいのなら、聖域に連れて行けば良いって意味だったんだ。


 そしてなんだかんだと揉めたけど、最終的の俺達はエルフの里へ来ることに。それでこれからエルフの里で、一緒に生活することが決まったんだ。


『と、ここで生活することは決まったけれど。まだあなたの気持ちを聞いていなかったわね。この子達は貴方と一緒に、家族になりたいと言っているのだけれど、貴方はどうかしら? この子達と家族になっても良い?』


 そんなの勿論良いに決まっている。今の話しを聞いて嫌だなんていう奴は、そういないだろう。こんなに家族になりたいって思ってもらえて、俺はとっても幸せだよ。何せ俺、家族を早くに亡くしているからさ。それもあって更に嬉しい。


 俺はできる限り、大きな返事をした。それに合わせてみんなも手を上げて。


「ばぶぅ!!」


『あら、とっても元気な返事ね。もしかして私の話しが分かった? そんな訳ないわよね。赤ちゃんだもの。きっと偶然ね』


『******!!』


『あらそうなの? 今の話しの返事なの? ふふ、貴方達がそういうのなら、そうんなんでしょう。じゃあ契約してしまいましょう。他の、そっちもエルフの話しはその後よ』


 契約? 何だ? 


『これからするのは契約と言って、心を通わせた者達しかやってはいけない、大切な魔法なの。無理矢理これをやるバカも多いけれど、でも貴方達はお互いを思い合っているから大丈夫。契約をすれば、お互いがお互いの力を補うことができるし、更に絆が深くなるのよ』


 ああ、これもライトノベルと同じ、魔獣契約と同じ感じか? 契約って、簡単に破棄できないって聞くけど良いのか? もしかしたら後から嫌になるかもしれないのに。まぁ、その時は何としても契約破棄するように頑張るしかないな。


『本当は契約は貴方がしないとならないのだけど、まだ力のない赤ちゃんだから、今回は私がやってあげるは。特別よ。さぁ、すぐに終わるからみんな集まって』


 俺の胸の上にいたみんなが更にくっ付いて、それからレイナさんが、俺の手を取って、みんなを包むようにおいてくれた。


『いくわよ』


 アイラさんが何か呪文を唱える。すると俺達全員を白い光が包んで、その瞬間胸がとて暖かくなった。そしてそれが落ち着けば光も消えて。


『さぁ、契約完了よ。これで貴方たとは家族になったわ。良かったわね』


 新しい世界へ来て、色々あった1日目。俺に家族ができた。素敵な家族だ。みんながとても嬉しそうに笑っている。俺もとっても嬉しい。だけど……。


 俺達にはまだ重大な問題が残っていた。ミルバーンとの家族問題だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る