第2話
ボクは、いまもまあ、半ひきこもりで、仕事を辞めた後精神を病んで暗い部屋に20年以上閉じこもっていて、そういう「地中の蝉の幼虫状態」を経て、5,6年前からなんとか社会復帰でき始めてきた感じなのですが?
その5,6年前から主として福祉と医療の関係でいろいろな妙齢の女性が来訪するようになり、もちろん千差万別十人十色多士済々?に様々な個性の方がいて、それぞれに「第一印象」を持ちます。
第一印象のまま、イメージが同じという方もいれば、だんだんに変遷というか、微妙に印象が変わっていく人もいる。全く別人みたいに変化するという場合もある。こういうことは、たぶん人間関係の変化がもたらす現象と思いますが?不思議な気がするときもある。
こういう「未知との遭遇」の、皮切りは、精神衛生福祉士、という肩書の、Kさんの来訪でした。
或る日に、主治医の依頼で病人(ボク)のいる茅屋に現れたKさんは、第一印象は、「颯爽とした薫風」、すこぶる爽やかな女性でした。
理知的で個性的な美貌。はきはきとしゃべり、それでいて職業柄なのか、穏やかな包容力を感じました。名前の字面も、個性的なのですが、なんだかきらびやかで、見とれるような整った美しさがあった。
その後、「役場です!」と張りのある声で呼ばわりながら度々訪れてくれるKさんは、いつも屈託がなくて、誠実で、まっすぐに、虚弱で屈折している病人のボクの身辺、窮状を思い遣って、少しでも改善してやろうと骨折ってくれました。
が、30年来のしつこい「幻聴」という宿痾、業病、それによる減衰、耗弱…どうしてもその蟻地獄からボクは脱出できない状態が続いた。
結局アルコール依存が祟って、心臓や肺を病んで、半死半生の状態でボクは入院することになり、その時にも、Kさんは、真っ先に駆けつけて、入院の手続きなどに奔走してくれました。その時のことは、別のエッセイにすでに書いています(「Kさんのこと」)。
だんだんに健康は回復してきて、4年ほど前のその当時よりも今はかつての筋骨隆々?ぽい体格に戻ってきて、Kさんや支援していただく多くの方には感謝してやみません。「縁」というもの、「えにし」とも読むけど、そういうものの不思議さというか、人生は結局その「誰かとの出逢い」の総体で出来ているという、その幸福と不幸、冷厳さと豊饒さ?を思わずにいられない気分です。
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