第5話
老人の話を聞き終え、しばらく3人は口を聞くことができなかった。老人はそんな3人を見て穏やかな顔で口を開く。
「そういうことだから、あの神社には近寄らないほうが良い」
「そんな……」
優がつぶやく。
「ありがとうございました。とても参考になりました」
樹がそう言いながら席を立つ。優と裕太が慌ててその後を追った。
郷土資料館を出ると、樹がグッと拳を握りしめながら2人に向き直る。
「俺、今からあの神社に行ってくる。こうなったのは俺のせいだ。あの時、肝試ししようなんて言ったせいだ」
「俺等も一緒に行くよ。なあ、裕太!!」
「そりゃそうよ、3人寄れば文殊の知恵って言うしな」
軽いノリで一緒についてくると言う2人に、樹は一気に方の力が抜けた。
「お前ら2人がどんだけ集まっても何の知恵も出ないと思うけどな」
そう軽口を叩きながら神社へ向かって歩き始めた。
歩きながら裕太が樹に尋ねる。
「神社に着いたらどうすんだ?」
「わからん。行ってから考える」
その返事に2人は思わずズッコケた。
「わからんって頼りねーな」
言葉を発した瞬間、向こうの方から
「優兄ちゃーん、裕太兄ちゃーん」
という声が聞こえた。呼ばれた方を見ると、悠とひなこが手を振りながらこちらへ走ってくるのが見えた。
「おー、今日はよく会うな」
「ご用事終わった?これから遊べる?悠くんと2人だとかくれんぼしてもすぐ見つかっちゃうからつまんなくて」
そうかわいらしく話しかけてくるひなこに、裕太は困ったように眉を思いっきり下げて応える。
「ごめんな、まだ終わってないんだ。今度会う時はたくさん遊ぼうな」
そう言われたひなこもその言葉を側で聞いていた悠もとても嬉しそうな顔をして、手を振りながら来た道を戻って行った。
「ふくって子、どんだけ辛くて苦しかっただろうな。あの子達より小さかったのに。ただ、友達と遊びたかっただけだったのにな。」
3人は神社へ向かって歩き始めた。
夏は比較的遅くまで明るいとは言え、神社に着いた頃には日が傾きかけていた。3人は拝殿には入らず、その横を通ってまっすぐ本殿へ向う。
本殿と拝殿の間には両者を繋ぐように木くずが散乱していた。樹は本殿の前に達、中を覗いた。老人からあの話を聞いた後で、本殿の中に飛び込むことに少しためらいを覚えていた。
「昔さ、木くずじゃなくて、石とか横断歩道だったけど、落ちたら負けとか白い所だけ渡って帰るとかやったよな」
と優が言い出し、
「ちょうどいいじゃん、お前本殿の方からこの木の上渡りながら来いよ、俺拝殿の方から行くわ」
と裕太が言いながら木くずの上に乗り遊び始めた。お互いがひょいひょいと木くずに乗りながらちょうど本殿と拝殿の真ん中辺りまで来て押し相撲まで始めてしまった。
それを見た樹が、怒りも顕に
「お前ら、こっちは遊びに来たんじゃねえんだよ!!」
「だって、やっぱり本殿に入るの怖いじゃん!!」
優がこちらを押してこようとした裕太の手を掴まえ、なかば恋人繋ぎのようになりがら言い返す。すると、裕太が目を見開き本殿の方を見て固まった。その不審な動きに、優が後ろを振り返ろうとしたその時、2人は彼らの側を何者かが走り抜けていくのを見た。
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