第22話 闇属性だから闇の力は効きません



 鎧から降りて、休憩がてらイクスの試合を見るかと思うと。


『イクス勝利!』


 すぐにイクスが勝利してしまったようで試合が終わってしまった。

 早すぎだろ。

 相性が良かったのか、相手が単純に弱かったのかはわからないが、異常なスピードです。

 俺の予想では素の強さが序盤クラス──全然なので第二試合は超えられないと思ったんだが。

 なんか起きてそうな気がするな。


「ではイクスの浮気野郎選手。次の試合になりますのでゲートが開くまでお待ち下さい」


 なんか怪しいですねと思いつつも係員に促されるまま鎧に乗り直す。

 次は運要素の強いアーティスだ。

 数少ない光魔法の使い手で周りの光を屈折させて透明になるプレイヤーに使えない魔法──オリジナル魔法『光学迷彩』と魔法を倍にして反射するバリアを展開するオリジナル魔法『八咫鏡』を使ってくるため、武器をめちゃくちゃに振るって場所を特定するしかない。

 翻弄されてハメられれば実力いかんに関係なく普通に負ける。

 さてどうしたもんかと思うといい手を思いついた。

 姿を消して動く前に武器で思い切り叩けばいいのだ。

 悪質タックルの出番ですね。

 耕作用程衝撃に強くないので衝撃を逃すようにしてゴーです。

 名前は悪質タックルの剣運用なので『牙突』とでもしておきましょうか。


『ふ、獲物が来たようですねい!』


『ビックルーキー『イクスの浮気野郎』VS卑劣の『アーティス』! 救世主の不貞を訴える剣闘士はモラルのかけらもないクソ剣闘士NO.1に勝てるのか! モラルの剣闘士VSノーモラルの剣士! いざ尋常にファイト!』


『では行きま──うわああああああ!!』


 開始の合図とともに自分の体の周りに『障壁』をかけるとパワーセーフティを外し、剣の切先をアーティスに向けて突きを放つ。

 まだ透明化していないアーティスの鎧に剣先が入るのを感じると着弾による衝撃を回避するために剣を放して『飛行』する。

 すると、悲鳴とともに超加速した剣に貫かれたアーティスの鎧が闘技場の壁に叩きつけられてバラバラに砕け散るのが見えた。

 すごいことになったな。

 借り物の剣が無事か気になってきた。

 アーティスの鎧の胴体ごと壁に突き刺さる剣を引き抜いて確認する。

 近衛騎士だけあっていい素材を使っているのか、欠けなしで無事だ。


『卑劣の『アーティス』瞬殺! 『イクスの浮気野郎』の勝利! 強い! 強すぎるぞ、『イクスの浮気野郎』! ベテラン剣闘士達がまるで歯が立たない! これも救世主への贖罪を訴える意思の強さがなせる技か!』


「ざけんな! 金返せ! チキン野郎!」「やっぱり『イクスの浮気野郎』しかねえのか!」「『イクスの浮気野郎』! 『イクスの浮気野郎』!」「流石よスラン君! もうイクスは目前よ!」


 安牌のアーティスにかけてキレ散らかす声と大穴の俺にかけて狂喜乱舞する声が聞こえてくる。

 次は準決勝だが高確率でイクスとぶつかるな。

 普通のイクスならば余裕だがあいにく様子が違うぽいからな。

 イベント戦闘中みたいに神のご加護で超絶強化だったら流石に技術ではどうにもならないし、即逃げだな。


「イクスの浮気野郎選手。次の試合も出場となるのでその場でお待ちください」


 戻ろうと思うと係員から声をかけられたので、アーティスの鎧が片付けられるのを見つつ、試合開始を待つ。

 アーティスの鎧が片付けられるとゲートが開いて、周りに黒いニョロニョロと蠢くモヤを纏った赤い鎧が現れた。

 イクスの精霊鎧『紅蓮真紅』だ。

 あのモヤはイクスが闇落ちした時に燃える王都をバッグに出していたもののはずだが。

 もしや冤罪でヒロインに叩かれるだけで闇堕ちしたのか。


『スラン! 俺はお前を許さない! 俺から全てを奪ったお前を!』


 いや悪いのはシアで俺は悪くないですよ。

 したのはヒロイン達に忖度して『イクスの浮気野郎』として剣闘士やってただけで。

 と言うかヒロイン達は君から離れないから全て失ったは勘違いですよ。

 人間本当に見限ったときは怒るも何もなしに目の前から消えるからな。

 怒っているだけなら状況が悪くなっただけでまだセーフだ。


『ついにこのときが来てしまった! 救世主の不貞を訴える剣闘士と張本人の直接対決が! 救世主は相手を触れただけで倒してしまう謎のモヤを周りに漂らせて臨戦体制だ!』


 すいません、熱く解説されてるところ悪いんですが、イクスが試合開始前にモヤ伸ばして来てます。

 止めてください。

 避けるようかと思ったがここで受けておけば、反則でイクスも負けることに思い至りわざと当たることにする。

 流石にこんなモヤ程度で死なんだろうしな。

 うお、鎧の中まで入ってきたグロ!

 ヒェと思いながらモヤが俺と接触するとなんか知らんが体が軽くなって若干魔力が回復した。

 なんですかねこれは。

 昏倒するはずが回復したんですが。

 もしかして豚野郎が闇属性だから闇の力では回復するとでも。


『やはり救世主なのか! それともイクスの浮気野郎により贖罪が成されるのか! いざ尋常にファイト!』


『うおおおお! スランンン!』


 モヤ以外は据え置きのようで前の決闘で見せた時と同じように『五灯籠』を放つと至近して切り掛かって来た。


『グアアアアアア!!』


 カウンターで腰から斬撃を入れて上半身と下半身を泣き別れにすると『紅蓮真紅』は沈黙した。


『救世主も瞬殺! 『イクスの浮気野郎』の勝利! 不貞救世主見事に贖罪される! 被害女性の無念がこのコロシアムでなされた!』


「『イクスの浮気野郎』やりやがった!」「よくやったわね豚!」「見事な戦いだったぞ!」「勝ち! ボロ儲けしたわ!」「やはりあなたこそ救いの主です!」「スラン君、よくやったわ!」


 イクスを倒したらヒロインたちの喜ぶ声が聞こえて来ますね。

 ノルマ達成です。

 モヤが効かなかったから普通にボーナスステージだったな。


 ────


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