2-10
宿に帰るとちょうどリンが目を覚ましていた。
ぐっすり眠れたのか背筋を伸ばしながらあくびをしている。
「おはよう、ぐっすり眠れた?」
「ええ、もうぐっすりと。…今何時?」
「もう19時だよ。はい、これギルドカード。さっき受け取らないまま帰ったから取りに行ってたんだ。」
「そう、ありがとう。」
ぐぎゅー…
部屋におなかが鳴る音が響いた。
「な、なによ!19時なんだからおなかくらいなってもおかしくないでしょ!食い意地張ってるなとか思わないでくれる!?」
「いや、別に何も言って…」
「…ほら!私はおなかがすいたの!食べに行くわよ!」
そう言ってリンは部屋を飛び出した。
でも眠って疲れが取れたのか元気なリンを見れてうれしかった。
「女の人の扱いは大変だな、キル。」
「ガウ。」
***
しばらく街の中を歩いてご飯屋をを探した。
「なに!?このメニューは!?聞いたこともない!?あっちの店は!?」
「リン!迷子にならないでね!キル、リンについてあげてくれ。迷子になるかもしれない…」
リンは今まで自分の村から出たことがないから案の定というか華やかな夜の街は経験がないらしく大はしゃぎしていた。
まぁ、俺もこんなに華やかな街は初めてだったので内心うきうきしていた。
「ここ!ここにしよ!」
とリンが指さしていたのはネオンカラーでキラキラしているたぶん現世で言うホストやキャバクラのようなお店だった。
お店の前でかっこいい男の人が客引きしてるし間違いない。
「リン、ここはきっと僕たちには早い。もっと別のお店を探そう。」
「えー…まぁ、いいけど。」
「ステーキなんてどう?」
「お腹すいたからもうどこでもいいわ。そこにしましょ。」
もっと母さんに女性との接し方を聞いとくべきだったなぁ…
***
「おいしかったわ…」
「おいしかったな…」
「ガウ…」
初めてあんなおいしいお肉を食べた。
肉屋のおっちゃん、ごめんよ。
おっちゃんのとこの肉もうまかったけどもうなんていうか…
おいしかったんだ…
「さぁ、帰ろうか。」
「もう帰るの?夜の街を探索しましょう。私、こんなにも賑やかなの初めて!」
そういってフードを脱ぎ、街の光に照らされて軽く踊りだすリンは本当に美しかった。
さらさらの銀色の髪が宙を舞い隙間から光が差し込む。
「もっと街を見下ろせる場所に行きましょ!」
そう言ってリンはまた駆け出す。
「あ、待ってよ!」
リンの後をついていきたどり着いたのは街を見渡せれる広間だった。
さっきいた街の中心は人がいっぱいいて今もにぎわっている。
「ねぇ、カイ。私を助けてくれてありがとう。あなたに助けられてなかったらこんなに笑うこと出来てなかったと思うの。」
街を見下ろしながらリンは感謝を伝えてきた。
リンの顔をみると少し寂しそうな顔をしている。
「お願い、今は見ないで。」
「…うん。」
村を襲われて、仲間を失って、追いかけられながら逃げて…
つらいことがあったんだ。
むしろ今までの行動は無理をしていたに違いない。
俺たちはしばらくそのまま夜景を眺めていた。
今回の様な出来事が各地で起こっているかもしれない。
やっぱり困ってる人を助けたい。
リンの寂しそうな顔を思い出し俺もすこし寂しい気持ちになった。
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