第22話 十五番目に魔術を行使した生徒



「ふむ、確かに。全てダメージは低いものの魔術の攻撃が当たっているようだな……。疑ってすまなかった」

「フン、そう初めから言っているだろう。分かったならそれでいい」


 その間、どうせ俺が誰も見ていない事を良い事に虚偽の宣告をしたのだろうと陰口が聞こえてくるのだが、講師が全て当てている事を確認すると、今度は『でも結局いつも通り子供でも行使できるレベルの魔術を当てただけじゃないか』だとか『どうせマグレだったんだろう?』という陰口が聞こえてくる。


「ロベルト様、どいつから殺しましょうか?」

「かまわん。所詮は真実を見通す事も出来ぬ馬鹿共だ。勝手に言わせておけばいい」


 そんな周囲の反応にマリエルが物騒な事を言い始めるので、とりあえず放っておくように言っておく。


 というかマリエルってこんな、ヤンデレと言われても納得できそうな程の忠義が重すぎる上に好戦的なキャラクターだったっけ? と少しばかり疑問に思うものの、考えたところでどうこうなる訳でもないので、スルーする。


 後は残りの生徒が終わるのを待つだけだ。


 今日も何事もなく(なんか誰か一人が突っかかって来たような気もするのだが)一日が終わりそうで、少しだけホッとするのだった。



◆魔術講師side



「……これは。 おい、十五番目に魔術を行使した生徒は分かるかい?」

「あ? そんなの近場に居た生徒を適当に声をかけていったから覚えている訳がないだろう」

「まったくお前というものは……」


 二年生は明日の朝の授業で魔術の実技授業があるという事で、二年生を受け持つ講師と一緒に明日の実技の授業の為に的を入れ替えるのを手伝っていたのだが、その二年生担当の講師が十五番目に今日私の授業で魔術を行使した生徒を教えろと言ってくるではないか。


 しかし適当に声をかけていった為、一番最初と一番最後に声をかけた生徒ならばいざ知らず、ほぼ生徒の半分くらいに声をかけた者が誰かなど覚えている訳もなく、その旨を言うと呆れと残念という感情が混じったため息を同僚が吐く。


「それで、その十五番目という生徒やらがどうしたんだ?」

「嘘かと思うかも知れないが、その十五番目の生徒は恐らく十体の的に全て違う属性の魔術を当てているようなんだよっ!! 凄いとは思わないかいっ!? 基本的には二属性、多くても四属性を扱えれば多い方で、その四属性の魔術を扱える事ができる魔術師は約三百人に一人と言われているのに、十体の的に全て違う属性の魔術を当てた痕跡がここに残っているのだよっ!!」


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