虹の向こう
岸亜里沙
虹の向こう
1984年、アメリカの小さな村で、奇妙な事件がありました。
ある農家の玄関先に、1ドル紙幣が置いてあったのです。
それも一日だけではなく、ここ数ヶ月の間、毎日ずっと。
農家の主人は、持ち主が取りに来るかもしれないので、置いてあった1ドル紙幣は使わずに、ずっととっておきました。
しかし、一向に持ち主が現れる気配はありません。
紙幣も100ドル以上になったので、家の主人は新聞に記事を書いてもらい、持ち主を探しました。
それでも持ち主は、分からないまま。
そんなある日、玄関先に1ドル紙幣と一緒に手紙が置いてありました。
農家の主人が、その手紙を読むと、こう書かれていたのです。
『これで全てお渡しする事が出来ました。毎日お渡ししていた1ドル紙幣は村人全員からの寄付です。受け取ってください。洪水で甚大な被害を受けたあなたの農地を復興させ、また私たちが、あなたの作った美味しい農作物を買える事を願っています』
村の人々は貧しいながらも、困っていた農家の一家を助けようと、皆が1ドルずつを寄付したようです。
そんな村人たちの心遣いを知った農家の主人は、大きな腕で頬に流れた涙をごしごしと拭きました。
This novel is fiction.
虹の向こう 岸亜里沙 @kishiarisa
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