第33話 メンバー揃う
その後、俺の部屋で四人で話していると……三人が帰ってくる。
しかも、全員泥だらけである。
どうやら、相当やりあったらしい。
「た、ただいま戻りました……まさか、ギレンがこんなに出来るとは。流石は、冒険者ランクC級といったところですね」
「へへっ、俺の方がランクは上ですぜ? だが、それでも完全に負けやした。今後は、アネゴと呼ばせて頂きやす!」
「どう考えても私の方が年下なのですが!」
「いいじゃないっすか! アニキとアネゴで!」
「……はぁ、わかりました」
ふむふむ、こっちは上下関係が決まったらしい。
そして、俺がアニキでクレハがアネゴと……二人共、ギレンより年下だけどね。
すると、オルガがギレンにくいかかる。
「オイラだって負けてませんから!」
「なにを!? ……が、俺の攻撃を防ぎきったのは事実か。いいぜ、少しは認めてやる」
「オ、オイラも少しは認めてあげます!」
こっちは対等って感じで片がついたかな。
だが、みんな割とすっきりした顔をしていた。
もしかしたら、こっちも雨降って地固まったのかもね……話し合いではなく、拳によって。
「三人共、お疲れ様。ギレン、改めて挨拶をしてくれるかな? この人はモーリスさん、俺のことを色々と補佐してくれる人だよ」
「へい! 俺の名前はギレンと申します! 兄貴に命を救われた恩を返すために、ここにやってきやした! 冒険者ランクはC級の斧使いですぜ! モーリス殿、よろしくお願いしやす!」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。ほうほう、その若さでC級ランクで斧使いですか……前線で使えそうですね」
「へへへ、モーリスさん気づいちゃいました?」
「ふふふ、これはエルク殿下に感謝ですな」
俺とモーリスさんが悪巧みをするように微笑み合う。
すると、ギレンが怪訝な表情を浮かべた。
「な、なんですかい?」
「いやー、いいタイミングで来てくれたなって思って。実は、これから——スタンピードが起きるかもしれないんだ」
「……はっ?」
そう言うと、ギランは金縛りにあったかのように固まるのだった。
その後、金縛りが解けたギランにもきちんと説明すると……明らかに顔が引きつっていた。
「へ、へぇ、そうですかい。スタンピート……俺、ちょっと忘れ物を取りに王都に帰りやす!」
「ダメ! 逃がさないよ! クレハ!」
「はっ、お任せを」
席を立って逃げ出そうとするギレンを、クレハが先回りして通せんぼする。
「くっ……」
「ちょっと、さっきの勢いはどこに行ったのさ? そもそも、俺に忠誠を誓ったんじゃないの? 俺は、きちんと確認したよ?」
「そ、それとこれとは話が別ですぜ! スタンピートは下手すると国を滅ぼすこともあるんです!」
言っておくと、ギレンの反応が普通だ。
ギレンは兵士ではないし、まずは生活と生き残ることが最優先の冒険者だ。
それにC級冒険者がそういうくらいに、スタンピートは危険って意味でもある。
「そう、だからこそ……ここで止めるんだ。ギレン、力を貸してくれないか?」
「……だァァァァァ! わかりやした! 情けない事言ってすいやせん!」
「ううん、それが普通だよ」
「いや、俺はずっと逃げてきたんすよ……B級に上がるための魔物を倒せずに逃げ出して、それからC級をウロウロして……若手有望株なんて言われて調子に乗ってた。それからは酒に溺れて……アニキに出会ったんだ。こんな俺でも、もう一度やれるかもしれないと」
なるほど、ここにも人に歴史ありってわけだ。
「なら、俺と一緒だね。俺も自堕落王子と呼ばれてるけど、ちょっと心境の変化があってね……少し変わりたいと思ってる」
「アニキもっすか……よし! 今度こそ覚悟を決めやした! 俺を好きなように使ってください!」
「うん、そうさせてもらうね」
よし、これで最低限のメンバーは揃った。
後は、やれるところまでやってみるしかないよね。
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