第21話 ネコネ

頭の天辺からはお耳がぴょこぴょこ、お尻からは長い尻尾が生えている。


セミロングの髪は金色に輝き、小柄で華奢な感じ。


そこには黒いメイド服を着た、可愛らしい猫耳少女がいた。


「あれ? その子は誰かな?」


「ふぇ!? わ、忘れられちゃった……グスッ」


その女の子は、今にも泣き出しそうである。

エルク君ピンチです! 男の子は女の子の泣き顔には弱いのである!


「わわっ!? タンマ!?」


「はいはい、エルク様。少し落ち着いてください。貴女はネコネという猫の獣人ですね?」


「は、はい!」


「ネコネ……あっ! デビルラビットを獲ってきた時に、俺に話しかけてきた女の子か!」


「えへへ、思い出してくれました」


俺の言葉に、女の子が笑顔で頷く。


「そりゃ、気づかないよ。言っちゃなんだけど、見違えたし」


「こ、ここの方に綺麗にしてもらいました!」


「ここの方……モーリスさん、どういうこと?」


「実は先日、この少女が領主の館に訪ねて参ったのです。そして、仕事が欲しいとお願いに来たのでございます」


「お、お兄さんが、仕事欲しかったらきなさいって……」


……うん、確かに言ったね。

別に嘘で言ったわけではないし、俺としては問題ない。

ただ、これが職権濫用になってはいけない。


「でも、モーリスさん的にも良かったの? 俺が言ったからとかだったら……」


「いえ、私にとっても……ともかく、私がきちんと面接をした上で採用いたしました。これからは仕事内容に関係なく、どの種族でも働けるということを示すためにも」


「そっか、なら良いんだ。それで、この子の仕事内容は?」


「エルク殿下さえ良ければ、お側に置いて頂けると幸いかと。この子は、そのために来たのですから」


その言葉を受けて、俺はネコネに近づく。

そして、以前と同じように目線を合わせる。


「ネコネ、俺のところで働きたい?」


「うん! じゃなくて……はい! 働きたいですっ!」


「良い返事だ。いやー、働きたいなんてえらいね」


「えへへ……褒められちゃった」


その頭を思わず撫でてしまう。

すると、後ろから殺気を感じたので振り向くと……むすっとしたクレハがいた。


「ど、どうしたの? 雇うのはだめ?」


「だ、ダメですか……?」


「ちがっ……いいえ、構いませんよ」


クレハは腕を組んで複雑そうな表情で答えた。

なんだろ、ネコネというより俺をジト目で睨んでいます……こわい。


「そう? じゃあ、よろしくね。まあ、俺のことは好きに呼んで良いから」


「お、お兄さんって呼んでも……?」


そう言い、上目遣いで見てくる。

可愛い……エルク君に大きなダメージ!

俺は思わす膝をつく。


「ぐはっ!?」


「え、えっと……?」


「ふっ、やるね」


「ネコネ、このアホ王子は放っておいていいですよ」


振り返ると、凍った表情でクレハが見ていた。


「いや、それより……アホって言った!?」


「何か?」


「い、いえ! なんでもありません!」


「ふえっ? わ、わたしはどうしたら……」


とりあえずネコネが困っているので、冷静さを取り戻す。


「コホン……とりあえず、いいよお兄さんで」


「ほんとですか!? わぁい〜! お兄さん!」


そう言い、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

うむ、可愛らしい……もちろん、純粋にだよ?

俺ってば末っ子だから、妹とか弟とか欲しかったんだよね。



その後、モーリスさんがネコネを連れて部屋を出て行く。

今日は仕事内容や実習訓練を受けて、明日以降から少しずつ働くらしい。


「やれやれ、びっくりしたよ。ほんと、女の子って見違えるよね」


「随分とデレデレしてましたが?」


「い、いやー別に……なんか、昔を思い出してさ。出会った頃のクレハは、あんな感じだったなって。いつもビクビクしてさ、俺の顔色を伺ってた気がする」


「そ、そんなことは……いえ、そうでしたね。自ら望んでついていきましたが……後になってこの人族は痛いことしないのとか、私に何をさせる気なんだろうって思ってました」


「はは……そうだよね。というわけで、デレデレしてたわけでないのです」


「ふふ、そういうことにしておきましょう」


ほっ、どうにか言い逃れができた。


さてさて、次は何をしようかなー。

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