第30話 破魔の拳、天下一品無二無三
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
地面に
「キサマを許さん――とはいえ、散々ぶちのめしてやったからな。ひとまずアタシの気は済んだ」
「そ、それじゃ……」
顔を上げたシアティに喜色が浮かぶも束の間、
「許さんと言ったはずだ。罰として、今後はぴあ
「あたしにも七伯を裏切れというの?」
「そうなるな。従わなければ――」
シアティは一瞬
「お、脅しても無駄よ! どのみち普通の人間に悪魔を滅することなんて、できやしないんだから――そこにいる
シアティ、次いで
「オレが……?」
「そうさ」と、マキナ。「キミは特別なんだ。だからこの仕事にスカウトした」
「もしかして、オレみたいな力を持った奴が他にもいたりすんのか?」
「この世界では
マキナの言葉の真偽を知るすべはないが、少なくとも
「ああ言ってるが、本当か? フカシこいてるんじゃあないだろうな?」
「今さら嘘なんてつくもんですか。どこから話すべきかしら……そもそも今のあたしの姿は、人間界で活動するための仮の肉体なの。他の悪魔も同じ。壊れても修復したり、作り直せる――はずだった」
ところが、そんな不滅の肉体を、素材である霊質にまで分解してしまえる者が現れた。
「キサマの本来の狙いがぴあ
「そうよ。我々が恐れるのは
「ほう。とどめを刺せないということは、アタシはキサマを無限にボコれるってわけだな」
「……
一転してシアティは
(完全に
その後、この場はマキナが取り仕切り、各自連絡先を交換したうえでのお開きとなった。
縛を解かれたシアティは黒翼を広げ、夏の夕空へと羽ばたいてゆく。
「これで勝ったと思わないことね。ボスの強さはあたしたちとは桁違いよ」
捨て台詞とも忠告とも取れる言葉を残し、シアティは飛び去っていった。
次いで、
「さっきは失礼なこと言ってすんませんでした。てっきり
「気にしないでくれたまえ。不審者と間違われるのは慣れっこだよ」
(言うほど間違いか……?)
ともあれ、
「結局
「そうだねぇ……彼女にはワタシから追い追い説明しておこう。勿論、給金もちゃんと支払うよ」
雇用主としてしっかりしているのだけは認めたいところだ。ただ、全く疑問がないわけではない。
「そういやこの仕事、人件費とかどこから調達してんだ?」
「え? ジンケンヒ……?」
「え、じゃねーよ! 不安になんだろーが!」
「……か、株とか、FX? だったかな? 雰囲気でやってるから、あまりよく分かってなくてねぇ……ハハハ……」
これ以上踏み込んでくれるな、とばかりにマキナは視線を逸らす。
*
期末テストも終了し、軽音部は部内ライブで盛り上がりを見せていた。
練習期間に余裕がなかったため、パフォーマンスには普段からの積み重ねが物を言う。そんな中、名乗りを上げたバンドは五組。
トップを飾るのは、
「初めての方も、おなじみの方々も、よろしくお願いします!」
苦手なテストを終え、清々しい面持ちで音頭を取るのはリーダーでギターヴォーカルの
その後ろでは、キーボード担当のぴあ
ドラムは他校生の
(フルメンとはいかなかったが、お披露目にはちょうどいいステージだぜ)
視聴覚室の半分を占める聴衆は二十人ほど。顧問の
「せーのっ」
入部から二ヵ月、このライブこそがバンドとしての華々しいスタートになるのだ――
この瞬間までは。
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