第27話 放課後先生ウォッチング
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
七伯爵のアジトにて。威厳を漂わせた影が問いかける。
「シアティよ、首尾は順調か?」
「ええ。
「うぬが最後の頼みの綱だ。期待しているぞ」
「任せて。ウフフ……愚図な人間どもに、あたしの擬態が見破られるはずがないのだから」
*
「
体育教官室に
慌てて飛びかかってきたジャージ姿の女教師が、
「大声を出すなぁっ!! そこまでは言ってないだろうっ!?」
「でもよ、ソナチネ先生……」
顔を覆う手を振りほどき、
「そ、そんな目で見るなよぉ……」
話を整理する。
先週赴任して来た
問題はここからだ。数日前から両者の距離は一層縮まる。
それはもう、念入りに、濃厚に。
「っつーか、
「その……嫌じゃ……ないんだ。むしろ、もっとしてほしい、というか……」
「そッスか! 末永くお幸せに!」
「め、
腰にしがみつく
「深刻なツラして相談っつーから来てみりゃ、ただのノロケじゃねーッスか!」
「違うんだぁ! お前に聞きたいのは、
「そんな話、何でオレなんかに」
「学校新聞で見たぞ。お前、部活の先輩と付き合ってるんだろう? 女同士の恋愛についてアドバイスが欲しいんだ」
よりによって、あのガセネタがここまで尾を引くとは、
「あれは飛ばし記事ッスから! 先輩とはまだ、つ、付き合っては……ないっつーか……」
「何だ、
完璧に痛いところを突かれた。相手が教師でなければ、今頃は胸倉に掴みかかっているところだ。
「慎重って言ってくださいよ! 恋にはタイミングってもんがあるんスから!」
「す、すまん。それもそうだな。お互い頑張ろうじゃないか」
「おう! って、何でオレが相談したみてーになってんスか!?」
結局、何も解決していない気がする。
だが、
*
「
最近も似たような真似をする悪魔と遭遇したばかりだ。疑うのは心苦しいが、警戒するに越したことはない。
(一応、雇い主に相談だな)
(悪魔どもの動きは今どうなってる?)
『今のところ、
(それか、とっくに内側に
『前例が二件もある以上、ないとは言い切れないのがつらいところだ』
前例――言うまでもなく、レもんと
仮に
(実は最近、ウチに来た先生がちょっと怪しくてよぉ。優しくていい人だし、考えすぎだと思いてーんだが)
『そうか……
*
部活休みの放課後。
「やあ、
「あんた……当たり前のように建造物侵入してんな」
マキナはご丁寧にもファンタジー盗賊のコスプレでめかし込んでいる。
「ワタシには不可視の術があるからね」
「前に体育館で使ったやつか。見た目だけじゃなくて、声とか匂いも認識されなくなるんだよな」
「そうとも。キミにも術を施すから、ターゲットの居場所まで案内してくれたまえ」
マキナはベルトポーチから聖水の瓶を取り出し、自分と
「イナ・イー・ナイヴァ!――これでよほどの使い手以外にはバレないはずさ」
ちなみに、同じ術のかかった者同士も認識し合える。今の
「毎度実感がねぇから不安なんだよな」
「道すがら試してみるといい」
そうするよ、と
「よっ、おつかれ!」
正面から挨拶をするが、見事にスルーされた。続いて教師にも声をかけてみたが、同様に無反応だ。
「安心したかい?」
後ろからマキナが追い付いて来た。場違いなコスプレ女がいるにもかかわらず、生徒たちは誰も気に留めてはいない。
「疑ってたわけじゃねーけどな。そんじゃ行くか」
「そこの角を曲がればすぐ……――おっと」
目的地も手前というところで、こちらへ歩いて来る白衣姿と出くわした。
「彼女が例の
「ああ」マキナに答えつつ、
(え――?)
「やっと来てくれたのね。遅かったじゃない」
蠱惑的な瞳がこちらを真っ直ぐに見据えていた。
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