第7話 衝天の魂波(ソルファ)
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
「お前さぁ、さっきからパンツ見えてんぞ」
「なぁああ――――っ!?」
レモノーレがスカートを押さえた隙を見逃すはずもなく。
「マキナ、今だ!」
「任せたまえ――ドゥア・ドーナ・ツノッド!」
背後に控えていたマキナが呪文ととも短剣を抜き放つと、既視感のある光の輪がレモノーレを取り囲むように発現した。
「これは……ドナツィエルの
瞬く間に
「困ったときは気合いで……解決……ッ!」
腰溜めに構えた
こちらを見下ろすレモノーレの顔が、さらなる驚愕の色に染まっていた。
「何だよそれぇ!? 貴様、ホントに人間……」
「黙って喰らいやがれ――〈
天に突き上げた
「ぬゔぉあぁぁ――――っ!!」
光の
「ホントに撃てるとは思わなかったぜ。やってみるもんだな」
「で……デタラメ、すぎるだろ……」
ズタボロになって転がるレモノーレへ、
「常識に
「やめて、
「
「何があったか知らないけど、もういいでしょ!? レもんちゃんは私の……初めてできた友だちなの!!」
割り込んできた
レモノーレは仰向けになり、嘆息する。
「あーしを……友と呼んでくれるか……」
「当たり前でしょ!?」
「……ごめんね、
「騙して……どういうこと?」
戸惑う
「あーしの本当の名はレモノーレ。人間界に不和の種を
「……あー。レもんちゃん、そういうお年頃かー。分かった。これからはちゃんとキャラ設定把握しとくね!」
「いやその……設定とかじゃなくて、本当に……誰か説明して?」
レモノーレは懇願したが、
「無視すんなぁ! くっ……こんなんじゃ死んでも死にきれない……」
「残念だったなぁ! さぁて、最期に言い残すことはないか? んん?」
「誰が貴様なんかに! だが、一つだけ心残りが……花壇の世話を……
「ヤダ! めんどくさい! レもんちゃんがやってよぅ!」
「そんなぁ……もう、どうにでもしてくれぇ……」
「そうか。じゃあ、お望みどおり――」
「……っ! …………!?」
襟を掴んでマキナの前まで引きずって行った。
「おい、コイツ生かしといても問題ねぇよな?」
「んー、そうだねぇ。一匹ぐらい誤差のようなものだ。ただし、
「ペットかよ! ったく、しゃーねーな」
あっさりと許可が降りたことに拍子抜けしつつ、
「っつーわけで
「こ、子分だと!? 誇り高き悪魔であるあーしが……」
「誇り高いなら負けはきっちり認めろよ。レもんさんよぉー」
「ぐぬぬ……!」
レモノーレ改めレもんを解放してやると、
「先輩、お騒がせしてサーセンっした」
「ううん。二人とも仲直りできたみたいでよかったー」
放課後、また部活で――約束を交わして、
午後の予鈴が鳴っていた。もうすぐ昼休みも終わりだ。
「しまった! このままでは授業に遅刻してしまう!」
「早く教室戻ろ? レもんちゃん服ボロボロだし、体操着にも着替えなきゃだね」
廊下の向こうへ消えていく親友たちの声を、
(ダチができてよかったな――
*
「やられたか……レモノーレまでも」
「しかも敵に寝返るなんてね」
「ケッ、七伯爵の面汚しが」
台座の赤い宝玉は五つ。一つはすでに輝きを失い、一つは青く変わっていた。
かつての仲間に対する
「予想はついていましたがね。ドナツィエルにしろレモノーレにしろ、悪魔としての自覚が欠けた半人前ですから」
「そうね。あいつらの堕天した理由って『天界の仕事ダリィ~』とか『あーしの給料少なくね?』ぐらいのノリでしょ? 期待するだけ無駄だわ」
冷ややかな言葉が飛び交う中、一人無言を貫いていた影がようやく口を開く。
「……ちょっと外の空気を吸って来るアルよ」
「動くか、ミナノミアル」
「違うネ。ただの休憩アルよ」
「そうか」
残る影は四つ。
「今度こそ俺様に行かせてもらうぜ」
「出るか、ファイ゠トノファよ。七伯爵きっての戦闘狂と
「フッ、ボクの出番はもうなさそうだ」
「悪魔の恐ろしさ、人間どもに見せつけておやりなさいな」
言われるまでもない――返事代わりに打ち込んだファイ゠トノファの拳が、
「クックック……うぬの拳は衰えを知らぬとみえる。ところで、ホウキとチリ取りは用具入れの中だぞ」
「カッカッカ! 了解だ!」
ファイ゠トノファは豪快に笑いながら、椅子の残骸を片付け退室して行った。
(次章につづく)
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