虫が支配する世界
@namahu_melon
episode.0世界への侵攻
兵士「リザスター基地、応答せよ!誰か聞こえているか!」
「...」
男「こちらリザスター...基地...現在...壊滅...状...態...」
兵士「おい、大丈夫か!?名前を教えてくれ!」
男「アレン...伍長...」
兵士「伍長、今の状況は!?」
アレン「戦力は壊滅...この基地は...」
ブワッという風切り音とともに、無線から声が聞こえることは無かった。
* * *
兵士「リザスター基地との連絡が途絶しました。おそらく基地は壊滅、所属部隊は全滅したものと思われます」
将官「なに!?...わかった、ご苦労」
兵士「失礼します」
将官「ふぅ...これで今月何個めか...」
突如現れた大型の昆虫型生物。
本来種を超えて協力関係を築くはずのない彼らは協同して人間を襲撃、瞬く間に世界を侵略した。
普通自動車ほどもある蟻、戦闘機ほどもある蜂、電車ほどもあるムカデ、バスほどもある蜘蛛など、様々な形の昆虫が人間を襲った。
ある物は蟻のアゴに切断され、また蟻酸で溶かされた。
航空機は蜂に全て撃墜され、人間は空の道を失った。
またある者はムカデの毒で苦しみながら命を落とした。
他にも蜘蛛に捕獲された人間はどこかへ連れ去られ、二度と戻ることはなかった。
* * *
リザスター基地の陥落により、この国では防衛線が大きく乱れてしまった。
この基地は最前線から少し入った所にあった基地で、周辺の防衛陣地への兵站基地や連絡の基地ととして機能していた。
この基地が落とされるということは周辺の防衛陣地では補給が途絶することを意味していた。
すぐさま奪還のため部隊が編成されたが、攻撃は失敗。
既に奴らの巣が完成しており、基地までたどり着いた部隊も、すでに地下通路で周囲に移動ルートを作っていた昆虫の大軍に包囲され壊滅した。
派遣された連隊はほぼ未帰還となり、人類ははまた数を減らした。
そして周辺の防衛陣地にも撤退の命令が下る。
兵士「作戦本部よりです!」
指揮官「読んでくれ」
兵士「リザスター基地陥落。以下の防衛陣地は放棄が決まった。配置の部隊は準備が出来次第撤退。集合場所はスコット基地」
指揮官「了解した。これより総員撤退準備を行う。1400時には撤退を開始する」
観測手「レーダーコンタクト!!!方位1-8-0!反応多数!」
指揮官「なに!?総員戦闘配置!」
観測手「新にコンタクト!.........」
指揮官「どうした!?」
観測手「敵影...全方角よりこちらに...向かっています...」
指揮官「なっ...他の陣地はどうした?!」
兵士「作戦本部より...周辺の陣地はすでに全て陥落...ただちに陣地を放棄して撤退せよ...」
指揮官「ばかな...撤退って囲まれているんだぞ...どこへ...」
兵士「敵を目視で確認!ダメだ...多すぎる...」
指揮官「くそぉぉぉぉぉ!!!!」
.........
......
...
リザスター基地陥落に続き、周辺陣地も全て陥落、帰還した者はいなかった。
そしてこれにより、防衛線に大きな穴が開くことになり、そこから大量の昆虫が侵入。
指揮系統が崩壊した軍では戦況を立て直すことなどできず、次々に拠点を失い、ついに残すところは首都だけとなった。
将官「最終防衛線も突破された...もうここまでか...」
兵士「敵勢力の接近を確認!市民に避難の指示を...!」
将官「どこに避難するというのだ?周囲は囲まれ、飛行機も飛ばせない...もうこの国は終わりだ...」
兵士「敵勢力、都市部に侵入を開始......」
そしてまた1つの国が消えた。
後に残されたのは多数の人間の死体、昆虫の死体、そして破壊された街並みだった。
* * *
昆虫たちは多くがその体を硬い外骨格に包まれていた。
これに対して既存の5.56mm弾では有効なダメージを与えられなかった。
倒すためには複数の兵士で集中放火を行う必要があった。
有効なダメージを与えるためには最低でも12.7mmは必要であり、それですらも複数発の命中弾を必要とした。
戦車や走行戦闘車であれば、ある程度の数を倒すことはできたが、蟻の強力な顎でハッチやエンジンカバーを破壊されて内部の人間や機械を破壊され無力化されてしまう。
そして特に硬い外骨格をもつムカデや甲虫類に関しては、倒すことができる兵器は戦車から発射されるAPFDS弾くらいしかなかった。
他にもやっかいな存在として毒蛾がいた。
これは単体の戦闘力は低く、歩兵の小銃でも対応できたが、毒蛾が撒き散らす毒針毛は吸い込んでしまうと気道が激しく炎症を起こして閉塞し、窒息してしまう。
このようにその生物の特性も体と共に強く、強化された昆虫たちは、その圧倒的な数も合わさって、人間にはどうしようもなくなっていた。
大陸の国家は瞬く間に次々と滅亡し、一部島国は海が昆虫の侵入を防いでくれたおかげで、比較的安全な生活を送れていた。
そして家族と海外旅行にきて虫の襲撃を受け、目の前で家族を無惨に殺された少女アオイは、偶然にも特殊部隊に救出され、対策本部が置かれている日本に帰国することとなった。
この少女が今後の戦局を大きく動かしていくことになる。
空路は使えないため船での旅だ。
帰国まではまだまだかかるだろう。
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