ただキミを幸せにする為の物語 -SSランクの幸運スキルを持つ少年は、疫病神としてパーティーを追放されたのでSSランクの不運少女とパーティーを組みます-

山外大河

1 疫病神としての追放

 自分が人並外れた幸運の持ち主であるという認識は、流石に改めなければならないと思う。

 正確に言えば改めざるを得ない。


「クルージ。てめぇとはもう今日限りだ。疫病神はこのパーティから出て行って貰う」


 自分が本当に幸運の持ち主ならば、きっとこうはなっていない筈だ。


「……悪いな、役に立てなくて」


 この日冒険者の少年クルージ・リーデスは、Sランクの高難易度クエストを終えた直後に、パーティリーダーである戦士、アレックスにパーティからの追放を言い渡された。

 両隣に居る魔法使いのクロウと弓使いのユアンから向けられる視線も決してこちらを擁護しようとしてくれるようなものではなく、アレックスの言葉に頷いていた。


 つまりは満場一致でクルージの追放に賛成しているという事だ。


 満場一致……それはクルージ自身も含めて。


 ……自分は、クビを宣告されても仕方が無いだけの理由を抱えている。


「役に立たねえどころか害悪だよ……何がSSランクの幸運スキルだふざけやがって。都合の悪い事全部俺らに押し付けてるだけだろてめえのスキルは! もう我慢の限界だっつーの!」


「…………悪い」


 人間は生まれつきスキルという固有の能力をその身に宿す。

 FランクからAランク。そこから更にSランク、SSランク、EXランクと格付けされるその力は、高ければ高い程強力で希少な物となる。


 クルージのスキルは『幸運』。

 ランクはSS。


 スキルは名称を知れるだけでその効力は手探りで探っていく必要が有って、それはクルージの場合も同じことだ。

 幸運というスキルがどのような効力を発揮するかは、自らの人生の中で探っていかなければならない。


 そしてクルージの幸運スキルは文字通り幸運を齎すスキルではあったのだが……事実その通りなのだが。

 その効力の表れ方は、ここしばらくの結果だけを見れば酷く醜く歪な形だ。


「本当に……ごめん」


 一緒に行動している他人の運気を吸い取り、自身の幸運に変換する。

 そういう風に作用しているようにしか思えない。


 自身に対して殆ど攻撃が飛んでこない代わりにアレックス達三人に攻撃が集中し、それだけならまだしも運が無かったと言わざるを得ない程の不運な攻撃の雨が降り注いだ。

 冒険者としての単純な実力がアレックス達の方が一段上だったが故に辛うじてどうにかなりはしたが、結果はどうであれその過程があまりに酷い物であった事は間違いない。


 アレックスの言う都合の悪い事を他人に押し付けているという評価は、まさしくその通りだと言える。

 

 だから謝る事しかできない。

 ……どう考えても自分は加害者だから。


 自分のスキルがそういう物だという事は薄々気付いていて、それでもそれを否定したいという願望の為に、取ってはいけない手を取ったのだから。


「俺達はお前が幸運スキル持ちで、しかもSSランクだっていうから仲間に誘ったのに何だよクソ! いつもいつも不運ばかり運んできやがって……お前は……ッ!」


 振り払わなければならなかった手を取ったのだから。

 一人で生きようと決めていたのに……だから故意に彼らを傷付けた加害者だ。


「……」


 こうして正当な形で突き放されて、改めて思うがアレックス達は辛抱してくれた方なのかもしれない。

 かもではなく間違いなくそうだ。

 本来であれば、もっと早い段階でこうなっていた筈なのに。


「今までありがとな……世話になった」


 だから申し訳なさと共に、感謝の言葉も自然と出てくる。


「おう、さっさと離れてくれ。お前が俺達の近くにいるだけで、命がいくつあっても足りねえからよ……頼むから」


「……悪い、じゃあな」


 こうしてクルージは一人になった。

 またしても一人になった。

 因果応報という奴だ。

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