元一般人、術師達の戦争で敵側ヒロインを襲い犯し奪い、褒美としてヒロインを抱きまくる、略奪ハーレム、現代バトル、主人公最強、現代ファンタジー

三流木青二斎無一門

ご褒美



表には裏がある。

表社会に出れぬ異能を宿す、裏社会の人間が居た。

彼らは戦国時代より存在し、天下統一を成した後でも争いを続けている。

その戦いは現在に及び、その地では多くの術師が争っていた。


現代まで生き残った術師達が睨み合い、牽制する中。

元一般人の術師が難攻不落と称された術家を単騎によって崩し、波紋を呼んだ。


妃龍院家に仕える男。

その名は屍河しが 狗威いぬい


術家の一つを単騎で滅ぼした事により会議が行われていた。

今回の戦で、功績を残した人物に褒美を与える会議である。

本来ならば、戦闘に参加し、戦果を挙げた家来や戦闘部隊の一部術師が相応の報酬金を貰うのだが、今回は屍河狗威のみであった。


「坊、」


妃龍院ひりゅういん憂媚ゆうび

三児の母であるが、未亡人とは思えぬ若々しさがある。

鮮やかな紅の髪を揺らして、首席の座から頭を垂れる屍河狗威を見詰めている。


「此度の戦、良き働きであった、近う寄れ」


言われ、屍河狗威は妃龍院の近くに擦り寄る。

手招きを続け、屍河狗威は手招きが止まるまで近寄って、目と鼻と先に、妃龍院憂媚が居る。

着物姿の彼女は、両腕を屍河狗威の頭に手を回して胸元で屍河狗威を抱き締める。



「何が欲しい?言うてみろ、われが持つものならば、なんでもくれてやる。金か、名か?それとも…体か?」


体、体とは即ち、この麗しい妃龍院の妻巫女を抱ける、と言う事か。

騒然とする周囲。褒美としてはこれ以上ない極上の代物だろう。


「憂媚さん、マジで言ってるんすか?そりゃあスゲェや」


興奮しながら屍河狗威は言う。


「戯言は申さん、坊…いや、狗威、お前の子を産んでやっても良いぞ?」


くすりと口を横に引いて笑みを浮かべる。

妃龍院の妻巫女を抱いた男など生涯で一人。

つまりは、妃龍院の妻巫女が生涯に選んだ男と同等の価値を持つ事と同義である為だ。


「母様ッ!」


妃龍院憂媚の娘が叫んだ。

同時に立ち上がる。

妃龍院の血筋を持ち、現在では分家の棟梁として働く嶺妃みねき紫藍しあんであった。


「戯れが過ぎます、その男が父と同等であると?ありえませんッ!!」


嶺妃紫藍の声に、家臣たちが頷く。

鋭い瞳をしながら、屍河狗威を睨んでいる。


「…なんだ、お前らは、妾の言う事に間違いがあるとでもいうのかえ?」


屍河狗威の頭を撫でながら、妃龍院憂媚は従士たちを見詰める。

その視線に、誰もが押し黙った。

当の本人である、屍河狗威だけは、違う思想を抱いている


「(いやはや、こりゃたまらんな、あの龍神様と一夜を共に出来るなんてなぁ)」


甘い香りを放つ妃龍院憂媚の裸体を想像してより一層興奮する様を見せる。


「…ッ」


嶺妃紫藍は歯軋りした。

確かに今回の戦は、単騎にて駆けた屍河狗威による功績により勝利した。

下賤ではあるが、実力があるのも事実。

力、技術、戦闘に関して見れば感服する所すらある。

しかしそれ以外は駄目だ。あまりにも俗世過ぎる。

その様な男が、神聖にして自らの母である妃龍院憂媚と夜伽を明かそうなど到底許せぬ行為だ。

だが、その話は妃龍院憂媚から持ち掛けている様なものだ。

誘っている、それを断るなど、出来る事ではない。


「…ならば」


嶺妃紫藍は自らの襟首を強く握り締めた。


「母様が身を汚す程ではありません…そいつの褒美は、私が与えます」


妃龍院憂媚の血筋を持つ嶺妃紫藍。

分家ではあるが、彼の働きから考えれば、むしろ嶺妃紫藍が相手をするのが相応しいだろう。


「お前が相手をすると言うのかえ?」


不満そうな表情で彼女は理由を説明する。


「イヌ…狗威の働きから見れば、母様が相手をする程ではありません、ですが、相応の働きをしたのも事実、妃龍院の血筋を持つ、私が相手を務めるのが相応しいかと」


ただ一人の男を抱いた妃龍院憂媚には、これ以上身を汚させるワケには行かない。

龍陣家の当主である彼女の格を落としてはならない。

その為ならば、この身を捧げるのも惜しくは無かった。


しかし彼女の決死の決断を前に。

屍河狗威は彼女の顔を見て怪訝な顔をして告げる。


「え、なに?紫藍ちゃんが?じゃあいいや、要らない要らない」


掌を左右に振り、屍河狗威はご褒美は不要と自ら断じた。

母親とは違う態度に一瞬呆気に取られた嶺妃紫藍は後に彼の不遜な態度に再び怒りを浮かべて見せた。


「は?…はぁ?!き、貴様ッ」


彼にも、彼なりの事情と言うものがある。

その理由を彼女に簡単に説明した。


「だって絶対に因縁しこりが残るじゃん…龍神様とだったら大人の余裕さがあるけど、紫藍ちゃんは、なんつぅか…ねちっこい」


そんな理由だった。

彼女と夜を明かした後の事を考えていたらしい。

恐らく愚痴愚痴と文句を垂れるに決まっていると、屍河狗威は確信してものを言っていた。


「ねちッ…」


唖然としてしまう嶺妃紫藍。

それを端で聞いていた妃龍院憂媚は思わず失笑してしまう。


「ふはッ!ねちっこい、とは…愛い愛い、では坊、何が欲しい?」


屍河狗威は周囲の人間を見回した。

殆どの人間が、屍河狗威など認めてはいない。

そんな憎悪と侮蔑を込めた視線を送り続けている。

それを見て、いつもの調子で、ちゃらんぽらんな風体をしながら軽口を叩いた。


「まあ、俺の功績に対して不満抱いてる方々が多いんで、要らないっすよ、強いて言うなら…まあお小遣い程度貰えば十分なんで」


彼の実力を認めない者たちに向けての言葉でもあった。

今まで成し遂げなかった家臣たちは、何もせずとも老臣として威厳と権威を振りかざせる。

だが、突如としてやってきた部外者が戦況を引っ掻き回し武功を立てる事が気に食わず、自分の地位すら危うく感じてしまっている。

彼のような異分子は、存在事態が認められない一つの理由だった。


「ふざけるなよ、貴様ッ!」


声を荒げたのは嶺妃紫藍だった。

彼の胸倉を掴んで無理矢理立ち上がらせる。

彼女の怒りは、褒美など不要と言う点だった。

まるで自分の体に何も価値はないと言われているように思えて、馬鹿にされた気分だった。

確かに妃龍院憂媚には劣るが、同世代であるのならば中々の肉体美を持ち合わせている。

若さを売りにした張りと弾力は、母親にも勝るものがあった。


「今すぐ私の家に来い、そして抱けッ!」


恥を忍んで提案したのが断られ、それで良かったと安堵の息など吐けない。

断られたら断られたで屈辱を抱いてしまうのだ。

だから、一度自分の言った事を不問にさせない為に、彼女は意地になって屍河狗威に迫り出す。


「いや、だからさ…後で何言われるかわかんないし、良いって言ってんの」


彼女の気迫を見て、屍河狗威は気圧されながらも言い返す。

顔を赤くしながら言葉を捲し立てる嶺妃紫藍。


「それは憐みだ、貴様、私よりも下に見ているつもりか?」


いやいや…と、決してその様に思っているわけではないと言いたげな表情だった。

だが、その軽薄そうな表情が説得力なんて皆無であった。

決して屍河狗威が取り入ろうとしない彼の性格を熟知しているのだろう。

嶺妃紫藍は彼の性格を見抜き、頬を引き攣らせながら嘲笑した。


「それともアレか、貴様には自信が無いのか、女を満足させられぬから逃げているだけか?」


逃げの姿勢を取っていた屍河狗威。

しかし、彼女の言葉に表情は真顔に変わる。


「あ?…紫藍ちゃん、それは違うでしょ」


彼にも譲れないものがあった。

彼女から舐められた以上、それを有耶無耶にする事は彼の意思に反している。

言うなれば、屍河狗威は、まんまと嶺妃紫藍の口車に乗せられたと言う事だろう。


提灯のみが灯る嶺妃紫藍の自室。

敷かれた布団は一つ、枕は二つ置かれている。

身を浄めた嶺妃紫藍は薄地の襦袢を着込んでいた。

首元で整う鮮やかな紫陽花を連想させる黒髪の毛先は濡れていた。


「さっさと、済ませるぞ」


反抗心を浮かばせながら。

嶺妃紫藍は屍河狗威の顔を睥睨して言う。


「はー…全く、紫藍ちゃんさぁ…」


本当に良いのか。

確認を取ろうとした屍河狗威に彼女は諄い、と叱咤する。


「黙れイヌ、私が言った以上、呑み込む真似などしない」


嶺妃紫藍は屍河狗威を蔑称を込めてイヌと呼ぶ。

蔑む相手に体を許すなど、我ながらどうかしていると、彼女は思っていた。

襦袢を開けさせる、彼女は屍河狗威の前に曝け出して布団の上に横たわった。


「だが、忘れるな…これきりの関係だ、私を抱いたからと言って、馴れ馴れしい態度など、取るなよ」


屍河狗威は彼女の本気を受け取った。

最早のらりくらりと逃れる事は、逆に彼女に失礼だと思ったのだろう。

サングラスを外して、着込んでいた甚平を脱ぎ捨てると、彼女の上に跨った。


「取るわけねぇだろ?…今夜限りって話だしな…成り行きで決まったけど、まあ、今夜は楽しませて貰うとするわ、紫藍ちゃんも、楽しもうぜ?」


今宵だけ。

その言葉を受けて嶺妃紫藍も納得した。

胸元を腕で隠しながら、眼を瞑る嶺妃紫藍。


「(初めてだが…痛いだけだ、苦痛に耐える事は慣れている)」


勉強した性知識を思い浮かべて、嶺妃紫藍は平然を装う為に秒数を数える。

屍河狗威が、彼女の体に触れていき…夜の最中。



ん、ぁっ


   まて…やめろっ

 そんな、やめろとっ   なッ


 ぁ…ふ、ぅぅっ


い、ぅな…そんなあまい、ことっ


    ちゅっ…んふぁっ


ふーっ…ふーっ…

           ?な、 あ?

  !? き、きさっ


ぃッいぬっ、やめ、そんな、言う、なぁっ!


  か、




 かわいいって…言うな…っ


ん、ぃ…  あっ!





その日。

…彼女の甘い声が部屋中に響き渡った。




「…」


屍河狗威は気まずかった。

昨夜の出来事が全て嘘である様に思いたかった。

調子に乗って色々な事や暴言すら吐いていた。

全てが終わった時に自己嫌悪に陥っていた。


「(気まず…)」


屍河狗威に背を向けて眠る嶺妃紫藍。

今日から嫌な程に嫌味を言われるかも知れない。

そう思うと億劫で、思わずため息が出る。


「(まあ…今回きりだし、後に引き摺らないとも言っていたしな…)」


それでも、突発に出会ったら反応が違うと思う。

少なくとも、同じ様な対応は出来ないかも知れない。


「(…なるべく普段通りに徹するか、紫藍ちゃんも勘違いするなと言ってたし)」


布団から出る。

今日はこのまま、家に戻って二度寝でもしようと思っていた。

服を着込む。汗や色々な体液が付着しているので違和感を覚える。

家に帰ったら即座に体を洗おうと思っていた。


「狗威様、お風呂の準備が出来ていますが」


廊下を歩いている最中、女中が声を掛ける。


「いや、家で浴びるんで大丈夫っす」


断りを入れてそそくさと帰ろうとするが。


「いえいえ、ご遠慮なさらず、あ、今日はガッコあるんで、勉強道具取って来ないと」


屍河狗威は適当な理由を付けて帰ろうとした。

だが、肩を思い切り掴まれる屍河狗威。


「勉学などしないのにですか?無駄なので風呂に入って朝ごはんを食べて行った方が有意義ですよ?」


「おまッ、い、言うねッ…」


女中の手の指の爪が屍河狗威の肩に深く食い込む。

意地でも屍河狗威を誘っているのは、恐らくは今後の話をしたいからだろう。

彼女たちにとって可愛い御当主が、一般人上がりの部外者によって初夜を奪われたのだ。

責任を取らねば、彼女の価値が穢されたまま、誰も貰い手等居なくなるだろう。

だから、彼女の幸せの為に、この男を無理にでも彼女を娶らせようと準備させているのだ。

その証拠に、彼女たちは口元は笑っているが、目が笑っていない


「(お前このまま帰れると思うなよ?)」


彼女たちの視線から屍河狗威はそう発信している様に感じていた。












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