第30話 ミア、希望への計画
ミアの長いミーティングが始まった。キーパーソンはティナだった。WCAのメンバーの協力も大きかった。まず、チームスタッフの拡充に関してティナが提案した。
「一番のベテランのヨギに相談しようよ。何か手があるかも」
ヨギに協力を求めると、思わぬ案が出た。
「それなら、デクラークのシルバーセンターに相談してみようか? わしの日頃の仲間だけど、暇な連中も多いから人数だけは集まるぞ」
ルカが訊く。
「失礼ですが、その方々は念力系の特殊能力や記憶補正はできそうですか? 津波対応なんですが」
「ほぼ大丈夫だろう。デクラークの老人は優秀だよ」
「その全員に対して一時的な移動、ワープはできますか? 地球はかなり遠いと思いますが」
「ソフィアに頼んでみるよ。同じ第五十六地域のよしみだ。みな協力してくれるじゃろ」
ヨギの近くにいたメリルも全てを聞いていた。
「私も協力させていただいてよろしいでしょうか? デクラークのおじいさん部隊は私が面倒みてもいいですよ」
「メリルさん、ぜひお願いします」
「はい、ではヨギさんと早速、準備を始めますね」
ミアは課題の一つがクリアできそうになりほっとした。そして次はパワーの方である。ティナが考えた。
「ブルーソースって使えないの?」
マークが答える。
「中長期的な平和維持、安定化には使えるけれど、突発的な災害を直接防止したり緩和することは難しいな」
「TJ、他に短期的に大きなパワーを出せるものって無いか探してくれない?」
TJが感心した。
「まずは使えそうなパワーを検索するか。合理的だな」
TJは端末を操作して早速調査を始めた。大きなパワー源は色々あるが、今回のケースに使えそうなものはなかなか無い。結局絞り込むと生命体になってしまう。
「今回使える十分なパワーは生命体によるものしかなさそうだ。データ的にはエルシアにいくつかと第三世界に相当数、デクラークにもありそうだが、これらはみな特定が難しい」
ティナがマークに訊く
「交渉できそうな知り合いはいない? WCAの人でもいいし」
「うーん、いないなあ。俺よりパワーのあるやつはそうそういないし」
それを聞いたアイリスが何かを思いついた。
「マーク…… パワーと言えば」
マークの口がパカッと開いた。彼も察した。
「ジーンか。いやいや彼女は止めておいた方がいい。なあソフィア」
ソフィアも顔を曇らせた。
「パワーは十分だけど制御できないわよ。間違ったら地球が破壊されるわよ」
「ソフィア、お前が緩衝役になれよ、さんざんしつけられてジーンの攻撃は慣れてるだろう」
「嫌よ、絶対。半端ないんだからね、あの人。なんでこの歳になってまたあの容赦ない攻撃を受けなければならないのよ。大体ジーンはWCA本部の人間なんだから忙しくてこんなケース対応してくれないわよ」
全員、考え込んだ。唯一使用可能と思われるパワー源は、強力すぎて制御ができない。その時、ティナに抱かれたデイジーが「ミィ」と鳴いてまたティナにテレパシーを送った。ティナが皆に説明した。
「デイジーがコントロールできるって言っているよ」
「ワープシードのテイジーが?」
「どうもデイジーはジーンを知っているみたい。しかも過去にジーンのパワーを制御したこともあるみたい」
ミアがソフィアに頼んだ。
「ソフィアお願い、ジーンにパワー提供を頼んでください。二万人の命を救えるのよ」
ソフィアはティナを経由してデイジーと話をした。
「ミア、わかった。母に頼んでみるわ。このワープシードは私達のルーツとも関係があって、突然変異的なジーンの能力もある程度制御できるのね。私が痛い思いをせずに済むのならぜひ協力させてね」
ソフィアは遠く離れたWCA本部にいるジーンと通信し、所定のタイミングでワープを使って強力なパワーを地球に照射してくれることになった。TJが同じタイミングで時間変換を行ってそのパワーを災害エリアに振り向けてくれる。デイジーがそのパワーをミアが使える形に変換するという算段だ。アイリスがミーティングの結果を総括した。
「本当に驚いたわ、こんな作戦聞いたことが無い。ミア、ぜひ頑張りましょう。歴史に残る作戦よ」
さらに準備が数日必要であったが、チームメンバーは各々やれる準備を十分に行った。作戦実行当日、チームが集合した。WCAの地区委委員全員、さらにはメリル率いるデクラークのシルバー部隊およそ百名、ある意味異様だが壮観なチームだ。
ミアが総司令となって、叫んだ。
「みなさん、集まっていただきありがとうございます。この日、地球の歴史が一つ大きく変わります。私達が一致団結して、二万三千人の尊い命を救うのです。現代の地球でこんな規模での歴史改変は初めてのケースです。困難が伴うでしょう。でも皆さんが精一杯対処してくれればきっと成功するものと信じています。頑張りましょう」
「オー」という大勢の声がこだました。作戦は開始された。
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