第23話 TJの占い(後半)

 ティナがのってきた。「次、ルカ」

「うーん、占いって何を訊いたらいいのかわからん」


 ティナがわくわくしながら言う。「じゃあね、じゃあね。私が代わりにルカの事訊いてあげる。いい?」


「まあ、いいけど」

「やったあ。TJ! ルカはねえ、前世はつまんないから、今のルカの深層心理を暴いてくれない? それから誰といつ結婚するのか? しないのか? この二つね!」


「おい。やめてくれよ。思いっきりプライベートじゃないか」

 アイリスが「ぷぷっ」と笑って、何かごそごそし始めた。それを見たルカが釘を刺す。「アイリス、撮影は駄目だって言ってるだろ」


 TJもにやけながら調査を始めた。少し時間をかけて調べ終わった。

「ルカ。面白いなお前。なかなかだぞ」


 ティナのわくわくが最高潮に達している。目がらんらんと輝いている。TJがちらっとルカを見てから言った。


「まず、ルカの深層心理はだな。見た目は男だが、内心実は女性だ、トランスジェンダーっていうやつだ」


「えー」一同驚き。ミアは両手を口にあてルカを見つめている。そしてTJはなおも不敵な笑みを浮かべている。一番驚いたのはルカ本人だ。僕が女だって? そんなばかな。


「いやいや、そんな事は無い。僕はれっきとした男だよ」ルカが反論した。

 ミアは少し後ずさりする。ティナが訊く。


「ルカが実は女ってことは男が好きなわけ? 例えばマークとか?」

 マークは軽くかわす。

「俺は構わないけどな。同性からも人気があるのは仕方が無い」


 ルカは思いっきり否定した。

「無いよ、無い無い。だから違うって。僕は根っからの男だし、女性が好きだ」

 すると、TJが冷静な口調で言う。

「ルカ、自分の事は意外と自分では分からないもんだよ。君はただのトランスジェンダーじゃない。さらに非常に稀な存在だ」


「何それ?早く教えてよ」アイリスが食いつく。

「実はだな、君の本性はレズビアン、レズだ」

「へえー」アイリスが素っ頓狂な声を上げた。「はあ?」ルカは眉間にしわを寄せ言葉も出ない。


「男なのに、本性はレズですってえ? ねえTJ一体どういう事なの?」

 TJはルカを諭す。


「君は女性が好きだと言うが、それは君が実はレズだからなんだ。わかるかい?」

「TJさん、あんた適当だ。どうしたらそんなひねくれたことを思いつけるんだ?」


「いえ」アイリスが真顔になった。「そう言えばルカの行動は男っぽくなかった。ねちねちした感じで女性に迫っていたわ。あなた下半身に可愛い道具持ちのレズなの?ちょっと新鮮かも」


「アイリス! はしたない。そういう下ネタはやめなさい!」 ソフィアが一喝した。ティナは一人ゲラゲラ笑っていた。


「あーおかしい。かんべんして、TJ。それくらいでいいから結婚相手も教えてよ」

「何だ、もう詳細説明はいいのか? つまらんな。じゃあ次結婚相手ね」


 ルカはうんざりだった。「もういいですよ。次の人に行ってくださいよ」

「そうはいかん。ちょっと待て…… お、よし確率で複数出たぞ」


「また確率かよ。天気予報じゃないんだからな」マークが突っ込む。

「行くぞ、いや少ない方から行きますよ。まず5%の確率で、ソフィアー」


 ソフィアが低い声でTJに釘を刺す。「TJ、私をばかにしたらただじゃおかないからね。宇宙の藻屑にするわよ」

 マークが小声で隣のティナに言う。「もしかして確率が低いから怒ってるのかな?」


 その瞬間、ソフィアがマークに電撃を見舞った。マークは黒焦げの顔で目をパチクリした。ティナがマークに呟いた。


「違うでしょ。名前を出すなって意味でしょうよ、ばかだね」

「はい、次行きます。」怒っているソフィアを見てTJは少し慌てだした。「20%、アイリス。おめでとさん」


 アイリスは不服だ。

「私はルカなんかと結婚はやだな。女だし。イケメンの男がいい」

「だから僕は男だって言ってるじゃん」とルカ。 


 間をおかずTJが続ける。

「30%、ティナ。でもティナは子供だから無いなこれは」

 ティナは軽くあしらう。


「パス。私の方がパス。ルカは頼りない」

 ルカは情けなくなってきた。TJはソフィアの表情をチラ見しながらそそくさと続けた。


「じゃじゃん。一位、40%なんとヨギ……嘘です。まあ順当にミアです。腐れ縁の様です」


 ルカは少し想定していたが、何とも雰囲気が塩っぱい。白けた空気になっている。

 ミアは後ずさりしたまま、まだ口を手で押さえている。


「私、ルカは嫌です。ごめんなさい」ショックー。告白もしていないのに断られたよ。TJ、恨むぞ。


 ソフィアが言った。「みんなそろそろ余興の時間は終わりよ」

 ティナが突っ込む。「ソフィア待って。ミアだけはやろうよ。TJ、あなた長すぎるのよ。もっと簡潔にしてよ、面白いんだけどさ」


「いいわ。じゃあミアで最後ね」

「私ですか?でも何を訊いたらいいか」


 ティナがやはり口出しする。「やっぱりミアもどんな人間で、将来どうなるか。これで占ってもらおうよ」

「え、ええ」


 TJはすぐさま答えた。

「えーと、ミアはですね。実は男ですね。それも超強い男」

 みなからブーイング。適当すぎる。超強いは合っているかもしれない。ミアはふくれた「ひどーい」。


「すみません…… で、将来はですね、超強いので星を吹っ飛ばすほどの人になるでしょう。ジーンもびっくり」


 マークが真面目に言った。


「そりゃ現実になるかもしれんな。ミアの能力は結構やばいんだ。ミアはますますふくれた「ひどいなー」


 TJは締めに入った。

「でもミアは優しいからその力を全て良いことに使って人々を助けると思います。怒らせさえしなければですが……」


 ミアが少し機嫌を直した。

「TJさん、怒りますよ。いいんですか?」

「いや、やめてください。ソフィアが二人になったようだ」


「わかりました。これからはもう少し真面目に占ってくださいね」

「はい……」TJはほっとした。


 それから数日間、ルカ達とWCAメンバーの交流が続いた。特にティナはWCAの誰ともなつくように親しくなった。彼女は不思議に人を引き寄せる魅力があるようだ。


 中でもTJにはくっついて離れず、TJの仕事内容や知識を次々と吸収した。TJもこんな積極的な子は初めてで、まんざらでもなかった。


 最後の方では、TJ以外のWCAのメンバーが知らないようなコアな技術情報まで教えてもらっていた。彼に何かあったらティナに代わりが務まるかもしれないほどだ。

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