第20話 メリルと散歩
翌日、ソフィアの提案でルカ、ミア、ティナの三人は支部近郊を散策することにした。付近に詳しいメリルが案内役を買って出た。
メリルとティナが一緒に前を歩き、ルカとミアが後ろを二人で歩く。メリルは恐らくルカやミアより年が若く、年齢はもしかしたらティナに近いかもしれない。
「メリルさんはおいくつなんですか?」ティナが訊いた。
「年齢ですか?十歳ですが。」
「え、嘘でしょ。私より若い?」
「あ、えーと地球は365日で一年ですよね。デクラークは公転周期が600日くらいなので、地球の数え方で言うと、そうですね、十七歳くらいです」
「あー、びっくりした。この星は老けるのが早いのかと思った」
「老ける、はちょっとあんまりですね。ふふ」メリルが笑った。
「ティナさんはおいくつなんですか?」
「私は十一歳です」
「すごい。お若いんですね。守護神候補では珍しいと思いますよ」
「そうなんですか」
「ティナさんは地球では何をなされているんですか?」
「え、小学校に行っていますけど」
メリルは少し上を向いて何かを頭に思い浮かべてから言った。
「勉強されるところですね。五年生か六年生ということでしょうか」
「なんでわかるんですか?」
「TJさんのサーバーにアクセスしました。地球の情報が取れます」
「端末とか使わなくてもできるんですか?」
「はい。たぶんティナさんもすぐにできるようになりますよ」
二人の前をリスのような動物が数匹横切って行った。ティナが声をあげる。
「可愛ーい。何?あれ」
「スクワールです。たぶん、地球にいる動物とほぼ同じだと思います」
「へー、地球のリスそっくりだよ」
「過去に遺伝子が運ばれたのかもしれませんね。他にティナさんが地球で馴染みの動物はいますか?」
「犬を飼っているよ。あと地球では猫が多いかな」
メリルはまた少し視線を上に上げて何か情報を確認してから言った。
「どちらも小型で可愛い動物ですね。地球の人たちはペットとして飼っているのですね。いい習慣です」
「そうですか。でもね地球では時々捨てられたり、交通事故にあったりするんです」
「それは可哀想ですね」
「私、動物が好きなので、エルシアでも人と一緒に動物も守れるといいな」
「それは素晴らしい心掛けですね。応援しています」
「あ、話は変わるけど、マークってこっちではどんな感じなんですか? かなり前からこの支部で一緒なんですよね?」
「マークさんですか。そうですね。私がここでお手伝いを始めさせてもらった時にはもちろん、すでにいらっしゃいましたね」
「どんな感じなんですか?」
「そうですねえ。いい人ですよ。常に優しいし、面白い人ですし、いざとなれば文字通り神がかった活躍もされるそうですし」
「でもアイリスとかソフィアさんが、マークは少し女の人好きみたいなこと言ってたけど…… メリルさんも言い寄られたりしませんでした?」
メリルはくすくすと笑った。マークの事は良く知っている。
「はい、あの言い寄られてはいませんよ。マークさんは確かに女性がとても好きな様ですが、基本的に優しいので嫌がるようなことはしませんし、分別はそれなりにあるように見えます。ただし、昔何をされたのか罰なのかわかりませんが、女性に関して何か制約を課されているようでしてずっと交際などは自粛されているようです。私が最初の頃も良く面倒は見ていただきましたが手は出されませんでしたよ。私は別に気にしていませんでしたが」
ティナはそれを聞いて安心し少し微笑んだ。「そうなんですね。昔何をやらかしたのかは訊いておかないと、ですね」
メリルはなおも笑った。「確かに。でも追及はほどほどにしてあげてください。
ティナさんはマークさんの事をどう思ってらっしゃるのですか?」
え、それは結構直球だし。
「いや、あの、その。別に特別なことは思ったりなんか……」
ティナの眉が上がった。
「ティナさんは正直ですね。顏に出ていますよ。マークさんは頼もしくて優しいですものね」
ティナは最初の山で肩車してもらってことを思い出した。
「あのー、この話は止めましょう。あー暑い暑い」ティナは変な汗が出てきた。
メリルが微笑んで言った。
「ごめんなさい。今度マークさんの好みの料理とか、癖とかお教えしますね。苦手な事も……」
「あ、その辺はぜひ教えてください」
その頃、マークとTJは支部でくつろいでいた。マークがくしゃみをした。「誰か俺の噂をしているな」
「それから、あのこれは極秘情報ですけど、教えちゃいます」(全く極秘では無いが)
「TJさん、いるでしょう。あの人、実は占いが超すごいんですよ。何でも当てちゃいます。未来も見えているみたいなんです。明日色々占ってもらったらいかがですか?」
「メリルさんは占ってもらった事あるんですか?」
「はい、何度も。他の方はあまり知らないようですけれど」
「じゃあ、お願いしようかな」
「TJに言っておきますね」
「お願いします」
支部では今度TJがくしゃみをした。「私の事も話している者がいる」 マークは「だな」と頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます