引きこもりは魔王になった!!

語 おと

一章 引きこもりと魔王は兼業できますか?

01話 引きこもり場所強制変更

思いつきで生まれた話。全てが思いつき。

R15は保険。

最初がプロローグ的なやつ。

途中から主人公視点になります。



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 地上年2024年


 この年は、とても騒がしかった。

 その理由の一つに勇者が現れたことがあった。

 勇者というのは、神に選ばれた一人の人間のことだ。

 しかし、それはおとぎ話だけの話だった。


 去年までは。


 実際、勇者が現れたのだ。おとぎ話は現実のものとなった。

 ちなみに勇者の話はこんな話だ。

《魔王が現れた時、神が勇者を選ぶ。勇者は人々のために戦い、平和をもたらすだろう。》

 実際に勇者が現れたことにより、人々は不安に思った。

 勇者が現れたのなら、魔王が現れても不思議ではない。そう考える人は少なくなかった。

 世界中で魔王の存在が噂されるようになった。

 だが、魔王は一向に現れる気配がない。

 魔王はやはりおとぎ話だけの存在なのではないか。

 そう思われ始めた頃……魔王が現れたという噂が流れた。

 あくまで噂だ。本当かどうかはわからない。

 それでも、火のないところに煙はたたぬというように、そう言われるようになった理由があるはずだ。

 そう考えた人々は、噂の出所を探した。

 出所は見つかった。

 噂を流したのはなんと魔王本人だった。

 魔王はたくさんの配下を集め、国を作っていた。

 前まで枯れ果てて人も動物も暮らせなくなっていたはずの場所にだ。

 人々は魔王を恐れ、勇者は魔王の国を目指し、旅を始めた。

 


 ◆◆◆◆



 俺の名前は……長いからめんどくさい。とりあえず、俺の呼び名はレインディー。

 今、俺は、布団にくるまっている。

 いつも通りのことだ。

 もしかしたら布団にくるまってる時間のほうが長いかもしれない。

 と言っても、時間感覚が狂いきってるせいで、今何時か全く把握していない。

 

 ああ、引きこもってから何年経ったんだろう。わからない。

 知り合いは生きているだろうか。わからない。

 親友兼幼馴染は……ああ、あいつのことだから大丈夫か。割と最近、会いに来てくれることがあったし。来てくれるたびに世話してくれて助かったんだよな。


 う〜ん。周囲の状況が何もわからない。だって布団から出ても部屋の中は薄暗いし、外に出る気もないから。

 

 引きこもった理由がなんだったのかはもう忘れた。だけど、その理由にめんどくさいからとぐーたらしたいからっていうのが入ってたのは覚えてる。

 俺は引きこもってよかったと思ってるよ。動かなくてもいいし、働く必要もないし、頭を無駄に使う必要もない。それに、ずーっと寝てていいんだから。


 周囲の状況がわからなくても困ることは何一つない。俺は外に出るつもりはないし。引きこもりをやめるつもりなんて全くないし。


 はぁ。頭の中で考えるのもう疲れたな〜。

 

 よし。寝よう。

 寝れば頭の疲れはリセットされる。


「ぐぅ」



 ーーブイーン、ファンファンファンファン、シュオーーーォォォォ



「レインディー、そろそろ引きこもりをやめたらどうかしら?」


 ああ、幼馴染が入ってきた。

 なんで今なんだろうか。頭でたくさん考えて疲れている時なのに、また考えないといけないじゃないか。少し迷惑だ。

 それに、さっきも頭で考えたけど、引きこもりをやめる気はないよ。俺はずっとぐーたらしていたいんだ。


「ねえレインディー……。いつからその布団から出ていないのかしら。最後に会いにきたのは100年くらい前だけれども、それより前からよね?」


 ヘェ〜。前に親友が会いにきたのって100年も前なんだ。割と最近?なのかな。って考えると、布団から数百年出てないってことになるね。数百年に一回、親友が会いにきてくれるけど……あれ?


 そういえば、君が俺のところに来るのはもう数百年後の予定だっただろう?なんで100年ちょっとで来てるのさ。


「ああ、そういうと思ってたわ。ちゃんと理由があるのよ?」


 えっ、なになに?なんで君は100年ちょっとで俺のところに来たの?


「まず、あなたには引きこもる場所を変えてもらうわ」

「!?」


 なんてことを言うんだ!この薄暗い部屋は、俺が過ごしやすいように俺自ら作った数少ないものだ!そこから移動しろなんて、俺に体調を崩せと言っているようなものだぞ?!

 俺は絶対にここから移動しないからな!

 

 俺はさらに布団の中にくるまる。体を丸めて、布団に張り付く。

 絶対拒否のポーズだ。


「まあまあ、みんながレインディーに過ごしやすいように作ってくれた場所だから大丈夫よ。きっと。私も試してみたけど、すっごくよかったわよ?」


 みんな?みんなって誰のことだ?俺に友人は親友兼幼馴染のお前しかいないが?

 

「まあまあまあまあ。とりあえず布団から出て」

「ーー!! 〜〜っ!!!?   !?!!!!」


 布団を剥がれ、手を掴まれた。

 強引だったので、流石に驚いて目を開ける。

 こんなにばっちり目が覚めたのは久しぶりだ。って、お前絶対何かしただろう。

 そう思って、親友をじーっと見つめる。


「ほら、立って立って」


 親友は俺の腕を引っ張り上げ、無理やり立ち上がらせる。久しぶりすぎて、バランスをとるのに時間がかかってしまう。寝付くまでの時間よりずっと長い。

 ヨタヨタとしながら、やっとバランスをとる。

 俺は再び親友の方をじーっと見る。さっきより睨んでいるが。


 いきなり立ち上がれとか無理に決まっている。君は俺が何年横になってたと思うんだ。


「はいはい、歩く歩く」


 親友は俺の腕を引っ張って、歩かせる。

 拒否できないのが辛いんだよな。これ。俺は親友より力が弱いから。


 少しずつ、この薄暗い部屋の出口が近づいてくる。


 ああ嫌だ。このままじゃ外に出てしまう。

 最後の悪あがきで、扉があった場所に手をかける。その抵抗も虚しく俺はあっという間に部屋の外に出てしまった。


 ああ〜。ずっと出なかった部屋をついに出てしまった。

 俺は親友のことをじーーーーっと見つめる。


「………………」

「ごめん。ごめんって。まあいいじゃん。ほら、背中に乗って。地上に出るから」


 嫌だ〜。親友は謝ってくれたけど、嫌だ〜。

 そう思いながらも、俺は親友の背中に乗る。

 親友は、周りから見るとどうみてもダメなやつな俺を、こんなに面倒見てくれる。

 なんだかんだ親友は世話焼きだ。だけど、それが俺にはありがたい。

 親友……、ありがとう。


 背中に背負われながら、俺はそう思う。


「ちょっとレインディー。照れるからやめてよ」


 親友、君が照れることがあるんだね。

 そんな反応は見たことがなくて、少しだけ驚く。

 いつもの君(100年前くらい)はそんな反応をしないから意外だった。

 普段見せない一面を見せてくれて、俺は少しだけ微笑む。

 この笑顔は自然と溢れでたものだ。笑顔なんてこんなめんどくさがりな俺がわざわざ作るわけがないじゃないか。


「ほら、地上だよ」


 親友が俺に声をかけてくる。

 それを聞いて、俺は気が重くなる。


 嫌だな〜。外に出たら、眩しい太陽が出迎えてくるんだから。

 太陽ってさ、嫌いなんだよね。目が潰れそうになるほど明るいし、寝づらいじゃないか。それに、なんか、はっはっはって笑ってそうでムカつく。


 もうすぐその大嫌いな太陽が出迎えにやってくる。

 目に太陽の光が入ってくるのが嫌で、俺は目を瞑る。目を瞑っても、困ることはない。外に出たら空気が変わるし、瞼の隙間から少し光が入ってくるからすぐにわかる。


 ほら。もう明るい。


 ん?


 待って。


 親友。ちょっと待って。


 俺は目を開けた時に見た景色に驚いて、親友を呼び止める。


「ん? なに?」


 君は何もおどろかないの?だって、変だよ!俺が作った地下の部屋は屋外にあったはずなのに、なんで建物の中に出るんだよ!


「ああ〜。レインディーが言いたいのはそのことか。この建物はね、新しいレインディーの城だよ」


 えっ……。

 城?


「…………」


 えっ?

 頭の回転が一瞬止まった。

 もしかしたら一瞬じゃないかもしれない。数秒かもしれない。だけど、一回、確かに止まった。


「ーー!!!! 〜〜!?? っ??」

「ちょっと! 首! 首! くるし!!」


 俺は全身に力を入れてしまい、うっかり親友の首を絞めてしまった。


 ごめん。本当に驚いたんだ。大丈夫?

 親友の手の力が抜けて、俺が自分で立たないといけなくなったから、本気で心配だ。


 本当に大丈夫?


「うん。もう平気だよ」


 ねえ、親友。この建物は……何?


「ああ、聞いてなかった? これはねえ、レインディーの城だよ!」


 聞き間違いじゃなかった。もしかしたら聞き間違えただけかもって思ってもう一回聞いてみたけど、気のせいじゃなかったんだね。

 できることなら気のせいだった。夢だったんだで済ませて、地下に戻って寝直したかったよ。


 親友……。


 ねえ。なんで地下で寝てただけなのにその上に城が建ってるの?




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