バイオハザード

莉音

現実

第1話 現実

丁度いい日差しが窓から入り、気持ちの良い目覚めの悠太ゆうた

「おはよー。美咲みさきもう朝だよー。」

悠太は今にも壊れそうな錆びた時計を指して妹の美咲を起こした。

「それにしても、酷い世界だ。」

悠太はベランダから顔を出し、辺りを見渡す。

周りには人の姿は無く、古い人のいない廃墟が広がる。

時折その中に人影が見えるくらいだ。

だが悠太は知っていた。

その人影の正体を。

この辺りを徘徊しているバケモノだ。

なんでこんな事になったのか。

これは200年前に遡る。


200年前、ここでは大規模な核戦争があった。

核戦争の争点は"領土"だったらしい。

醜い争いだ。

両国の戦争はこの世界全体に持ち込み、あらゆる場所で核爆弾が投下された。

複数の核爆弾のせいで人類はほぼ絶滅したと言っても過言ではないだろう。

でも僕たち小野家は命からがら逃げ切った。

家の地下室に各シェルターがあったそう。

でも周りは全て核によって死んでしまった。

あるいは大量の放射線による汚染でになることもあった。


今この場にいるのは小野家の悠太と美咲だけだ。

「おにぃちゃん、おはよー。」

美咲が起きたようだ。

「遅い。もっと早く起きる努力をしたらどうだ?」

悠太は妹を軽く叱る。

「いやよぉ。ここには何もないし、何もすることがないからぁ、起きてても無駄じゃない。」

妹は朝早く起きろという悠太に不満があるらしい。

「何もすることないって言っても探検しに行かないと。まだ僕ら以外に残ってる人がいるかもしれないじゃないか?」

悠太は朝早くから探検すると言ってるが妹の美咲は、、、

「それはそぅだけどぉー。」

美咲は嫌そうに言う。

「あーわかった。今日は俺一人で行く。」

悠太は絶対に出たくないと言う妹は家に残し自分だけ探検に出かけると言った。

「お兄ちゃん一人で大丈夫ぅ?ゾンビに負けるんじゃなぁい?」

美咲は悠太をからかう。

「美咲じゃないから大丈夫!じゃあ僕は地下から水を汲んでくるから。」

悠太はそう美咲に言って、その場を離れた。

この家の地下には汚染されていない綺麗な地下水がある。

僕らはその地下水を使って今日を生き延びている。

悠太は入るだけ水筒に水を入れ、地上に戻る準備をしていた。

悠太のもつ水筒は長い間使っているのか、年季のはいった古い水筒だ。

地下水がある場所から地上までは梯子一本で繋がれている。

悠太は地上に戻り家のリビングルームへ足を運ぶ。

手慣れた様子でリュックの準備をし、妹に「行ってきます。」と言って家の玄関を出た。

外に出ると背の高い鉄でできた古い柵があった。


「そろそろ治さなきゃな。」

悠太は錆びついて、ところどころ穴の空いている柵を見てつぶやいた。

悠太は重い柵の扉を開け、最後に小さく「行ってきます。」と言って柵の外へ出た。

やはり周りには何もなく、廃墟が広がるだけだった。

(今日はこの前より遠くまで行かないと...。」

悠太は慣れた足取りで遠くの方まで走る。

(今日は何か発見して持ち帰らないと。)

悠太は初めてくる場所に足を運び、その場に立ち止まった。

何か発見したのだろうか?

悠太が見る方向には寂れた廃病院があった。

「こんなところにも病院があったのか。」

悠太は廃病院まで走り、院内を散策した。

いくつかの医療本などを回収し、次の階へ行こうと階段の一段目に足を置く直前、悠太の足は動かなくなった。

金縛りか?

悠太の見る方には人間であろう黒い人物が佇んでいた。

「大切な人が消える。」

黒い人物が呟いた直後、悠太は廃病院が場所の目に立っていた。

そこには先ほどの黒い人物はいなく、何もなかったかのように廃墟が広がる。

病院があった場所だけ何もなかった。

悠太は頭の中で繰り返した。

「大切な人が消える、大切な人が消える。」と。

気づくと辺りは暗くなる手前だった。

俺は黒い人物が言っていたことが本当だったらと、不安に思い家まで全力で走った。


家に着いた時にはもう手遅れだった。

柵は壊れていた。

悠太は走って家の中まで入った。

だが美咲はゾンビ病によって半分汚染されていた。

美咲は泣いていた。

美咲という人では無くなることを悟っていたのだろうか。

悠太の存在に気づいた美咲はゆっくり口を開いた。

「おにぃちゃん?ごめんね私、逃げれなかった。もうちょっとでゾンビになると思う。私はおにぃちゃんの妹でよかった。」

ゆっくりと話す美咲は半分が人間で、もう半分がゾンビというゾンビ化が進行中の姿だった。

美咲は元気がないようだ。

「ごめんな・・、ごめんな、俺が一人で外に出たから・・・。」

悠太は美咲に何度も、何度も謝る。

「あや、まらない、で、おにぃ、ちゃんは、悪く、ない、ありが、と、う。」

ところどころ途切れているが、限界が近いのだろう。」

それを最後に妹は喋らなくなった。

悠太は無くことしかできなかった。

そんな悠太の前に、病院で見たあの黒い人物がいた。

「残念だったな。でも死んだわけではない、そいつは自ら眠ったのだ。当分目は覚まさないだろう。」

感情がこもっていないその言葉に悠太は返答する。

「あんたは誰なんだ?ゾンビを人間に戻す方法を知らないのか?」

その質問に黒い人物がゆっくり喋る。

「戻せないことはない。」

悠太は顔を上げる。

「どうやって戻すんだ?戻し方を教えて!」

悲しみ、怒りが混ざったせいなのかいつもより強い口調になってしまったが、その質問に黒い人物は答える。

「お前がよく知っているだろう。お前の祖先が残したをな。」

黒い人物はそういい消えていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る