昭和の思い出 健太とちいとウインナー

黒猫

とあるスーパーの試食販売

昭和時代、健太(6歳)と妹のちい(3歳)は、週に2回母親と一緒に夕飯のお買い物に出かける習慣があった。特定のスーパーに行くことが多く、その時間帯にはお腹がすくこともあって、ウインナーの試食販売がよく行われていた。そこには同じくらいの年の子どもたちが集まっていて、試食を楽しんでいた。


好奇心旺盛な健太もその一員となり、並んでウインナーを一つつまんでみた。口に入れた瞬間、「あっ、これは美味しい!」と驚き、妹のちいにもこの美味しさを味わわせたいと思った。母親と一緒に買い物をしていたちいに声をかける。


「ちい、こっち、こっち」

「何、どこ行くの?」

「いいからおいで」

「うん」


健太は試食のウインナーを指さし、「これ食べてごらん」と言った。ちいは「美味しそう」と言って手に取った。その瞬間、試食を作っていたおばさんがちいをにらんで言った。


「こらっ、『頂きます』は!食べたら『ごちそうさま』も言うんだよ!」


今まで何も言わなかったおばさんの一言で、周りにいた子どもたちはあっという間に散り散りになった。取り残されたちいは、心にぽっかり穴があいたような悲しさで、その場にたたずんでいた。それを見かねた健太が、ちいの手をつかんでこう言った。


「ちい、行こうか」


二人はそのまま母親のもとへ戻り、買い物を続けた。幼い心に残ったその日の出来事は、昭和の子どもたちの成長の一コマとして、今もどこかで語り継がれているのかもしれない。

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昭和の思い出 健太とちいとウインナー 黒猫 @tanokuro24

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