幼馴染との心理戦〜ってかっこよくみせたけど俺は幼馴染の一言に何度もやられて勝負にすらならない!〜
子午蓮
第1話 その一言で。
「ふーん」
はい! 死んだー!
もう、無理だって。
あと何回殺されれば、俺は勝てるんだよ。
みんな知ってるか?
女性の『ふーん』って一言で男性は容易く殺されるってことを。
3文字ってなんだよ、怖すぎるだろ!
ソースを出せって?
ソースは俺。
ちなみにソースと
集めたデータによると、その一言で男性は全滅の危機に瀕する。
武器なんていらない、必要なのはたったの3文字だけ。
ちゃんと男性の友人2名からアンケートを取ったから間違いない。
俺の周りの『ふーん』を放つ頻度の割合は幼馴染9:妹1:母0
データ少なっ!
ほぼ家族じゃないかっ!
こんなのポストしてみろ、バズりなんて全く関係なく少数のアンチだけを獲得してしまうかもしれない。
幼馴染が『ふーん』ってリプライしてきたらどうなるのかだって?
やめてほしい、古傷を
【今日も天使がかわいい】
【ふーん】
いつも必ずいいねをするのに、この後に何も反応していないことから察してほしい。
それなら0の母は優しいのではって?
母さんは優しい。
母さんは『ふーん』なんて言わない。
ただ世間話でつまらないことを話題に出したら、場が凍るほどのすげー冷たい眼差しを向けてくるだけだ。
肌が痛いと錯覚するほど凍りつくけど0なのは間違いないだろ。
母さん、俺は実の息子だよな?
俺は母さん似であっても妹も母さん似であっても、あんなに凍えるような眼差しを向けられたら少しだけ不安になるじゃん思春期なんだし。
回想編
いきなり回想が始まったのに驚くって?
大事な回想だからとりあえず見て、聞いて、わかってほしい。
こういうところに大事な過去や要素があるもんだろ流れ的に。
だからとりあえずこの流れに付き合ってほしい。
あれは忘れもしない高校受験のために一緒に勉強していた日に起きた。
わからない問題があるっていうから苦手なりに精一杯に教えた後だ。
「ふーん、ありがと」
おわかりいただけただろうか。
即死と死者蘇生が瞬きの合間に繰り出されたことに。
俺が初めて鞭と飴を知った日だ。
そんなバリエーションがあったことに
回想終わり。
ずっと表情を変えてるし。
最初に違和感を感じたのは小5の時に素っ気ない態度を取ってしまった時ね。
その時は違和感を感じたくらいだったけど、中1になって同じような態度を取ると変化する表情ですべてわかったの。
変化が顕著に現れたのは『ふーん』って返した時で、これは確実。
ソースは私。
ちなみにソースと醤油なら醤油派だからそこは間違えないでほしいの! 絶対にね!
データは脳内メモリにきっちりと保管されてる拓海大辞典に記載されてるから間違いはないわ。
なんていっても幼稚園に通ってた頃から蓄積された膨大な情報量があるから正確だし拓海大辞典が存在するってだけで十分な説明になるでしょ。
脳内にあるものなんて信用できない?
は? 拓海大辞典ページ数インフィニティを否定する気なの?
幼馴染を舐めないでよっ!
こっちは5歳からずっと一緒にいるんだからっ!
それに今だって目の前の拓海は一瞬ぽけーっとした顔(いつ見てもかわいいわね……)をして表情を目まぐるしく変えてるのよ。
誤解されるとよくないから言っておくわ、その表情を見てからかってるわけじゃないの。
このコロコロと変わる表情を見られるのは私だけだから楽しいのよ。
中1の時にいつものように拓海を目で追っていると他の女子に同じ言葉を掛けられても冷静な表情のままの拓海がそこにいたのよ。
多少のダメージは負っていたみたいだけど和を崩さないようにしてる拓海にやるじゃないって思ったのを覚えているわ。
その時にこんなに表情を変えるのは私の前だけだと知ったの。
嬉しくて、ついついたまに『ふーん』って返してしまうだけ。
「それで拓海の言いたいことって?」
「だからソシャゲのちょっとあれなキャラの時だけ排出率おかしくないかって話」
「課金してるの?」
「少しだけな」
うん、知ってる。
スタミナ回復の月額パックよね。
私からすればそれなら無課金でいいじゃないって思うけど、応援するのが大事って譲らないのよね。
私も同じのを買ってるけど。
ちょっとあれなキャラを引いてる拓海を想像するとムカッとするわね。
「今回のキャラは特にあれだから売上伸びるんじゃないかしら」
「まさか
「つい最近始めたのよね」
「教育に悪いからすぐにやめなさい」
「いつから拓海は私のお父さんになったの? これからお父さんって呼ぶわよ」
「やめておけって、どちらも無駄に傷付くだけだろ。それでさ、ママは確率についてどう思う?」
「なぜチャレンジ精神を発揮するのよ、Mだったの? 確率はかわいいキャラの時しか引かないからわからないし、疑ったりしたらダメじゃない」
「そのMはミュートのことか? 俺は結構話すほうだから違うな」
「私はママみたいだし制限かけるからスマホ出しなさい」
「やめてくれ、恥ずかしいだろ」
(あの2人って仲いいよね)
(幼馴染だからだろ? 俺にはいないからわからねえけど)
(熟年夫婦みたいな雰囲気がないか)
(熟年夫婦って……。 そんな感じはないな、ふつーの話をしてるだけだし)
(え? 会話の内容聞いてるの? それはちょっと……)
(斜め前の席だから聞こえてくるんだよ、そんな目で見るなって)
「拓海、今日の帰りはどうするの?」
「ジムで運動してから帰るよ」
「いつも通り黙々と走るのよね」
「安価なジムの利点だろ、気楽に走られるのって。ボディビルダーみたいな人の指導を受けたりしたら萎縮するだろうし」
「私も行くわ、たまには運動しないとね」
放課後になり、ジムで一汗流して帰宅する。
「琴音、気付いてる?」
「何に?」
「ここのマンション名って絶対に住人をからかってるだろ」
「え? 今更どうしてそんな風に思うのよ」
「なんだよ、FuFuAssoって。めちゃ小馬鹿にしてくるじゃん」
「バカなことを言ってないで帰るわよ」
もう、拓海のせいで私もそう思っちゃったじゃない。
想像力たくましいのは昔から変わらないんだから。
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