超絶不快な転生ニートが異世界を支配する暴君に成り上がり、惨たらしく殺されるまで【なろうを嘲笑するダークファンタジー】

区隅 憲(クズミケン)

【※若干ネタバレ有り】この作品の魅力を徹底レビューします

【なろう系全否定!】人間の生き様を魅せるダークファンタジー! 異世界人はお前の人形じゃない!

 小説をご覧いただきありがとうございます。作者の区隅憲です。


 この節ではこの作品に登場するキャラクターたちの魅力や、作品に籠められたテーマについて紹介レビューします。また、読者の皆さまがこの小説を読むことによって得られる衝撃的な読書体験についても合わせて紹介します。




●なろう小説に対するアンチテーゼ ~異世界人が都合のいい接待人形にされる問題~


 この小説は昨今ライトノベル市場で大量に溢れ返るなろう小説に対して、真っ向からその作品性を否定するなろうアンチ小説です。


 なろう小説といえば、主人公が都合よく神様からチート能力をもらい、自分をバカにしてきた相手を見返して、そして何の苦労もなく称賛や美少女を手に入れるオナニー小説です。読者の皆さまも、一度はそうしたなろう作品を見聞きした経験があるのではないでしょうか?


 ですが私は非常にその物語の構成に対して嫌悪感を持っております。主人公を取り囲む世界が全て主人公の都合のいいように出来ており、主人公の周りにいる登場人物たちも主人公の欲望を満たすだけの道具でしかありません。


 ただ壊れたラジオのように「凄い! 凄い! 素敵!」と主人公を持ちあげるだけで、まるで人間の魂が入ってない。昨今のなろう小説は、かつて文芸作品の中心だった『人間ドラマ』を描いた作品がほとんど見受けられないのです。


 しかし私は『人間ドラマ』こそ小説の本質だと考えています。だから人間の描写が全くできていない作品に対しては、強く侮蔑の念を抱きます。例えそうした薄っぺらな作品を読んだとしても、まるで心に残るものがない。なので私は、なろう小説とは全く主旨が真逆の『人間ドラマ』を描いた作品を目指しました。


 世間でなろう小説が持て囃される度に、「こんなもの小説じゃない!」と反骨精神が膨れ上がりました。だからそのアンチテーゼとして、なろう小説と同じ世界・同じ設定で徹底的に『人間ドラマ』を書いてやろうと筆を取ったのです。


 もちろん主人公に都合のいい世界など存在しません。主人公は神様から都合よくチート能力を授かりますが、主人公に全く焦点を当てていません。この小説の真の主人公は、主人公の周りにいる異世界人たちです。主人公は不快感の塊のような悪役であり、異世界人たちはその悪辣な主人公を叩きのめすために戦います。


 主人公の圧倒的なチート能力の前に異世界人たちはどう立ち向かうのか? それを主眼として物語は進みます。そしてその戦いの中で生み出される『人間ドラマ』をこの作品のテーマとしています。




●登場人物たちの魅力 ~他のなろう作品にはない人間の苦悩や葛藤を描写~


 この小説の表向きの主人公はタナカカクトという異世界転生者です。前述の通りカクトは神様からチート能力をもらい、そして異世界の中で暴虐の限りを尽くします。王を殺害して玉座を乗っ盗り、平気で大勢の人間を虐殺し、そして自分の性欲を満たすために女を凌辱します。彼は暴君です。誰からも自分が好意を持たれていないことにも気づいていません。


 そして国を乗っ盗り暴君となった主人公に対して、必死に異世界人たちは抗いを見せます。王国の宰相ティモン、将軍のアーサス、奴隷少女のレクリナ、話術師のヘラゲラスなど。みんな本音ではカクトのことを憎んでいます。しかしそんなことを言えばカクトに殺されるので、誰も逆らうことができません。ただひたすらコメツキバッタのようにカクトに頭を垂れて媚びへつらいます。


 それでも彼らには人間の心があります。カクトが誰かを殺せと命令してきた時も、カクトがセックスしろと強要してきた時も、彼らの本心には常に葛藤が生まれ、人間としてどう生きるべきなのか自問します。本当にただ力のある人間に従うだけでいいのか? 自分の感情を押し殺してまで生きる意味はあるのか?


 物語にはそうした『人間の生き様』についての哲学的なテーマが含まれています。そして異世界人たちはカクトの圧政に耐え続ける中、本当に自分がやりたいことを見つけ出していきます。愛、忠誠、国家理念、芸術的自己実現。そして最後には皆が結託して、暴君カクトに立ち向かう道を選びます。




●緻密で奥深い世界設定 ~魔法が使える世界で巻き起こる人間社会の考察~


 なろう小説では世界観の設定がいい加減に作られがちです。その場限りの思い付きの設定がポッと出て、主人公がただ都合よく活躍するためだけに使い捨てられます。そこにはファンタジー小説の醍醐味である胸が躍るような世界背景などなく、もっとこの世界について知りたいという探求心も生まれません。ひたすら主人公の欲望を満たすだけの小説では、決してその世界が形作られた神秘性など味わうことができません。


 なのでこの小説では、なろう小説のように安易で脈絡もなく主人公を甘やかすだけの世界観は描きません。その世界の中で本当に人間が生きているのだと実感できるような世界設定の構築を目指します。


 この小説の世界には魔法が存在します。何故人は魔法を使えるのか? 人が魔法を使えることで世界にどんな影響を齎すのか? その影響を理解した上で、人はどんな歴史を辿ってきたのか? そしてチート魔法を操れる主人公の登場により、世界はどんな変化をしてしまうのか? これらの設定が全て絡み合いながら、物語はダイナミックに展開していきます。


 そこには国家同士の政治理念のぶつかり合い、人を殺すということの業、神なる存在と人間の関係、時代背景を元にした倫理観など、現実社会でもよく扱われる多層的な要素が含まれています。


 この小説は単なる娯楽作品として読む小説ではありません。人間の深層心理や社会の構造といった、普段は見落とされがちな残酷な世界のことわりを書き表しております。読者さまの中にはあまりに描写が過酷すぎて、思わず読むのをやめたくなってしまう方もいるやもしれません。




●注意事項


 この小説は子供向けの明るいライトファンタジーではありません。大人向けの重厚なテーマを扱ったダークファンタジーです。リアリティのある醜い人間の姿がありありと描写されています。


 残酷な描写や暴力的な描写、性的暴行、架空の民族に対する人種差別、現実を反映した鋭い風刺など、商業作品では扱えないような過激なシーンが次々と飛び込んできます。なのでこうした苦しくて辛いストーリーを見たくないという方は、細心の注意を払ってください。




●まとめ


 長くなりましたが、以上で作品の紹介レビューを終えます。この作品は生々しい描写が多く世界観も複雑なので、万人受けする作品では決してありません。ですが最後まで作品にお付き合い頂ければ、脳が溶けるほどのカタルシスが味わえると約束いたします。



 この小説があなたの心に響きますように。

では次のエピソードから本編をお楽しみください。

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