~孤独の台風―The typhoon of solitude―~(『夢時代』より)

天川裕司

~孤独の台風―The typhoon of solitude―~(『夢時代』より)

~孤独の台風―The typhoon of solitude―~

 恐怖に怯える白馬の王子が自分の周囲(まわり)を確認した後、娘(おんな)の素通(とお)るを一目(ひとめ)にしたまま向かいに認めた風柱(かぜばしら)を観て無欲に陥り、「娘」の周辺(あたり)は俺の独創(こごと)がはにかみながらも、暗夜(やみ)に過せる悪夢の門限(かぎり)を横目に見て居た。

      *

 「巨大タイフーン」とニュースで女キャスターが言ったのは、今は通り過ぎた尋常ではない程大きな巨大な台風雲の事である。俺はそれを生(なま)で見た。確かに、これからこの地球上、いや日本に「何か起こすぞ」としている巨大な雀蜂の巣の形をしながら、「ラピュタ」の〝竜の巣〟でもかなり足りない位の、本当に超巨大の積乱雲の様(よう)な雲であった。その雲が、事を終えた後の俺、又生き残った俺より他の何人かと空を眺めて、

「これから勢力を図ろうとしている様(よう)なその積乱雲(くも)」

を、俺の家から最寄りの吉井のバス停近くから見上げていた。

      *

 無数の情緒が一人(ひと)の間をすいすい流行(なが)れて冒頭へと向き、淡い昼間にどんより募れる見事な白板(いた)から鎌首(くび)を擡げて、器用な瞳(め)に降(ふ)る争い事から俺の躰を無形に上がらせ、暴力(ちから)と我欲(よく)とに塗れ死(じ)にする俗世(このよ)の男女(ひと)から遠退(とおの)け出した。俺の形成(かたち)は宙(そら)に蔓延る悪魔を退(しりぞ)き、幻(ゆめ)に未完(みじゅく)な俗世(このよ)の常識(かたち)と現行(いま)に仕立てる無用の体温(おんど)をこの身に携え、俺の心身(からだ)は既視(すで)に見知れる宙(そら)の温味(ぬくみ)を女性(おんな)から退(の)け母性(はは)へと遣った。俺の生(せい)には正味(あじ)の利かない温盛(ぬくもり)が在り、俗世(このよ)の生(せい)から宙(そら)へ遠退く無欲の欠片は自失を蹴破り、自我に収めた〝没我〟の縁(ふち)から男性(おとこ)に懐けぬ女性(おんな)の〝巣〟を観て、俺の生歴(きおく)は固より女性(おんな)を殺して生け得る強靭(つよ)い日の粉(こ)を既視(おおめ)に観て居た。冷風(かぜ)の便りに男性(おとこ)の五肢(からだ)が女性(おんな)に食べられ、男性(おとこ)の生器(せいき)が精(こころ)を失くした黄泉の盛(さか)りを真逆(まさか)に報され、女性(おんな)の目下(ふもと)で常識(かたち)が象(と)られてそのまま男性(おとこ)へ流通して行く広い気色を感覚(いしき)に得ながら、俗世(このよ)の男・女(だんじょ)は白雲(くも)を支える風柱(はしら)の内(なか)から〝肉祭(にくさい)〟等観て、四季(きせつ)の移(かわ)りにその視(め)を窄める稀有の憧憬(けしき)へ狭義を打った。

一、 男性(おとこ)の足元(ふもと)へ空転(ころ)がる女性(おんな)は風上(かみ)に置けずに風下(しも)へも置けず、常に孤独を上手に相(あい)する未亡の身と成り跳進(ちょうしん)する事。

二、 三寒四温の適した四季(きせつ)は人に気取れて曖昧でもあり、明日(あす)の時節と現行(いま)とを見紛う狂(きょう)の四駆(しく)には人の意が向く。初春(はる)の息吹に違(たが)う温度は晩夏(なつ)の揺るぎを知らぬ間(あいだ)に他(ひと)の我欲を好く好く識(し)り得て苦境を片付け、男性(おとこ)の暴力(ちから)へすとんと宿れる向きの姿勢(すがた)の落葉(おちば)の群れには、一女(おんな)の活気は初めから無く、化粧を委ねる香女(おんな)の美味足る気配すら無い。

三、 欲に片付く俗世(このよ)の規律(おきて)は人間(ひと)の黒目(め)を見て凡庸を吹き、洞吹き童子が女性(おんな)の像(ぞう)へは、男性(おとこ)の活気が幾ら汚(よご)れて煩悩(なやみ)に在っても、多数(かず)に任せる無心の律(りつ)にて万葉(ことば)は崩壊(くず)れ、幻覚(ゆめ)の主観(あるじ)が如何(どう)で在っても罰を課せ得る未完(みじゅく)にはない。俗世(このよ)に向く者全ての我味(あじ)から風味に漂流(ただ)よう知識が漏れ活き、罰を相(あい)する無心(こころ)の向きには女性(おんな)に操(と)られて我欲を愛する男性(ひと)の両刃が情(こころ)と篭る。

四、 文句(ことば)の巧みに未信(みしん)を識(し)らせる烏有に凄める無欲の合鏡(かがみ)は、男性(おとこ)の身許へぽつんと置かれて、女性(おんな)の人陰(かげ)から小蛇(へび)を差し出す身欲の信者を気温に寝かせて、楽園(その)の中央(なか)から文句(ことば)を採り得て男性(おとこ)を堕とせる予定調和の進歩を拵え、悪魔の身欲に保身を抱(いだ)ける陽(よう)の黒目(め)をした大蛇を識(し)った。

五、 発音(おと)の列(ならび)が宙(ちゅう)の行方(はて)から地上に降(お)り立ち、人間(ひと)の限界(かげり)は月を見るまま陰(かげ)に宿れる原罪(つみ)を拵え、人間(ひと)の目下(ふもと)を自尊に捉える幻覚(ゆめ)の主流(ながれ)は情(こころ)を化(か)え出し、想う所は全ての局部(ひみつ)が自然(あるじ)へ出向ける未覚(みかく)の順序を馴らして行った。

六、 初めに目にした自然(あるじ)の景色は、人間(ひと)の孤独を地中へ宿れる「死」にさえ見紛う棺(かんおけ)に在り、男・女(だんじょ)の身欲が端正(きれい)に片付く漆黒(やみ)の宙(うち)には〝微妙〟が活き抜き、寒さが和らぐ初春(はる)の温度は、人間(ひと)の孤独を鵜呑みにしたまま恋慕(こい)に耐え得る愚かな好意をその黒目(め)に焼き付け、未純(けがれ)を識(し)り抜く我尊(がそん)の行末(すえ)には女性(おんな)が殺され男性(おとこ)が失(け)される矛盾の光明(ひかり)が冒涜を見る。

七、 過去の主観(あるじ)にその都度憤(むずか)る不変の身を継ぐ人間(ひと)の発声(こえ)から、器用に跳び立つ信仰(まよい)の残骸(むくろ)が経過(とき)を掌(て)に取り一人(ひと)を苛め、宙(そら)を見上げて驚嘆して居る人々(ひと)の覚悟を変態へと遣り、俗世(このよ)の向きから人間(ひと)の行方を概(おお)きく乖離(はな)して留(とど)め置き得る未完(みじゅく)の変化(へんげ)に消沈して居た。

      *

 ……

      *

 文句(ことば)の限りは羞恥の限りと人の俗世へ倣いながらも俺の思惑(こころ)は静寂(しずか)を好み、既成に見積もる常識(かたち)の枠へと如何(どう)でも全身(からだ)を押し込み朗笑(わら)える無音の革命(しごと)を画策して居た。画策したのは俺の文句(ことば)を俗世(このよ)へ産ませる黄泉の体裁(かたち)の無臭の際(きわ)にて、俺の背後に常時(いつも)先立つ未定調和の低吟(ていぎん)でもある。湿気を伴う日本の暖気は俺の生歴(きおく)に充分圧(お)して、俺の思惑(こころ)は女性(おんな)の稚拙に良くも悪くも憎悪を従え、現行(いま)を遠退く遥か遠くで女性(おんな)を皆殺(ころ)せる覇気の強靭差(つよさ)を目の当たりにして、現行(いま)を相(あい)せる調和の〝仕切り〟に気付いて在った。俺の宙(そら)から空気(しとね)に生れた「狭義」の旧差(ふるさ)は女性(おんな)を刺し貫(ぬ)き、女性(おんな)の五肢(からだ)と男性(おとこ)の四肢(からだ)を幻覚(ゆめ)の内にて両断した儘、性(せい)の両者を融合して行く幻(ゆめ)の譲歩の進歩の程度は、俺の白紙(こころ)へ束の間漲る神秘(ふしぎ)の万葉(ことば)を連吟(れんぎん)している。女性(おんな)の肢体(からだ)は巨大な白雲(くも)へとその身を上げられ、晴れた日にでも曇った日にでも、男性(おとこ)の身欲(よく)から解放され得る斬新(あらた)な感覚(いしき)にその実(み)を与り、幻覚(ゆめ)の温度を空気(しとね)へ詠ませる未完(みじゅく)の意識を上手に観たまま自然(あるじ)の側(そば)へとその身をたわらせ、平穏ながらに実欲(よく)に解(ほだ)され自身の前途を暗き〝旧巣(ふるす)〟へ投身させ生く実力(ちから)を保(も)った。理系の順路に賢さを識(し)り、男性(おとこ)の真似して物理を扱う予定調和の〝古巣〟の幻(ゆめ)には明日(あす)を見紛う気色が先立ち、当て(点打ち)を探せる牛歩の身に載る幻想(ゆめ)の余韻(ことば)は幼童(こども)を捜して、常時(つね)に外部刺激(しげき)をその掌(て)に患う未有(みう)の歴史の解読をした。人間(ひと)の審理は俗世(このよ)へ先立つ固陋の身欲(よく)から吟(ことば)を認(したた)め、腰掛け程度の〝文学ごっこ〟で得意気(とくいげ)に成る有頂を識(し)り貫(ぬ)き、幻想(ゆめ)への謳歌と現(うつつ)の謳歌を豪華に見立てて勘繰り続けて、明日(あす)と現行(いま)とを巧く繋げる活気を知る儘〝自殺〟を銘打ち、不様を呈する欠伸を扱う無機な不向きを呆然と観た。

 自分の明日(あした)を改作して生く旧い目下(もと)から美身(びしん)を掲げて、俗世(このよ)へ凄める〝女流作家〟が統合され活き、〝身元識(みもとし)らず〟の桃源郷から現世(このよ)の理郷(さと)まで文(ふみ)を認(したた)め、相(あい)する明日(あした)の目下(ふもと)を目掛けて競歩(ある)いて生く等、俺の周囲(まわり)で散々騒げる無意(むい)の屍(かばね)は成就を識(し)らずに、無理の理性(はどめ)を〝有(ゆう)〟に伝(おし)える有機の欠如を算段して居る…。

      *

 …そいつは雲なのに、その余りに巨大な為か、尋常ではない地球(日本)への影響を与えたものらしく、本当に俺も初めて経験する雲であり、末恐ろしい程に環境を移り変えて行く雲の主(あるじ)は本当に奇妙に見え、又、その最上部(てっぺん)は宇宙にまで普通に達していそうだと、複数居る犠牲者とは違った「生き残り」達は考えて居た。(木曜日であり、西田ゼミに行かなきゃ成らん。遅れては成らん。等と一人揉めている時に一旦目覚めて、そのあと二度寝した時にもまだこの夢は続いていた。よっぽど印象が強かったのだろう)。

      *

 俺の感覚(いしき)は幻想(ゆめ)の内より再生して活き、子供仕立ての身寒い火照りを陽(よう)へ拵え冒涜され活き、現人(ひと)と俺との幻(ゆめ)の狭間は狂句(きょうく)を拵え矛盾に居着ける。明日(あす)の感覚(いしき)は苦労を見知らぬ俺の〝作家〟に揚々馴らされ、昨日まで観た幻覚(ゆめ)の詩吟(はなし)に〝火照り〟を忘れる温厚(あつさ)を従え苦労を識(し)り貫(ぬ)き、白亜(しろ)い霧雨(きり)には自己(おのれ)の身欲(みよく)を端正(きれい)に畳める五月蠅(あわ)い記憶が静々(しずしず)還り、俺と現代人(ひと)との未完(みじゅく)の格差は益々拡がる気配を幻見(ゆめみ)た。

 俺の頭上(うえ)から男性(おとこ)と女性(おんな)の二局(にきょく)へ対する旧い雲柱(はしら)が透って佇み、現行(いま)を束ねる俺の身辺(あたり)を上気に逸する幻(ゆめ)の愚行(おろか)を相合(あいあわ)せて行き、始めから割く愚行の旋律(しらべ)は〝開拓間際の前途の歩力(ちから)〟を幻視(ゆめ)に描ける模造を認(したた)め、恥を見知らぬ屈理(くつり)の合(ごう)には人間(ひと)の分業(ノルマ)がその実(み)を煩う旧来(むかしながら)の迅速(はやさ)が在った。萎びる現代人(ひと)の「古巣」へ幻(ゆめ)の脆差(よわさ)が透って逝く頃、深々(しんしん)佇む喜怒の運びが気象に遅れて〝ノロサ〟を従え、幻覚(ゆめ)に始まる俗世(このよ)の主客(あるじ)の男性(おとこ)と女性(おんな)を現(うつつ)へ延ばせる余命(いのち)の臨界(かぎり)は、人間(ひと)の恥を既視(すで)に見送るmonkの足場を揚々固める。お硬い文(ふみ)から女性(おんな)の女流(ながれ)が俗世(このよ)に騙され男性(おとこ)の遊戯が活性して行く狡い進歩の成れの果てには、男性(おとこ)と女性(おんな)の無力の活力(ちから)が矢庭に流行(なが)れて悶絶して居り、現行(いま)の通信(あたり)に〝要(かなめ)〟を気取れる文(ふみ)の乱雑(あらし)を器用に操(と)った。人間(ひと)の晴嵐(あらし)は現代人(ひと)の暴嵐(あらし)で、白亜(しろ)い気色に葛藤して生く万葉(ことば)の沈みに白壁(かべ)を観て居り、旧い文句(ことば)に躊躇を識(し)るほど多くの迷走(まよい)は軟裸(やわら)を識(し)り貫(ぬ)き、未現(みげん)に伴う二極(ふたつ)の審理は一人(ひと)の視(め)を観て評価を成した。礼儀に従い礼儀に死に往く無告(むこく)の正義を既視(おおめ)に視(み)ながら、我欲(よく)の火蓋が言葉を遮る未知の目下(ふもと)を往来して活き、嫌いな相手を女性(おんな)に射止めて男性(おとこ)を退(しりぞ)け、現行(いま)の流行(ながれ)を見事に乖離(はな)れて黄泉へ従う現代人(ひと)の臨界(かぎり)が盲昧(もうまい)へと入(い)る………。

 処女に射止める未完(みじゅく)の心理が女性(おんな)の秘部へと直接流入(なが)れる最足(さいた)る摂理に資源を求め、流離う科学者(おとこ)の魔法の心裏は〝向き〟に陥る麻酔を得ながら、幼童(こども)が死に往く巧みの業(わざ)から無縁の生気を確立して居る。「無縁」に染み入る男(ひと)の万葉(ことば)は片言ながらに機敏を擁して、人間(ひと)の傀儡(どうぐ)へその実(み)を委ねる潜伏(もぐり)の時期から実力(ちから)を挙げつつ、流行(ながれ)を追い込む現代人(ひと)の感覚(いしき)はこうした男(おとこ)の幻想(ゆめ)の総てを矮小(ちいさ)な器(こころ)で扱い尽(き)れずに、幻視(ゆめ)に棄(な)げ行く行(ぎょう)の波紋(なみ)には無機の自然(あるじ)が牙城(とりで)を設けて、支えられない男の臨界(かぎり)は俗世(このよ)で殺され懺悔を識(し)った。俗世(このよ)の主客(あるじ)が誰で在るのか、一向解らぬ憤怒の雲柱(はしら)に至難を設けて、黄泉への大扉(とびら)を不意に開(あ)け行く大手を採り得た行(ぎょう)に基づく。

      *

 …そう、その巨大なタイフーン雲は、余りにも巨大の形故に、その有り得ない程の強風により、巨大津波を引き起こしたのだ。誰が何と言おうと引き起こしてしまった。津波の高さは数百~千メートルを超えているもので、東北震災の時のような津波の影響が具に窺えるものだった。

 俺は京都に住む嫌な女(バプテストを受けたに拘らず人と神に一切配慮をせず、自我を貫き通せる、元職場に居たような気の強い女の意)何人かと、西田准教授が教示するクラスの内で四苦八苦して居る。その津波から逃げる算段を(一人、又各々に)考えて居たのだ。俺はそうした群れ、群れから生れるルールが大嫌いな性格から、その西田ゼミ内の誰それ、いや全員で作り上げた(?)雰囲気から是非とも離れて遣る、として西田ゼミの西田房子、その学生達に反旗を翻すように憎んで自然の有り様(よう)に沿い、とにかく新しい事を成そうとして失敗し、又、俺はほとぼり冷めた頃、その雲をちらっと一瞥した後(のち)、朝の十一時にセットした目覚ましが(現実に於いて本当の出来事として)俺は女の俯せった肢体を(特に尻から)舐めるように見ていた。

      *

 語り尽せぬ代々(よよ)の限界(かぎり)を自分の視(め)で見て評価している俺の背後に錯乱が在り、女性(おんな)の芳香(かおり)が充満している声々(こえ)の一局(ひとつ)をその掌(て)に捕まえ、現代人(ひと)の感覚(いしき)を終(つい)に気取れぬ杜の謳歌を吟味して居た。男性(おとこ)と女性(おんな)の生気(なま)の粗声(こえ)から粗悪を貪る陽気を従え、意味を求めて〝意味〟を捜せぬ不来(ふらい)の〝吟味〟を俗世(このよ)に講じて、俺の心身(からだ)は俗世(このよ)を乖離(はな)れる不変の感情(こころ)に固く縛られ絶交して居た。女性(おんな)の質(たち)には俺に気取れぬ幻想(ゆめ)がのさばり、俺を乖離(はな)れた他の男性(おとこ)が宙(そら)に掌(て)を遣り細心(こころ)を身固め、明日(あす)の独歩へ躊躇(まよい)を報さぬ未完(みじゅく)の火照りへ揚々落ち着く無機の理性(はどめ)を既視(おお)きく識(し)った。俺の傍(よこ)から次第に遠退く黄泉の旧巣(ふるす)は〝気色〟を奪(と)れずに現世(このよ)に積もれる〝古き代(よ)〟の実(み)を幻(ゆめ)に携え俗世(このよ)を遠退き、女性(おんな)の片鱗(うろこ)に錆が集(たか)れる腐乱の人智を貴(とうと)く識(し)った。

 俗世(このよ)の身元を「旧き代(よ)」に割く現行(いま)の流行(ながれ)を後塵(あと)に観ながら、独り身に付く教癖(くせ)の成る気は幻視(ゆめ)に溺れて悪態さえ吐(つ)き、現世(いま)の果てから〝現行(いま)〟へ差し向く浮き代(よ)の台(たい)には飾りなど無し、旧い軒端へ無性(むしょう)に蠢く黄泉の番人(かなめ)が漸く立った。未完(みじゅく)の嘆きが海潮音(おんぱ)を跳び越え変幻自在に自体(おのれ)の体裁(かたち)へ光明(ひかり)を呼び込み、〝意味〟に関して意味を付け得る労苦の区切りを眺めた頃には、俺の心身(からだ)も女性(おんな)に対して幻想(ゆめ)に対して子守唄(うた)を誘(さそ)える向きを頬張り〝あの宙(そら)〟まで観て、物の儚い哀れを問う内、精神(こころ)の住処を憶えて行った。俗世(このよ)に探せる千切りの〝夜〟には「暗夜(あんや)」が拡がり儚く身寒く、一方此方で「俺の為に」と値踏みをして居る現代人(ひと)の独気(オーラ)は四温(しおん)に跨り、女性(おんな)の体内(うち)から母性を見破る奈落の苦楽に調子を観て居た。俺の心身(からだ)は幻(ゆめ)の内(なか)から俗世(このよ)の宙(そら)へと羽ばたく間際に漆黒(やみ)に小波(さざ)めく常緑(みどり)の〝宮(みやこ)〟の無重の神秘に概(おお)きく浮腫(むく)れた艶(あで)な女像(おんな)を体型(かたち)にしながら、黄色く煌(ひか)れる幻想(ゆめ)の温度は微温味(ぬるみ)を見せずに欲へと咲いた。白亜(しろ)い体型(かたち)は女性(おんな)の素手から真横へ流行(なが)れる無機の進化を数えていながら、俺の方へはついとも向かずに、一旦流行(なが)れた本能(ちから)の限りは男性(おとこ)に見得ずに女性(おんな)も保(たも)てず、自然(しぜん)に迎える人間(ひと)の明かりが未有(みゆう)に失(け)される群像を保(も)ち、一筋縄では贖い尽(き)れない〝向き〟に認(みと)めて感服し得ない。全く以て、俺の精神(こころ)は絶え間の無いほど俗世(ぞくせ)を観て居り、女性(おんな)の流行(ながれ)に男性(おとこ)が従い女性(おんな)の魔の手に俺は従う至難を承(う)けつつ女難に煩う。知己の一人も俗世(このよ)の中では神父に紛れて発声(こえ)を潜めて、縮まり翻(かえ)れる〝旧巣(ふるす)〟に乗じて律法(きりつ)へ従い、合理に即する矛盾を拵え八倒して在る。女性(おんな)の体(からだ)が自然(あるじ)に従い、間抜けの内にて活きて生くのを俺と〝男性(おとこ)〟は活きながらにして確認して居り、俗世(このよ)の身許に〝合(あわ)せ〟を置き遣る一人(ひと)の活気は「下人」を看破り、下(げ)にも咲けない古い双樹が自体(おのれ)を拡げて宙(そら)を見送る。俺の心身(からだ)が漸く解(ほぐ)れて女性(おんな)の行方(さき)から自分を退(しりぞ)け、暗(やみ)に割き生く空気(もぬけ)の格子に自分を観た時、俗世(このよ)の女性(おんな)の脳裏(あたま)に咲かない理屈の審理は創造され活き、身勝手からでも偶然(さき)を仕留める哀れ〝分身(かわり)〟の衝動(うごき)を男性(おとこ)の実(み)に付け落着して生き、初めには無い無機の柔軟(やわら)に煩悩(なやみ)を焚き付け懊悩(おうのう)を観た。男性(おとこ)と女性(おんな)の俗世(このよ)の初出(いろは)は無機に耐えぬは〝向き〟が足りぬと、哀れに舞い逝く言葉限りは律動(りつどう)を保(も)ち、白亜(しろ)い化狸(たぬき)が宙(そら)を目掛けて前進して居る幻(ゆめ)の温度に遭遇しながら、現代人(ひと)に対すは漆黒(やみ)に集める苦業(くぎょう)の屍(かばね)で、事始(こと)を牛耳る自然(あるじ)の温味(ぬくみ)は女性(おんな)を葬り男性(おとこ)を描(か)いて、女性(おんな)の生命(いのち)をそっくり忘れた万象(せかい)を描(か)き付け事始(こと)を終(おわ)った。

      *

 津波の第一波が来ると言う。俺達は初めての故、それほど恐怖感を持たずに取り敢えず逃げて居た。そしてシェルターの様(よう)な地下に在った部屋(エレベーターの一室から少し大きくしたような部屋)を見た時、貰えるもんなら貰っとく、の精神で〝より安心、安全圏を〟と何とか五人程度が限界のその一室をひたすら取ろうとする欲の湿滅(じめ)っぽさを、俺はずっと見て居た。でも始め避難など馬鹿にしていた。西田ゼミからの、いや京都に集まる厭味たっぷりの反発が在った。

      *

 俺の背後に女性(おんな)の気色が矢庭に現れ、見慣れた一女(おんな)の可細(かぼそ)い四肢(てあし)が俺を連れ添い暗(やみ)へと誘(いざな)い、人目の識(し)れない二人の世界(るつぼ)に貪欲(よく)を講じて脚色をした。「一女(おんな)」が表す見慣れた気色は鶴崎有美(つるさきありみ)に潜(ひっそ)り似て居り、白亜(しろ)い四肢(てあし)と紅裸(あから)の表情(かお)とが俺の目に発(た)ち無意(むい)を撮んで、純白(しろ)い〝美麗〟に紅(こう)を射止める少女の強靭差(つよさ)を単純にした。俺と有美(かのじょ)は幻想(ゆめ)に差し替え経歴(きおく)を頼りに、順々独歩(ある)ける茂みの中まで〝競歩〟の系(かたち)に並んで独歩(ある)き、過去の形式(かたち)は両者を異(い)にする無言の万葉(ことば)を発(はっ)するけれども俺に射し行く陽(よう)の光明(あかり)は有美を異(い)にする方式(かたち)でも在り、両者の心身(からだ)に進むが遠く離れた両者の黒目(ひとみ)は一点だけ観て夢蔵(くら)を頬張る。有美の呈した紅(あか)い頬には華(あせ)か涙か準じて識(し)らない脆(よわ)い一筋(しきり)が仄かに湧き発(た)ち、俺の心身(からだ)が幻想(ゆめ)を識(し)り活き夢を舐め得る未完(みじゅく)の翻(かえ)りを真貫(まぬ)きに見詰めて、有美の夜目(よめ)には一瞬(とき)が映るが経過(とき)を識(し)れない感覚(いしき)の理性(はどめ)が自由に立ち行き、俺の背後にずんずんずんずん流行(なが)れる〝向き〟には、俗世(このよ)の男・女(だんじょ)が死地へ赴く旧い生気が散乱して居た…。

      *

 …グロテスクに肥(ふと)い一男(いちおとこ)と、教会の長男と痘痕丸鼻丸顔(あばたまるはなまるがお)の処女(むすめ)と、あと、誰か知っている人(結構、自分にとって好い人)が居り、一緒に避難して居た。俺は予報を馬鹿にし、非難を馬鹿にした為、外に出て居り、確か何かを助ける為の理由で外に出て居り、百メートル以上の津波に呑まれたが助かって居た。服が濡れたのを感じながら、その第一波をもう一度感じ、〝又来る〟と言うのを聞いた。夢の中故だろう。

 二度目はその恐怖を知った為、俺は真面目にシェルターに教会の長男、肥(ふと)い男と、丸顔の処女(むすめ)かもう一人の女の子と一緒に隠れた。京都の女・西田ゼミに居る女のクラスの連帯感には未だ反発して居た。

      *

 苦し紛れの路頭の主観(あるじ)が俺の思惑(こころ)に顕れながらも以前(むかし)に好く観た幼馴染の男・女(だんじょ)の体熱(ねつ)には夜毎の厭気(いやけ)が揚々差し行き、この掌(て)で総ての生歴(きおく)を幻想(ゆめ)に記(き)す等、一女(おんな)に手向ける矢庭の生気へ馬乗りに成り、漂白(しろ)い女神(あくま)が処女(しょじょ)を掲げて俺に向くのは、俗世(このよ)の自然(あるじ)が幻(ゆめ)を毀せる夜気(よぎ)の審理の巧妙に在る。幻想(ゆめ)の「送り」に歩速(ほそく)を早める無駄の気配は女性(おんな)から延び、孤高に息衝く臓(ぞう)のsympa(シンパ)は紺(あお)い身悶えしながら青春(はな)の気色をゆっくり眺めて、〝電子〟に打ち勝つ脆(よわ)い進化を現代人(ひと)に捉えて悶々(もじもじ)しつつも、俺の無駄には女性(おんな)が掌(て)にした無適(むてき)の勝機に準じて萎えた。幻想(ゆめ)の万葉(ことば)が矢庭に仕上がる宙(そら)の連歌の雅の美園(その)には俺の理知(はどめ)が一切利かない黄泉の中夜(ちゅうや)を連日生け捕り、「明日(あす)」を肴(さかな)に今日を相(あい)する無憶(むおく)の情緒(こころ)に自身を窄めて、女性(おんな)の肢体(からだ)を暗(やみ)に遺棄する不毛の「若(じゃく)」から味覚を識(し)った。男性(おとこ)の首には女性(おんな)唇跡(キス)さえ紅裸(あから)に残され黄泉と今日との盾(じゅん)の狭間へ違笛(いてき)を投げ掛け拍子と置くまま無碍の旧巣(ふるす)へ退(さ)がれる棲処(ありか)を自分の背後(せなか)へ充分見送り明日(あす)にも今日にも白衣(ころも)を報さぬ鈍(どん)の迷走(まよい)に、俺の体熱(ねつ)から幻(ゆめ)を蹴散らす無音(おと)の失走(はしり)を経験していた。

      *

 夜だった。何故(なぜ)かシェルターなのに、津波が来たら、波(みず)が入る為にと一寸窓が開(あ)けられており、その窓から風が思い切り怖い位に轟音を立てて吹いていた。その轟音の理由を丁度ラジオでジョッキーが説明して居り、恐怖への感想も話して居り、それを聞いて余計に俺は怖くなった。第二波(だいには)は大した事無かった。来たのかどうかも分らなかった。

      *

 心中している幻(ゆめ)の調子が万葉(ことば)を乗り越え現代人(ひと)をも越えて、「明日(あす)」の芽に発(た)つ俺の生気(かわり)が無意(むい)に追われる焦燥を知り、〝何〟に追われて悲哀を観るのか、俺の脳裏は呆(ぼう)っとしたまま判らず儘にて、自分の躰が宙(ちゅう)と幻(ゆめ)とを交互に行き交う矛盾の純度を既視(おおめ)に観て居る。幼童(こども)の母性(はは)に映るは精神(こころ)の共鳴(さけび)で影法師に在り、暗い人生(みち)から〝路地〟の裏まで、空気(しとね)に費やす余命(いのち)の程度を一人が与る余裕の無い儘、白亜(しろ)い毛物(けもの)は無機の視(め)をした万象豊かな独気(オーラ)に包(つつ)まれ、明日(あす)の「活(い)き」から〝今日〟の域まで手延(てなが)に巻かれた暗(くろ)い宙(そら)へと羊を打った。訳の分らぬ人の論理は既成に落ち着き、無駄に蔓延る気力(ちから)の範囲に徒歩で射止める蜻蛉すら観て、俗世(このよ)に居座り大手を振り貫(ぬ)く白雲(くも)の主(あるじ)は〝未完(みじゅく)〟を問う儘、現代人(ひと)の集気(シグマ)が押されて流行(なが)れる稚拙な規矩等その視(め)に挙げた。無労(むろう)の主(あるじ)が自然(しぜん)に紛れて独歩を示し、無意(むい)の跡には「無為」が来る等、暗(やみ)に紛れた肉の欲芽(よくめ)がこの手に近付き、宙(そら)の行方(かなた)の始動の指導(おきて)が〝大工(ビッグバン)〟から虚無へと貫(ぬ)け尽(き)る自然(あるじ)の動機を強靭(つよ)くしながら、等星(ほし)の数多(かず)ほど未数(みすう)の三群(むれ)には頭脳(あたま)を推し生く白壁(かべ)が現れ、鵜呑みに出来ずの俺の翻(かえ)りは誰も識(し)らない虚無の残骸(むくろ)にその実(み)を込め得た。白亜(しろ)い波止場は「鵜呑みの園(その)」にて〝待ち惚け〟を観て、自分の残骸(むくろ)が死地へ舞い出る脆弱(よわ)い衝動(うご)きの中央(あたり)に落ち着き、既成の文句(ことば)を既成で透さず翌朝(あさ)の寝室(ねむろ)に自分を問うには、偽(にせ)の教師を間傍(まよこ)に仕留める旧い従者に翻(かえ)り咲き活き、朝陽に昇れる幻想(ゆめ)の仄かは無理を通さず空気(しとね)へ埋れて、明日(あす)の境地を間近に夢見る〝寝室(ねむろ)〟の目下(もっか)を安泰にした。

      *

 …第一波が去り、廃墟と化した京都府八幡市に俺は何人かと立ち、「父親・母親は助かって居ないでしょうね」と誰かに俺が言った途端、俺は「そうだよ」と無性に両親が心配に成り、携帯を見た。すると夕べ、詰り轟音を聞いて第一波が過ぎる最中(さなか)に、父親から何回か着信が入っているのに気付いた。父親に電話し、父親から俺は、

「おお、お前は無敵みたいやなー」

と労いの言葉を貰った。両親が生きて居た事がその時、無性に嬉しかった。

      *

 寸法違いの自然(あるじ)の夢想(ゆめ)から俺の輪郭(ひかり)が間傍(まよこ)に延び行き、明日(あす)の肴(あて)から暗い発声(こえ)には具に識(し)り生く透明度が冴え、旧い呼子(よびこ)が気笛(きてき)を鳴らせる範囲(かぎり)を識(し)り貫(ぬ)き日々を暮らせる無適(むてき)の重味(おもみ)が俺へと下りた。

      *

 何かが奥詰(おくづま)る。出て来て居ない。自分を取り巻くこの空間を、一瞬で華やげるようなぱっとしたものが、出て来ちゃいない…。

      *

 胸の奥から「移民」が流れて俺の目下(ふもと)へ宙(そら)へ駆け寄り、幻(ゆめ)には無い光の許容(うち)へとこの実(み)を投げる。天へ届ける幻想(ゆめ)の翻(かえ)りは自身の口火をその視(め)に遣る時、全力(ちから)を尽して子守唄(うた)を歌って、未完(みじゅく)な気持ちを両腕(かいな)で蹴散らし用心しながら、ふと、何に見惚れて用心するのか見当付かない。暮らしの上では見事に護られ孤独を識(り)り貫(ぬ)き、否(いや)と言うほど下卑た思惑(おもい)に浸って見ても、当の主観(あるじ)は健忘症にて、白痴(はくち)に似通(にかよ)る無口の言葉を二、三語並べて寝室から退(の)く。俺の周囲(まわり)にたわった人間(ひと)から一向届かぬ真心(こころ)を頂き、白痴の術(すべ)から日毎を彩る脚力(ちから)を見限り、女性(おんな)と俺との欲の交為(こうい)に駄言(だげん)を吐いても、古郷(こきょう)へ還らぬ俚諺の明度は彩度(さいど)を識(し)らずに、俗世(このよ)の何処(どこ)かで自分を煩う旧来(むかしながら)の方法を知る…。俺の暗黙(やみ)から苦労を引き抜き、慌て無沙汰で寝室(このへや)へと着き、夢を観るのに具合を捜せる元(もと)の御蔵(おくら)をずっと垣間見、明日(あす)の光明(ひかり)が寝室(へや)を射さない〝意味〟の周知に徹底している。長閑な初春(はる)から俺と一女(おんな)に〝火花〟が散らばり、黄泉の理郷(くに)から独歩を呈(てい)せる幻視(ひとめ)が現れ、俗世(このよ)の旧巣(ふるす)を絶景(ばめん)に観て取る看破の初順(てはず)に身を固めた後、俺の陋屋(すみか)へ底根(そこね)を這わせて宿る〝杜〟には、女性(おんな)の躰に「絶景(ばめん)」を識(し)れ得ぬ未完(みじゅく)の生徒の蟠りである。

      *

 夢の温度は恥辱に耐え貫(ぬ)き夜目(よめ)の流動(うごき)は自然(あるじ)を宿せる一向概(おお)きな思片(かけら)を抱(いだ)き、白亜(しろ)い喪に観る不吉の描画(え)の目は無暗に逆らう〝嫉妬〟を見送り、現代人(ひと)の意に発(た)つ神秘(ふしぎ)の温度を世にも未完(みじゅく)の思法(しほう)へ摩り替え、天変地異まで初順(しょじゅん)に配せる〝有無〟の描写に飽き飽きしている…。――。――。――、現行(ここ)へ来たのは旧前(むかし)に見て来た幻(ゆめ)の葉末(はずえ)に絡まる儘での、事故(こと)の始(おこり)に端を発して、初めて眼(め)にした黄泉の断片(かけら)は俗世(このよ)を絡めた虚偽(うそ)を見破り、安心出来ない暗黙(あんもく)から成る無意(むい)の〝禁止〟に微動だにせぬ無知の神秘(しんぴ)を当然に観た。

 俗世(このよ)を独歩(ある)ける固陋の隅から一身(ひとみ)に挙げ生く無意の既知には、人間(ひと)が死に視(み)る不意の既知へと機知の配下を微妙に歪曲(ま)げ行き、孤独を立てては私闘に赴く宵の季節を満喫して居た。白亜(しろ)い胸面(むなも)を興(きょう)に狂(きょう)じて極致は胸裏に剥かれて、文句(ことば)の空気(しとね)に刺突(とげ)を指し生く無動(むどう)の境地を満腹した後、俺の両腕(うで)には少女(おんな)を空転(ころ)がす冷(さび)しい胸裏が徐にも冷え、俗世(このよ)の水源(もと)から氷期(ひょうき)を乾かし洗練して生く孤狼(ころう)の〝浮き輪〟を言語に識(し)った。一女(おんな)の躰は局部(いちぶ)の果てから狂気を掲げて俗世(このよ)を競歩(ある)ける暗差(くらさ)を拵え、現代人(ひと)の数多が水面(みなも)に透して伸ばせる手指(ゆび)には目下(ふもと)を照らせる微弱(よわ)い灯(とも)りが巷を頬擦り暗楽(あんらく)を観た。

 幻想(ゆめ)の許容(なか)での安全神話が事実を幻見(ゆめみ)て俺へと付き添い、俺と父との交情(かわし)の〝呼笛(あいず)〟を幻(ゆめ)の温度へ報せて在った。俺の背中は俗世(このよ)に活き得る無意の最中(さなか)に、初めて通せる〝稀有〟の味覚へすぽんと落せる効用さえ識(し)り、俺の主観(あるじ)は無音を侍らす故意の気色を既視(おいめ)に観て居た。俺の意識に光沢(ひかり)の感覚(いしき)が空気(まわた)に寝そべり、人が無いのに現代人(ひと)を侍らす宙(ちゅう)の音頭に路線を引きつつ、俺の精神(こころ)が外的刺激の並を承けても幻(ゆめ)を描ける主筆(しゅひつ)の手腕(うで)には鈍(くもり)を観(み)せずに、自身の宙(そら)から既視(おおめ)に引け得る孤高の輪舞曲(ロンド)を工作して在る。〝稀有〟な傍観(ながめ)を傍手(よこて)に得ながら現代人(ひと)と現人(ひと)の交情(かわし)の内(なか)には俺と女性(おんな)の神秘(ふしぎ)に懸け得る路銀が先立ち、俗世(このよ)を乖離(はな)れて黄泉へ往っても俺の躰が事始(こと)を儲けて現世(このよ)に立つのは、現行(いま)を独歩(ある)ける人の許容(うち)ではさして至難の運行(はこび)には無い。〝物語〟を終え、俺の苦労が俗人(ひと)の掌(て)に在り目に在り、やがて神秘(しんぴ)の古箱(はこ)を開(あ)けても〝稀有〟は無い儘、俺の身許を地上(ここ)で揺らめく旧来(むかし)の情緒に返してもいる…。俺の体(からだ)を俗世(このよ)に咲かせた父と母との旧来(むかし)の生歴(きおく)は、俺の生歴(きおく)に不意に発(た)つうち夢遊に介せる芥(あくた)の叫(たけ)びをその実(み)に差し替え朗笑しながら、夢音(おと)の鳴るのを清閑(しずか)に聴き生く斬新(あらた)な才知を欲して在った。俺の芳香(かおり)は〝彼女〟を欲した残り香にも在り、人生(みち)の足元(ふもと)で矮小(ちい)さく囀る無吟(むぎん)の墓場に脆(よわ)く突っ立ち、意味の無いのに意味を識(し)る等、器用の変化を奏して認める…。だけど〝哀れ〟は人間(ひと)の憐れに豪(ごう)を認めて流行(ながれ)に逆らう脆弱(よわ)い信理(しんり)を有頂に携え轟音(おと)に聴く等、人気(ひとけ)を離れた神秘(ふしぎ)の出窓で自信の音頭を可弱(かよわ)く観ながら、人間(ひと)の孤独を概(おお)きく離れた黄泉の審理に従順(したが)い続けた。俺の旧友(とも)迄、俗世(このよ)の果てにて轟音(おと)を聴きつつ、自己(おのれ)に課し得る強靭(つよ)い寡黙を天へ投げ込み自身を仰ぎ見、〝神〟の御姿(すがた)に自分が無いのを酷く疑い寂信(せきしん)を観て、白亜(はくあ)の白壁(かべ)には空気(しとね)の巻かない細弱(よわ)い心裏が生(せい)を象り〝表裏(すべて)〟を観る等、幻想(ゆめ)の新知(しんち)が豪語を宣う未覚(みかく)の心理は俺を隠して人間(ひと)を挙げつつ、黄泉の空気(しとね)に軍服(ふく)を着て居る夜半(よわ)の神秘(ふしぎ)を遠目に観ていた。純白(しろ)い唄には人間(ひと)を報せる詩(うた)が載りつつ、幻視(ゆめ)の火照りへ真面目を通せる神秘(ふしぎ)の形体(からだ)が野平(のっぺ)り立ち生き、苦労の末から〝脂〟を買う等、現代人(ひと)の良くする身軽(かる)い好意を常識(かたち)に認(したた)め、歴史(かこ)に堕(おと)せる幻想(ゆめ)の下地(したぢ)は男性(おとこ)と女性(おんな)の言語(ことば)の人影(かげ)から空気(しとね)に巻かれる不意の局所(かなめ)を漸く天下に概(おお)きく拘り、唾棄に突っ伏す脆(よわ)い生歴(きおく)の吐息の騒音(おと)には、昨夜(きのう)の芽に観た幻(ゆめ)の返りと何ら化(か)わらず同程(どうてい)に在る。旧い寝室(ねむろ)は俺の意を借り浮遊に就き出し、激しい傘下の浮遊に宣う人間(ひと)の罵言(ことば)は幻(ゆめ)に訪れ現(うつつ)に訪れ、余りの他には俺の身辺(あたり)の許容(きょよう)の内にも未完(みじゅく)を打ち出し、他(ひと)を突き刺す文句(ことば)の尻(やり)には〝詩(うた)〟の明朗(あかり)が孤高を拵え、意味に前進(あゆみ)に空間(すきま)を失くせる黄泉の坩堝にその実(み)を寄せ得る。

 煙草の灰燼(はい)から黄色の一炎(ほのお)が俄かに昇(あが)れる無用の景色を律儀に観て採り、現行(いま)の流行(ながれ)に人間(ひと)を詠み象(と)る無理の不利には宙(そら)が佇み、自己(おのれ)の万葉(ことば)が神秘(ふしぎ)に感(かま)けて現路(みち)を外した少年(こども)の共鳴(ひびき)が俺の寝間へと小首を傾げる(所謂)神秘(ふしぎ)に樞(ひみつ)を講じて、〝潜(もぐ)り〟で現世(このよ)に生命(いのち)を留(とど)めた微弱(よわ)い存在形(かたち)が落ち着く予談(よだん)の風味を大袈裟に想い、人間(ひと)に片付く万(よまい)の歴史(きおく)を神に預けて我が実(み)を識(し)る等、万言(ことば)に逆らう神秘(しんぴ)の陰(かげ)から自己(おのれ)の自体(からだ)に形而(しょうこ)を採った。〝神〟の御旨(すがた)が万(よろづ)の神秘(ふしぎ)にその身を掲げて旧い御城(おしろ)にずっと隠されお道化(どけ)て居るのを、視(ゆめ)に見紛う高個(こうこ)の心理は斬新(あらた)に気付ける床(ゆか)しみに観て、一人(ひと)の道理は正理(せいり)に基づく櫂とする等、一人(ひと)の孤独は孤高に宣う憐れな心裏を有頂に見て居た。清閑(しずか)な神秘(ふしぎ)が寡黙を続けて本能(ちから)を差す頃、俺の背後(あと)には他(ひと)しか見得ない暗(よみ)の空気(しとね)が俄かに活き去り、可愛い瞳(め)をした無効の孤独を突き出す夜目(よめ)には男性(おとこ)と女性(おんな)の生気の端擦(はず)れが眩んで映り、現世(このよ)の空気(くうき)に褥を濡らせる躰が在るのをその保身(み)に具えて膨(おお)きく生き尽(き)り、俺の幻覚(ゆめ)から真綿に垂らせる孤独の理知(はどめ)は、五月蠅(あわ)い街音(ノイズ)の凛々小躍(おど)れる坩堝(つぼ)の許容(うち)での一理であった。

 俺の白紙は無想に気付ける心理の文句(ことば)を多様に描(か)き付け、暗い黄泉から宙(そら)へ返れる空気(しとね)の具(つぶさ)を具体に知り貫(ぬ)き、遊び半ばに〝決(けつ)〟を採り生く矮小(ちいさ)な墓場に闊歩を儲けて、独りの心機(こころ)に理覚(りかく)を儲ける白弱(よわ)い整理を準じて識(し)った。硝子器(とうめいいろ)から心身(からだ)を透せる無適(むてき)の初歩(しょほ)には斬新差が失(な)く、悲哀に順(じゅん)じた孤独の来てには〝阿修羅〟を想わす熱気が火照り、明日(あす)の私運(さだめ)を定目(さだめ)へ翻(かえ)せる黄泉の身寒差(さむさ)に変換した儘、人間(ひと)の活路が無効に囀る音頭を呟き、〝御手(みて)〟の真皮が偶(ぐう)を識(し)るのを、俺の思惑(こころ)は全然(まった)く知らずに、初出(はじめ)に相(あい)した地上の風紀の御手(みて)の業(わざ)には、俺の理想(おもい)に聖女(おんな)が死に得た俗世(このよ)に群がる愚図(おろか)の実(み)である。

 孝行して居た俺の労苦は三途へ袈裟懸け、明日(あす)の生気に無信を見送る今日の生気の奮起事始(あらそいごと)には、幻想(ゆめ)の独気(オーラ)が突如に乾いて孤独の独義(どくぎ)を非常に相(あい)する幻想(ゆめ)の空転(まろび)に心身(からだ)を蹴与(けあず)け、朗(あか)るい調子に未然(さき)を渡せる苦力の養旨(ようし)は俺に斬新(あらた)に、俗世(このよ)の理性(はどめ)を立派に越え得るその実(み)の私財(たから)を空箱(あきばこ)へと容(い)れ、容易(やす)い身売りに理知(はどめ)を掛け得る暗(やみ)の暗躍(おどり)を巧く詠った。俺の人陰(かげ)からその後もそれでも生気が暗転(ころ)がり、空転(くうてん)して生く小人の群れには俺の未然(さき)とは違った将来(かなめ)が湯気を発(た)たせて上気に際して、身籠る悪の火種は日々の〝日種(ひだね)〟にその実(み)を化得(かえ)活き、未信(みしん)の暗記に坊主を遺せる端正(きれい)な経歴(きおく)にその視(め)を遣った。明日(あす)の表通(とおり)に仕上がる虚無には日常(かたち)の腕力(ちから)が現代人(ひと)を片付け、脆(よわ)く侍らす空想(おもい)の身丈(たけ)には宙(そら)を仰げる無信が働き、器用に意図する〝上(じょう)の器(うつわ)〟は未完(みじゅく)を欲しがり、連世(このよ)で培う現行人(ひと)の再起は〝黄泉〟を忘れて暴力(ちから)へ寄った。

 幻想(ゆめ)の余韻(なごり)の温味(ぬくみ)の来てから俺の探りは余韻(よいん)を差し活き、俗世(このよ)に蠢く男性(おとこ)と女性(おんな)の朗(あか)るい波には文句(ことば)の理性(はどめ)が不徳を仕立てて、俺と他(ひと)とを隔てた白壁(かべ)から白亜(はくあ)の空気(もぬけ)が審理を織り成し、真っ向から差す陽(よう)の見事は俺の暗夜(よる)へと誘(いざな)われていた。

 男性(おとこ)の開口(くち)から女性(おんな)の肉体(からだ)へ数奇を隔てて未覚(みかく)を突き添え、白い男性(おとこ)の息苦しさには女性(おんな)の毒牙が影響して居り、これまで観て来た男性(おとこ)の幻(ゆめ)には孤高を相(あい)せる一人(ひと)の盲蛇(もうじゃ)が、私欲(よく)を身近に追い追い発(た)て活き、宙(そら)の白雲(くも)には俗世(このよ)を流行(なが)さぬ体熱(ねつ)の労途(ろうと)が散乱している…。俺の背後(せなか)は女性(おんな)の軟裸(やわら)を淡々拵え、浮き続けて生く左方の活路(みち)には欲深(よくぶか)さえ無く、真白(しろ)い気流(ながれ)がその身を汚(けが)せる白露の真中(まなか)を浸透させ行く未完(みじゅく)の防御を幻想(ゆめ)に従え、大人に成れ得ぬ現代人(ひと)の潤みを密かな牛歩に称吟(しょうぎん)して居た。俗世(このよ)で見果てる魅惑の果てには漂白(しろ)い不思議(はてな)が居座り続けて幻(ゆめ)の列(ならび)に乱脈(みだれ)を競える孤高の遊歩が散在し続け、「明日(あす)」を活き行く二極(ふたつ)の一歩は天川(かわ)に流行(なが)れる白水(みず)の如くに無駄に尽きせぬ労力(ちから)を伴い、俺と男性(おとこ)の二重(にじゅう)の旅路を画策しながら、俗世(このよ)と黄泉との〝海馬〟の微動(うごき)を二肢(にし)に返(へん)じて黙策(もくさく)して居る。陽(まひる)の讃美は暗夜(よる)の安保(あんぽ)に歩速(ほそく)を余(あま)して、空気(しとね)と無意(むい)との謳歌の宵まで経過(とき)の運びに揚々足り行く無為のsympathy(シンパ)を下界で苛め、黄泉の姑息に矛盾を感じる男性(おとこ)に彩(と)られた無言の文句(ことば)は、女性(おんな)の肉体(からだ)を俗世(このよ)で意図する不意の小躍(おどり)に情(こころ)を留(と)めた。

 白雲(くも)が棚引く快晴(はれ)の宙(そら)には二手(ふたて)に分れた空道(みち)が延び行き、汚く生やせた四季(きせつ)の草木は一人(ひと)の両腕(かいな)を真横へ伸ばして俺と現代人(ひと)とを素早く乖離(はな)せる幻想(ゆめ)の奥義(おうぎ)にその実(み)が仕上がり、女性(おんな)の形成(かたち)は丸味(まるみ)を帯び生く二性(ふたつ)の「料理」に煩悶(みもだえ)しながら一人を毛嫌い、現代人(ひと)の群れにて結束(たば)を観(み)せ合う愚行(おろか)な直利(ちょくり)へ肢体(からだ)を投げた。

 俺の精神(こころ)は俗世(このよ)に無い儘、浮かれ騒ぎの男・女(だんじょ)の嗚咽を特異に片付く精病(やまい)の範囲(うち)から俄かに感ける二重(ふたえ)に乗じて、俗世(このよ)の基底(そこ)から華を保てる無為の弄(あそ)びに尽力(ちから)を観るとき夜(よ)にも化(か)われぬ不意の覚悟を目の当たりにして、俗世(このよ)の幻(ゆめ)には決して咲かない直観(あるじ)の求めに囀り始めた…。「聞えが好いほど概(おお)きく奏でる男・女(だんじょ)の詠(うた)」には余程に尽きせぬ未完(みじゅく)が覗かれ、厚くも薄くも、一人(ひと)の生肌(はだ)には揚々懐かぬ空気(しとね)の柔裸(やわら)がこっそり透り、出し抜けにも無い〝二重(ふたえ)の幻想(ゆめ)〟には俺が映らず散漫さえ観る。俗世(このよ)の独(どく)には女性(おんな)の〝火蓋〟が口火を与り、男性(おとこ)の孤独を器用に扱う欲の輪舞曲(ロンド)を既視(おおめ)に見立てて、〝うむ〟を云わさぬ迅速(はや)い万葉(ことば)を〝暗夜(やみ)〟に葬り自活(じぶん)は活き抜き、孤独を通して無我を透せぬ〝奥行き〟遮る現代人(ひと)〝教師〟は、昨夜(よる)の許容(うち)から詩吟(うた)を興じる無駄の輪舞曲(ロンド)を協奏して居た。二重(ふたえ)の覚悟を協奏して生く「未完(みかん)」を呈する人間(ひと)の既視(ゆめ)には、湯気の発(た)つ程その実(み)を与る〝俗世(このよ)〟に無適(むてき)の「白亜(はくあ)」の人陰(かげ)から神秘(はてな)が仕上がり、恐怖と未完(みじゅく)の二極(ふたつ)の貌(かお)からその〝実(み)〟を蹴破(けやぶ)る無憶(むおく)の感謝が没頭して居た。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

~孤独の台風―The typhoon of solitude―~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ