買取エピソード

明鏡止水

第1話

みなさん、お金がなくて泣く泣く本やCDをブックオフに売った経験はありませんか。


私はあります。


病気でアルバイトも難しく、面接しても落ちまくり。


稼ごうにも稼げない。

味方はお正月のお年玉と父からのお金だけ。


うつ病でとにかく漫画とアニメと小説。

生き甲斐はそれだけ。


人間なんて生まれて、生きて、死ぬ。それだけのために毎日こんなに苦しい。死にたい。死にたいのかわからないけれど医者もひどい人で行きたく無い。辛い。死のう。死のう。それでも、本があった。


フリーター時代は、大学までの定期代やオシャレのため、就職に有利だからとアルバイト経験を積む「学生」達と出会った。。たった2歳しか違わないのに、フリーターと学生は全然違う。


しんどかった時もありました。

内定を勝ち取ると学生は今までの労働はいったい? というくらいまとめて休んでいく。生活費を稼ぐタイプの上京組の学生さんは出ていましたが。


「もう学校そんなに無いはずなんだけどなあ……」


そう呟きました。


死にたくて死にたくてたまらなかったけど、パート先でうまく仕事ができずに嫌がらせも受けたけど、一生懸命「フリーターのお姉さん」をしていたのに。


いつもそう。気づけば。


「明鏡さん、ここ人が足りないから閉店までいられる?」


「明鏡さん、こことここ、入れ替えるから、この日出て欲しいの」


「明鏡さん、学生の◯◯さん、電車の遅延で遅れるから残業してもらえる?」


仕方ないことでした。でも、大した稼ぎにもならないのに、フリーターは良いように使われる気がする。


所詮は、大学へ通っている人たちの方が人生経験豊富で自分の人生に一生懸命で、内定がもらえたらあとは入社式まで卒論やら卒業式? やら今までの貯金をはたいて海外に行ったり、友達とカフェに行ってみたり。男の子とドライブしたり。


なんだよ。奨学金のことが心配、とか言いながら、親の扶養の何やらで8万超えないように働きながら。


陰ではフリーターなんて馬鹿にしてたのかよ。


圧倒的に彼女ら彼らは、きっと、もう交流は無いけれどもうみんな結婚して子供がいたりするはずだ。

でも、人の人生設計を真似しようとは思わないしできないからそれでいい。ただ。


辛かった。


辛くなった。


所詮、フリーターは使い勝手のいい、穴埋め扱い。


勤め先の閉店までいるのは本当は夜までいるとパニック障害やうつ病が出やすくなるのでやめておきたかったが、お金がなくても発作が心配だし。


苦手な人がいてもうまくやるのが大人だろうし、自分自身お店に迷惑をかけたことがたくさんあるからなんとかチャラにしたかった。


そのうち「うるさい」、「死ね」の独り言が出てきた。売り場でもつぶやいてしまったことがある。


限界だ。お金は90万くらいなら貯まった。私も勉強して、ここから逃げたい。


資格の勉強や専門学校の受験に挑戦した。専門学校の面接では病歴をありのまま告白してしまった。社会人枠も一般も落ちた。


でも、その間パートは半日で帰れた。

専門学校の受験をしたいから半日で帰りたいと伝えたら、職場は快諾して応援してくれた。


結局全部落っこちて、因縁のあった人からはコーヒーとパンを貰った。


パートの人たちのチェックのおかげでいろんなミスを防いでもらえたけれど、やるせない思いもあった。


次の職場では憧れの正社員になっても3ヶ月もたずに統合失調症で独り言と幻覚と妄想で悪夢のような日々と天国と地獄と宇宙を体感した。


それから時は流れ。


明鏡止水は重圧と手元のお金と幸せになれないジレンマと、クレジットカードやフリマアプリ、ネットオークションなどに熱くなり。オタ活をし。


お金に困る状態となった。


何年も使っていないドライヤーとかノリで買ったウィッグとか、ヘアアイロンを売りに出したい。


しかし。


10年以上。


経年したものはだいたい買取不可。


ウイッグも衛生品だからか断られた。


家電4点で3千円くらい。


パナソニックのドライヤーだったのに。

本当は自宅で使っている古いのを処分してこいつを使いたかったがお金にかえることにする。

古いドライヤー、発火しませんように。


さらに、理美容機も規格外とのことで買取不可だった。……規格外とは……。


ネットで買い取ってくれそうなところを探す。

「スポンサー」とついた上の方に出る業者は一体なんのスポンサーがついているのか。色んなところに自分の情報がいくんだろうか……、心配で。


検索欄に「家電名 買取」と入力してまとめサイトのトップスリーを見て、おっかなびっくり連絡を取る。


毎回思う。


氏名とか住所とか入力したくない……。

本人確認とか嫌だ。


でも、店舗まで持って行けないし。


色々電話したり手続きした後に、宅配買取や出張買取の違いなどを聞いて。


話が落ち着いたら、なんと、配送業者が荷物を取りに来てくれて梱包もして、査定してくれる会社まで送ってくれるらしい。……すごい。


でも、内心初めてのことで不安だ。


母親なんてナーバスになっていてネットでのやり取りや家電を集荷に来てもらった話をしただけで不機嫌になる。


母親の態度がストレスだ。


大事に守ってくれるのは父だが、疑ってかかって常に正しいのが母なので会話をするのが辛い。


世間話や報告をするたびに「余計なことをするな」、「それで安全なんでしょうね?」と念を押されていて相談ができない。


母のせいで辛い思いをたくさんした。

反動で信じられないほど買い物をした。


借金地獄になったのは自分の行いだけれど、追い詰めたのは母だ。


父もお金が足りないと1万貸してくれないか? 返すから、と言って本当に返す時と母が、「返さなくていいのよ!」とピシャリと言って帰ってこない時もある。


自分が払わなきゃいけないものがあるのなら教えて欲しい。一方的にあなたの分まで払っているのだから返さない時もある。というんじゃ本当に辛い。

多分、生命保険とかだと思う。

車検も車のガソリンも保険も全てやってくれる。


子供部屋おばさんの自分には意味がわからない。

母親も毎日、お金のことを考えているに違いない。





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買取エピソード 明鏡止水 @miuraharuma30

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