第26話 秘薬と遭遇
「ロイドさま! これです、『ポーションハーブ』!」
「ほぅ、これが」
リリナはぱぁっと笑みを浮かべて、摘んだ秘薬を俺に見せる。
全体的に青色の秘薬はどこか神秘的で、俺は感動の声を漏らした。
俺たちは、青色の木々を見つけてすぐにその場所に直行した。
それから、しばらく木々の足元を探していると、リリナが目的の秘薬を見つけた。
少し見つけるのに苦労したが、見つけられて本当に良かった。
「確かに、何でも治しちゃいそうな神秘性を感じるな」
「ロイドさま、こっちにもあります! 必要な分は揃いそうですよ!」
リリナはそう言うと、嬉しそうに『ポーションハーブ』を摘んでいく。
……これで、リリナのお母さんの方は何とかなりそうだな。
「ロイドさま、すみません。この木の細い枝を何本か取ってくれますか?」
「枝? 別に構わないけど」
俺は枝なんか何に使うんだろうと思いながら、数本青い木の枝を折ってリリナに手渡す。
すると、リリナはここに来る途中に取ってきた上流の川の水と、青い枝を容器に入れてシャバシャバと振り始めた。
「それは何をしてるんだ?」
「『ポーションハーブ』の簡易的な保存液を作ってるんです。このまま持って帰ると、途中で枯れてしまったり、本来の効果を発揮しない可能性があるので」
「なるほどな。そういうものなのか」
リリナはそう言うと、きゅぽんっと容器のふたを開けて、『ポーションハーブ』を容器の中にしまった。
確かに、薬草って草だもんな。そのまま持ち歩いていたら枯れちゃうよな。
アニメでは描写されなかった裏設定を見ているようで、俺は素直に感心してしまう。
「必要な分は採れたのか?」
「はい! ばっちりです!」
にへらっと緩んだ笑みを浮かべるリリナを見て、俺も釣られるように笑う。
「それじゃあ、早くこの場から離れるか。魔力が多い所なんて、絶対に強い魔物が寄ってくる場所だしな」
「そうですよね。強い魔物に会わないうちに……」
「リリナ?」
リリナは言葉の途中で後ろを向くと、そのままピタッと固まってしまった。
どうしたのだろうと思って俺も振り向くと、そこには俺の二倍くらいの大きさのイグアナのような魔物がいた。
いや、この大きさはもう恐竜だろ。
その魔物は鼻息を荒くしていて、俺たちを強く睨んでいる。
「ガアアアァァ!!」
魔物はそんな威圧感のある威嚇をして、今にも俺たちに突っ込んできそうだった。
「リリナ! 『隠密』だ!」
「はい!」
俺はリリナを背に隠して、長剣を引き抜く。
まずはリリナの『隠密』の効果を高めるためにも、俺に注目を集めさせる必要があるだろう。
俺はそんなことを考えて、長剣を振り上げて構える。
「『風爪(魔)』!」
俺がスキルを使いながら剣を振り下ろすと、勢いよく斬撃が魔物に向かって飛んでいった。
『風爪(魔)』は、本来の秘薬探しのイベントのボスだったゴリラのような魔物に効いたスキルだ。
さすがに、無傷というわけにはいかないだろう。
いや、素直に攻撃を食らうとは思えないな。かわされた時のことを想定して、次の一手を考えなくては。
「ガアアア!!」
ガギィィンッ!!
「え?」
俺がそんなことを考えていると、魔物は俺の斬撃をいとも簡単に片手で弾き飛ばした。
は? いやいや、無傷ってどういうことだよ?
そんなはずはないと思って魔物の腕を見てみると、魔物の手は一部が鉱石のように固い物に変わっていた。
何なんだ、あのスキルは?
俺は初めて見るスキルと、『風爪(魔)』が全く効いていないという事態を前に困惑するのだった。
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