壊れたラジオ

天川裕司

壊れたラジオ

タイトル:壊れたラジオ


私は久しぶりにラジオを聴いていた。

中学校の時はよくラジオを聴いていて、

寝る前によく聴いていたラジオ番組、

『ペーパーナイト』なんかを思い出すと、

あの当時がよみがえってくるようだ。


今じゃもうその番組はやってないけど

今の番組を聴いててもそれなりに楽しめるもの。


それを聴きながら漫画を読みつつ、お菓子を食べて

そろそろ眠くなってきたかなぁ、なんて思いながら

ラジオを切ろうとした時。


ラジオの声「ザーザー…パッパッ…ザザ…えー♪皆さんこんりんほぉ〜♪」


「え??」


少しノイズが入った後、聴き慣れたあの声が飛び出してきた。

そう、昔聴いていたあのラジオ番組、

『ペーパーナイト』が始まる時の挨拶。


「うそ、今でもやってんのこれ…?」


いやそんなはずはない。

『ペーパーナイト』は私が大学生の時に

既に放送を終了しており、その事は雑誌や

新聞にも載っていたのでちゃんと覚えてる。


「てことは、最近また始まったのかな…」


うれしい期待に胸を躍らせ、

私はしばらくそれに聴き入っていた。


でも様子が変?


さっきまでクリアに聴こえていたのに、

急にザーザーとノイズが目立つようになり、

今しゃべっている、私が憧れていたあの人、

土高(つちだか)ノンコの声が

だんだん男の声のように変わってゆき、

そのうちしゃべる内容までが変になっていく。


ラジオ「ボボボーボボ〜♪今週のお便りはっと!あ、これ違う。昔に見たシャクトリムシの…あ、これも違う」


「……何やってんのこれ…?」


クリアで透き通るほどきれいな声だった

あのノンコさんの声がすっかり男の声に変わり、

全くワケのわからない事をしゃべり出したのだ。


しかも「これラジオで放送して良いの?」

って事までバンバンしゃべるようになり、

私はなんだかそのうち怖くなり始めた。


「私、今何聴いてんだろ…」

相変わらず要所でノイズが聞こえる。

「これって普通のラジオじゃないよね…」

男の人の声が段々こもったような声になる。


そこまで来ると霊の仕業のような気もしてきて、

私はすぐにラジオを切り、そのラジオを自分の部屋から持ち出し、

父さん母さんが寝てる階下へ持って降りようとした。


このラジオが霊に取り憑かれたと思い、

自分の部屋から一刻も早く排除したかったのだ。


でもその時あまりに焦っていたからか。

手が滑ってラジオを落としてしまった。


「あっ!しまった!」

と叫び終える前にラジオは破損。


派手に落としてしまったせいで

カセットを入れる部分が破れてしまい、

中からテープが飛び出してしまった。


その時…

「え……き、きゃあ!」

一瞬、心底、ビビッた。


ラジオの中から白い小人のようなものが何人も出てきて、

小人「あ、出ちまった」

小人「あ、出ちまった」

と小さいながらもはっきり

聞き取れる声でごちゃごちゃ言い合い、

また破損したラジオの中へ帰って行ったのだ。


「……………なに、今の…」


これは数年前の出来事で、

今でもはっきりとその時の事を覚えてる。


あのラジオはもう処分してとっくに無いけど、

時々お風呂やトイレに入ってる時なんかに考える。


「…あれってもしかして、ラジオの中の職人さん?彼らがラジオの中で、あのきらめく世界を作り上げていたのかなぁ…」なんて。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=qrvSoed-jyg

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

壊れたラジオ 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ