眠れない夜に

西見伶

プロローグ 眠れない夜のブランコ何度でも僕らが生きた軌跡をなぞる

 誰にでも、眠れない夜はあるだろう。


 人生で何度目かの深い絶望を味わった日の夜、僕は眠れないでいた。


 やるせない感情を持て余して、ぶらぶらと散歩に出る。


 15分ほど夜道を歩き、小さな児童公園に辿り着く。


 小綺麗に整備されていて、夕方に子供たちがサッカーをする姿がありありと想像できる。


 思えば、このまちに来てから数ヶ月が経つが、この辺りにはほとんど来たことがなかった。


 ジャングルジムの隣に、銀色のブランコが位置している。


 懐かしい思いを掻き立てられ、二つある座板の一つに腰掛ける。


 想像していた通り、かなり低い。


 地面に着かないように脚を目一杯伸ばして、ブランコを漕ぎ始める。


 ブランコは円を途中まで描き、そして戻る。前へ進み、後退する。


 揺れが大きくなって、ブランコと一緒に後ろに大きく引っ張られていきながら、僕は故郷の公園で過ごしたある夜の記憶を思い出していた。


 あれは、今日と同じで中々眠れないでいた夜のこと。


 始まりは、一件のLINEだった。

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