那須さん家の名探偵

北川聖夜

1st 宝くじは誰のもの

小太郎① 最寄駅

「名は体を表す」って言葉があるだろ。知っていると思うが、物や人の名前は、その中身や性質を的確に表すことが多いということだ。ちなみにここでの「体」は「たい」と読むからな。知らないで「からだ」と読むと十中八九笑われるから気を付けた方が良い。


 似たような言葉で「車は運転手を表す」と言う言葉がある。これは俺が考えた格言だから知らなくてもバカにはされないが、要は乗っている車でその人の人となりがなんとなくわかる、と言う意味だ。例えば、クラウンやフィーガと言った高級乗用車に乗っている人はお金持ちや、かなりのカーマニア、若しくは「怖い大人の人」の場合が大多数だろう。

 逆に言えばそう言う人が安くてオンボロの軽自動車で登場することはほぼない。まあ、多少の偏見へんけんと嫉妬は混ざっているが。


 そんなわけで今日も俺は耐用年数を遙かに超えた軽アルトに乗り込み、愛しの妹を駅まで迎えに来た。残業を終え、ようやく家で束の間の晩酌を楽しもうと思ってた矢先、メールで呼び出されたからだ。なんでも先日から取り組んでいた「宿題」が片付いてこれから帰る、とのことだ。最寄駅もよりえきからの終バスもすでに行ってしまった。年頃の娘に夜道を30分も歩かせるのもなんだし、たまには妹孝行してやるか。


 俺は駅前の30分無料パーキングに愛車を止めると窓を開け、エンジンを止めた。窓から入る浜風は相変わらず潮の香りを運んで来る。時折突風に近い風が舞い込むが、疲れた頭にはそれも心地よい。


 電車が到着するまで15分。ちょっと早く着きすぎたが、まあ今回の「宿題」の話を総括して待つとしよう。

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