第13話 手柄が増えてよかったね!
さて、カフクが目論んだ危機感の欠如アピールの顛末といえば。
「――冒険者ナギサ一行! バラエティ遺跡における未踏破エリアの開拓、新アーティファクトの発見及び起動の成功! 此度の類まれなる諸君らの功績を讃え、ここに表彰します! アドバンスの街ギルドマスター・レオンファング」
パチパチパチパチと、拍手喝采。
ギルド会館にて、職員と冒険者たちにお祝いされました。
「すげーよ、勇者は」
「流石です、勇者様」
「ナギサの野郎、えげつねー実力じゃん」
「フン。まあ、僕のライバルとして認めてやってもいいだろう」
勇者ナギサがまた活躍した。これが大多数の意見である。
それでいい。カフクの追放計画は失敗したものの、勇者パの評価が上がれば異物混入に疑問を持つ者が増えていく。有名になるほど、世間体は無視できない要素。時間はかかるが、長期的プランも検討せねばなるまい。目下、短期集中作戦は失敗続きゆえ。
もしや、無能が計画を立てても成功するはずがない? だって、無能だから。
作戦の失敗で逆説的に無能を証明してしまったね。しかし、そのアピールもといプレゼンテーション能力が欠如しているのだ。
ひとまず、聡明なブレーンが必要か。ちょ待てよ。指示役の言うことをまともに遂行できないほうが――以下略。
表彰式が終わり、各々解散の流れ。
賞状と報奨金を頂いたナギサを、女性冒険者たちが囲っていた。
金髪碧眼のイケメンで性格が良くて実力も一流……?
ゆ、許せん。何が許せないって、裏で荷物持ちをバカにしないとこ。周囲の目がなくても、アイテム係を対等に扱うとこ。カァーッ、俺はもう限界ですよ。何が?
ニニカとハレルヤは懐が暖かくなったので、スイーツバイキングへ向かった。お前ら、ナギサのヒロインだろ。他の女を排除しろ、役目でしょ。
昨日、資金と労力をつぎ込んだのに結果がちっとも芳しくない。いつもの冒険でも、今回と同じ結果へ収束したに違いない。
「とほほ」
骨折り損のくたびれ儲けとはこのことか。
「隠し通路を見つけたのも、転送陣を復活させたのも、全部カフクなんだ。本当さ。僕がリーダーで一番目立つし、ギルド的にも勇者に箔を付けた方が好都合なんだろうね。けれど、皆には勇者パーティーの活躍の表裏問わず後方支援のおかげだって広めてほしい。真実を、親友の実力を蔑ろにされるのは看過できない。もちろん、今日は奢るよ? 報奨金も貰えたからね。カフクが全部受け取るべきだけど、絶対に受け取ろうとしないからさ……せめて、彼の正しい評価につながる広報費ってことで納得してもらおう。ふぅ――キミの有能アピールを満足にこなせないなんて僕は役者不足かな?」
ナギサが周囲に宣伝しているが、今日はもう疲れたので知りません。
俺は酒場の隅っこで、注文したコーラの炭酸が抜けるくらいぐったりしていた。
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