第34話 恋人同士のケンカが終わると、戦争も回避できて一安心……

ミリアは当然、ユウヤも従ってくれると思っていて、過去に皇女ミリアとして命令をすれば従わない者などいなかった。それを平然と拒否をした挙げ句に兵士との交戦を宣言をしてきてミリアは、どうして良いのか分からなくなっていた。当然、捕らえよと命令は出すつもりは無い……自分の婚約者で大切な人なので、そんな命令を出せる訳が無い。再び、お別れと再び言われて余りのショックで、その場に座り込んで目を潤ませてユウヤを見つめた。


 

「ううぅ……何で、こうなったのですかぁ〜ユウヤ様ぁ……大好きなのです、好きなだけなのです。ずっと一緒に居たいのです……うわぁ~ん……ユウヤ様ぁ……なんで分かって下さらないのですかぁ……ばかぁ……ぐすんっ」


 

ミリアが床に座り込んだまま大泣きをしてしまった。

 

はぁ……ここまで言われて出ては行けないよな……俺の負けだな。勝ち負けじゃないけど。


 

「はぁ……分かったよ……」


 

周りの者達が緊張で凍りついていたのがユウヤの一言で、安堵の表情に変わり極度の緊張から開放をされて数人の兵士達が力が抜けて地面に座り込んだが、まだ震えていた。


 

「ぐすんっ……ホントですかぁ……?許していただけるのですか?ぐすんっ……」


 

周りの者は安堵したが、ミリアの発言の意味が分からなかった。


何故……皇女である事を宣言して命令をして、それを平然と拒否をした挙げ句に、兵士との交戦すると宣言をした相手に許しを得ようとしていた事が理解が出来なかった。


 

「許すって。でも、こんな気持にさせないでよ」


「勿論ですわ……ううぅ……わたしも、もうイヤですわ……反省をしました。……それで婚約の方は……?」


 

再びミリアム王子と兵士に緊張が走った……頼むから婚約破棄をしないでくれと言う表情でユウヤの方を見つめた。こんなに他人の婚約を心の底から願った事など皆、当然だが無かった。


 

「婚約破棄は認めないんでしょ?」


「はい。認めないです。絶対にっ!……ですが本当にイヤになったのですか……?」


「イヤになって無いから、ヤキモチを妬いてるんじゃん」


 

ミリアム王子と兵士達は、心の底からお祝いをしてあげたくなったが……今、余計な事をして邪魔をしてユウヤの機嫌を損ねては困るので、余計な事を言わず、態度にも出さないように皆が平静を装っていた。


 

「はぁ……良かったですわ……ユウヤ様ぁ……ぎゅっ♡てしてください……」


「え?皆が見てるじゃん」


 

ミリアム王子と兵士達は慌てて行動に移し、座っている者は立ち上がり、立ち上がれない者が居れば手を貸して、ミリアムが命令を出した。


 

「詰め所の中にいる者は外に出よ!命令だぞ!さっさと出ろ!戦火に巻き込まれれば王国が滅びるぞ!!」


 

兵士達も事の重大さを理解できていたので、慌てて外に出るとミリアム王子がホッとした表情になり最後の兵士が外に出ると、ゆっくりと扉を閉めた。


 

「ミリアはワガママだよな……人前ではキスをするな、抱きつくなって言ってたのに……」


「えっと……お嫌でしたか……?」


 

ミリアは心配そうな顔でユウヤを見つめていると。


 

「いや……大好きだよ。ミリアは?」


「ううぅ……その数百倍は大好きですわ。10代になって人前で泣いたのは初めてですわ……それくらい大好きですわ。もう泣かさないで下さい……ぐすんっ……」


 

ミリアを久し振りに抱きしめてキスをし合った。泣かさないで下さいって、誰のせいだよ……と思ったが口には出さなかった。


 

「はうぅ……♡ 不安と緊張が解けて立てなくなっちゃいましたぁ……はぁ……」


 

立てなくなったと言うのでミリアをお姫様抱っこで担いで詰め所から出たらユウヤは、ちょっとした恋人同士のケンカを見られて恥ずかしいと思っているだけだった。

 

詰め所から出ると、大勢の王国軍、警備兵が待ち構えていた。

 

うわぁ……こんなに大勢の前でミリアにヤキモチを妬いて、ケンカをしていたのを見られてたのか……恥ずかしいなぁ……


 

だが他の者は、帝国の頂点の存在の更に上に立つ者だと認識された。あのミリア皇女殿下の命令を平然と拒否をし、捕らえれようとすれば兵と交戦をすると堂々と宣言までして、簡単に皇女殿下を服従させ謝罪をさせたと。


 

「じゃあ、ミリアの屋敷で休ませてもらおうかな」


「はい♪馬車をお願いしますわ」


 

ミリアが護衛に指示を出すと、緊張のせいで転びそうになりながら馬車を用意しようと走って行くのをミリアムが気が付いた。



「その者の行く道を開けよ!馬車が通る道を開けよ!」



大勢の兵士が馬車の通り道を開けてくれた。色々と迷惑を掛けたミリアムに謝っておくか。



「いやぁ……恥ずかしい所を見せて悪かったよ」


「い、いや……構わない。誤解をされるような事態になり対応を出来なかった私にも非があるので」


 

ミリアム王子が顔を引き攣らせながら返事をした。


 

「だが、もう……ケンカは、しないでもらいたいな寿命が随分と縮んだ気がする……」


「そんな大げさな事を言うなって……。ちょっとヤキモチを妬いてミリアとケンカしただけだろ〜」


「うぅぅ……わたしも寿命が縮みましたわ……」


「え?ミリアが?」


 

ミリアムが、この会話は不味いと、先読みをし兵士達に解散の命令を出し、会話を遮りると話を終わらせ自分も早急に、この場から去りたかった。


 

「ここに兵を留めて置くのは、王都の警備に支障が出るので解散をさせます」


「ええ。ご迷惑をお掛けしました」


「皆に迷惑を掛けたようで悪かったね」


「お二人とも婚約者同士なのですから仲良くお願い致します……」


「当然ですわっ。婚約者同士なのですからっ♡ ですわよねっ♪ユウヤ様っ!」


「ああ、心配有難う。そうだよな……ミリア」


「はいっ♡」


 

ミリアムが兵と共に去り、馬車が到着すると二人で乗り込み屋敷に戻った。

 

前の屋敷と変わらない豪華さの屋敷で、少し違う雰囲気だけど心地良い屋敷だな。

 

リビングにあるソファーにミリアをお姫様抱っこで抱えて降ろして隣に座ると寄り掛かってきた。


 

「あの……ユウヤ様……ご不快に思わせてしまいすみませんでした……」


  

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