第25話 王城からの帰り道にで、また馬車が急停車した。

「じゃあ店は大丈夫か……」


「はい。お店は従業員を雇って続けられますよ。あのお薬等が無くなると困る方が大勢出てしまいますし」


「そうですぞ……是非続けて欲しいです。私も協力を致します」


「王様を、お父様とお呼びした方が良いのですかね?」


「そうですな……」


 

王様が困った表情でミリアの方を見た。


 

「養子だという事は知られているので好きな呼び方で良いのでは?」


「せっかくだし父上と呼ばせてもらおうかな」


「おぉ……ユウヤ様に父上とですか……大変名誉な事で嬉しく思います」


 

しばらく雑談をして国王との話が終わり。応接室を出ると護衛とメイドさんが皆揃っていて、王都での用事が済んだのでミリアの屋敷に帰ることにした。


 

いつも通り馬車に乗るとミリアの膝枕で頭を撫でられていた。


なんだかこの状況にも慣れてきたな……最近では恥ずかしくて緊張をすると言うよりも、少し恥ずかしいけど癒やされるね。


 

「ユウヤ様は、ホントにお強いのですねっ♡」


「いや……運が良かっただけだと思うけどな……」


「そうなのですか~?そんな事は……うぅ〜ん……そういう事にしておきますわ」


 

ミリアのお腹を抱きしめて、しばらく寛いでいると……


また馬車が急停車してミリアが窓の外を見ると、大きな溜息をついた。


今回は、モンスターでは無さそうな感じがする。停車するって事は通行止め?盗賊か?ミリアが、溜息をついて呆れてる顔をしていたので盗賊っぽいかな?


面倒だけど……一応、窓の外を確認すると結構な数の盗賊に囲まれていたので護衛だけじゃキツイよなぁ。


 

「俺も参加してくる……はぁ」


「すみません……護衛を増やしておけば良かったですわね」


「完全に忘れてたよ。前に目立つから減らしてと言ったの俺だし」


 

モンスターが居なくなったら今度は盗賊か~随分と居心地が良い道なんだろうな。


 

「この盗賊って殺しちゃっても大丈夫なの?」


「盗賊行為は重罪で助かったとしても、どちらにしても処刑対象ですので死ぬのは確定ですので殺しちゃっても大丈夫ですわ」


「そっか。手加減しながら戦ってケガをするのもバカらしいって思って」


「お気をつけてください……ちゅ♡」


「ミリアは外に出ないでね」


「はぁい♪」



ミリアは盗賊に襲われているのに完全に安心しきっている表情だった。


前回のモンスターを倒しているからだよな~騒がれるより良いけど少しは心配してくれても良いんじゃない?

 

馬車の外に出るとミリアの乗っている馬車にバリアを張った。


周りを見渡すと前方に50人、後方に20人程の盗賊に囲まれていて、すでに前方では剣を打ち合う金属を打ち合う音がしていて戦闘が始まっている様子だった。戦闘が出来ないメイドさん乗っている馬車にもバリアを張っておいた。


 

収納から王様から貰った事にしてある剣を出して腰に帯剣をして、後方に居る盗賊の元へ向かうと盗賊の頭っぽいヤツが話を掛けてきた。


 

「この人数差だぞ?戦ってもお前達に勝ち目は無いぞ!無駄死にせずに降伏して王族か貴族を差し出せ!その馬車は王族の馬車だよな!?」


「王族は俺で乗っているのはミリア皇女殿下なんですけど?」


「は?そんな訳が無いだろ……そんな脅しは効かないぞ!皇女が乗っているには護衛の兵士が少なすぎる。それに帝国の紋章が無いではないか!」


 

ミリアが脅し?盗賊でもミリアの事は恐れているのか?王族や貴族は誘拐をして身代金でも要求するつもりか。


 

「ホントにミリア皇女殿下なんだけど?」


「皇女殿下の名前を出せばビビると思って嘘をつくヤツがいるんだよな……」


「そうなんですね……」


「そりゃそうだろ……皇女殿下を襲ってケガでもされたら、この辺一帯が帝国兵に一掃されちまう。頭が悪くてもそれくらい分かるさ!」


 

そうだろうな……溺愛してる娘が盗賊にケガをさせられたと知ったら、触っただけで国に攻め込んで来る父親だし。もしケガをさせたとしったら……この辺の盗賊を総力を上げて殲滅をしにくるだろうね。


 

「それにお前が王族だと……?平民服を着た王族などいるかよ!身代わりのつもりなのか?それに王族が、わざわざ自分から盗賊の前に出てくるわけがないだろ!」


 

そういうと大笑いをして周りの盗賊も笑い始めた。


うん。そりゃそうだ……自分でも笑ってしまった。


 

「お前、なかなか度胸が有るな……この人数を目の前にしてよく笑ってられるな!気に入ったぞ!仲間になれば幹部にしてやるぞ!」


「いや……ちょっと盗賊は無理ですね」


「そうか……残念だが抵抗するなら殺すしか無いな。それにその剣も高く売れそうだしな」


 

長話をしてるヒマは無いんだった!護衛が前方で戦ってるんだったよ……忘れてた!


 

居合の構えをしてる時に、後ろから斬り掛かって来られるのを気配を不思議と感じ取れた。


ん?そう言えば……試合を見てる時もミリアと話をしていて視界に入ってなかったのに飛んでくる木剣を叩き落としてたな……

 

考え事をして無意識に剣を使い斬り掛かってきた盗賊を斬っていた。


あれ?初めて剣で人を斬っちゃったよ。罪悪感とかそういう事じゃなくて、俺って剣を使えるの?レベルアップしちゃったんじゃない?特訓とかしてないけど体が勝手に動くし剣もかなりのスピードじゃない?

 

盗賊を斬るのに抵抗は全くないモンスターと同じでしょ。襲いかかってくるのに同情をしてたり恐れていたら大切な人を護れないし自分の身が危ない。

 

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