第5話 ミリアの屋敷でお食事をして……

「着きましたわ。ここは、わたしの屋敷ですので気を使わずゆっくりしてお過ごしください」


「ん?ミリアのお屋敷なの?」


「はいっ。わたしの屋敷ですわ」


「やっぱり貴族はお金持ちだなぁ……」


 

周りの兵士やお付きの人が俺を見つめてきたと言うより睨まれた。何で?


ん?何か変な事を言ったか?ミリアは気にして無さそうだけど?


 

「ユウヤ様こちらですっ♪」


 

ミリアに腕を組まれて屋敷の玄関に入ると使用人が並んでいて出迎えてくれて頭を下げている。


うわぁ……映画やアニメの世界じゃん。俺に頭を下げてるんじゃなくてミリアにだろうけどさ。緊張をするな……


 

応接室に通されてミリアと二人っきりになった。


え?何この状況って……なに?普通はリビングじゃないの?まぁここは異世界だし元の世界の常識は通用しないよな。


 

「わたしを助けて下さり有難うございました!」


「もう、それは良いって。何度もお礼は言われてるし」


「そうですよね。何度も言われるのもご迷惑ですよね」


 

ミリアがベルを鳴らしてメイドを呼ぶと紅茶が出てきた。


随分と良い香りのする紅茶だな……紅茶ってこんなに良い香りだったっけ?俺が前世で飲んでいた紅茶の記憶と全然違う気がする。覚えておいて後でゆっくり飲むか。


メイドが出ていくと向かい合わせで座っていたミリアが立ち上がり隣に座ってきた。

 

うわっ。近いって……それにしてもセミロングのサラサラの金髪で透き通る青い目がキレイで宝石みたいに輝いていて、こんな近くで可愛い美少女を見られるなんて……


 

「あの……とても希少で高級な治療薬を使用をして頂いたとお聞きしています……しかも兵士達にまで惜しげもなく使って頂いたと……」


「それも含めてお礼は終わってるよ」


「いえ……それにキスまで……」


 

頬を赤くして見つめられた。


うわぁ……上目遣いで頬を赤くして……可愛いなぁ……


多分、何処の世界でも、貴族と平民だし付き合ったり仲良くするのはムリだろうなぁ……彼女や友達にしても面倒になりそうだよな。貴族だし。


 

「キスではなく助けるためにしただけですよ?気を失い掛けていて、一人で治療薬を飲めなかったので……口移しで飲ませただけで……」


「それでも皆の前でキスをされたので……わたしは……」


 

ん?まさかキスをしたので結婚とか?まさかなぁ……


 

「わたしは……ユウヤ様のお嫁さんになります……」


「え?」


 

そのまさかだった。いやいや……ミリアは可愛くて魅力的で、こんな金髪美少女が嫁さんに出来れば最高なんだけどさ。仕方なくって感じなのが嫌だな……助けてキスをしたから結婚しますって感じがな嫌だ。それに貴族だろ?絶対に面倒事が待ってるだろうし……俺のスローライフが無くなる気がする!豪華な暮らしも憧れるけど、自然豊かな山で自給自足して寂しくなったら村や町で仲良くなった友人と楽しく話をして過ごすのが良い!


 

「ミリアは嫌なんじゃないの?キスをされたから仕方なくだよね?」


「ち、違います……あの……その……」


ミリアの頬が赤くなり目を逸らしてモジモジしていて、俺の目を見つめ直し……



「ユウヤ様に一目惚れです♡」


えっ?一目惚れ?俺に?モテない俺に?……あ、今は可愛い系の顔になってたんだっけか?



「いやいや……一目惚れで結婚? 俺の事を何も知らないだろ?付き合うとかからじゃないの?」


「十分に人柄は知っていますわ。貴族の娘を無償で治して何も言わずに立ち去るお方です。普通は貴族の命を助ければ大金が支払われますし、平民なら一生遊んで暮らせるだけのお金は支払われるはずです。支払われなければ、その命を助けられた貴族の価値はそれだけという風に言われ続けますし……無欲で優しいお方です」


 

ただ……面倒事に巻き込まれないように立ち去ったとは言えないね。


 

「それって、もしかして迷惑を掛けちゃってる?」


「とんでもありません!とても感謝しています」


「俺と結婚しても良い事は無いんじゃないかな……お金も無いし家も無いんだよ?」


「それは問題ありません。わたしが家もお金もあるので大丈夫です」


 

なにその高待遇というか養ってあげるって感じは。


 

「それじゃなんだか、それ目的で助けたみたいになっちゃうんだけど」


「あの腹部を切り裂かれ内蔵まで傷が達していた状態の、わたしを治せたのはユウヤ様だけだと聞いています。医者は状態を聞いただけで恐れて逃げ出したと言ってましたし。何の恐れもなく瀕死の、わたしを治療した勇気もステキです」



医者が逃げ出した?あぁ……だから医者が来なかったのか……でも、何で?もしかしたら救えるかもしれないだろ?そしたら大金持ちか、治療費が多くもらえるだろ?


「医者が恐れて逃げ出したって?」


「はい。医者なのに治療が出来なければ殺したとなりますので罰されますね。医者じゃなくても治療した者も同じですね……暗殺の疑いも出てきますから……普通は、わたしの様な貴族の瀕死の状態の者には治療や手助けをされないどころか近寄ってくる者も居りませんよ」


 

うわっ。俺かなり危ない事をしてたのね……だから誰も治療や近付く者も居なかった訳か……納得したよ。


 

「でも親が許さないんじゃない?平民だよ俺は」


「それも問題ありません。瀕死の状態の者を治療できるお方で貴重ですし。見返りを望まない無欲で勇敢なお方ですし。何より……わたしが望んでいますので……」


 

うわぁ……逃げられないじゃん。


別にミリアを嫌な訳じゃないけど急ぎ過ぎで少し強引過ぎじゃない?


 

「急だしさ、お付き合いをしてからじゃないの?」


「お付き合いですか?お付き合いをしたら婚約と同義なので、どちらにしても結婚ですけれど?」


「なんで、そうなるの?」


「お付き合いをして取り消されたらお互い、どちらかが問題があるという事になりますので……普通は今後の結婚がし難くなります。お付き合いと婚約は同じですよ」


「あ~なるほど……」


「お話は、これくらいにしましてお食事をしませんか?」


「そうだね」


 

なんだか一気に食欲が無くなったんだけど。少し貴族の食事を楽しみにしていたんだけどな……


リビングに移動すると、広くて豪華な感じで圧倒されるね……さすが貴族様って感じのリビングだなぁ。


 

「スゴイね・・・さすが貴族様って感じ」


「そうですかね?」


 

豪華な長いテーブルで豪華な蝋燭立が並んでいてテーブルの両端に料理が並べられていた。


これじゃ遠くて食べながら話は出来ないよな……まぁ良いけど。気を使わないで食べるのに集中が出来て良いかもな……でも、折角の美少女と食事ができるチャンスだしな……食事は後でアイテムで出せると思うし、ゆっくりとテントで食べれば良いか。


 

「こんなに離れて食べるんだ?俺は貴族の常識やマナーを知らないんだけどさ。それでも良かったら楽しく話しながら食べた方が美味しく食べられると思うんだけど?」


「そうですわよねっ。そうしましょう!」

 

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