ご奉仕メイドは男の夢――2

 流石にお客さんを無視するわけにはいかないため、風香姉が俺を引き留めることはなかった。


 俺は胸を撫で下ろす。


 なんとかうやむやにできたみたいだ。本当に助かった。いま来たお客さんには、特別丁寧な対応をしよう。


 褒められたものじゃないことを考えながら、お客さんを出迎える。


「いらっしゃいませ」

「……ふぇ?」


 俺が頭を下げると、お客さんがの抜けた声を漏らした。


 不思議に思い、お客さんの姿を確認して――


「……はぇ?」


 俺もまた、間の抜けた声を漏らす。


 それもしかたない。なにしろ、白いリボンブラウスに深緑のプリーツスカートを合わせたその女性客は、俺の親友だったのだから。


「花咲さん?」

「火野くん?」


 俺と花咲さんは、予想だにしない出会いに、揃って呆然としていた。


 しばらくのあいだ無言で見つめ合ったのち、一足早く我に返った俺が尋ねる。


「ど、どうして、花咲さんが?」

「ここのパフェが名物だって聞いて……そういう火野くんは?」

「俺、ここでバイトしているんだよ」

「そうなんだ……偶然ってスゴいね」


 心底驚いた様子の花咲さんが、「だけど」と満面の笑みを咲かせた。


「思いがけず火野くんに出会え嬉しいよ。神さまに感謝しなくっちゃね!」

「そっ、そうだね」


 俺の声はひっくり返っていた。花咲さんの笑顔が眩しすぎたのと、花咲さんの発言が嬉しすぎたからだ。


 可愛すぎる! 胸が高鳴りすぎて、心臓が止まるかと思った!


 まるでご主人さまに甘える子犬のよう。純粋な好意を真っ直ぐにぶつけられては、動揺せずにいられない。


「晴くんのお知り合いかなぁ?」


 プルプルと悶絶していると、俺たちの様子を見に来た風香姉が、首を傾げていてきた。 頷いて、俺はそれぞれを紹介する。


「この子は花咲美弥さん。俺の友達」

「よろしくお願いします」

「で、こちらは火野風香さん。俺の叔母――」

「晴くん?」

「……俺の母さんの妹です」

「よろしくねぇ、花咲さん」


 一瞬殺気を放った風香姉が、ニッコリ笑って花咲さんに挨拶した。危ない危ない、口が滑った。うかうかしていられないな。


「そっかぁ、晴くんの友達かぁ。仲良くしてあげてねぇ?」

「もちろんです! 火野くんとわたしは一番の仲良しですから!」


 花咲さんが誇らしげに胸を叩く。


 豊かすぎる胸が、ポヨン、と弾むなか、花咲さんの発言を耳にした風香姉が、目をパチクリとさせた。


「一番の仲良し?」

「はい! 固い絆で結ばれた、誰にも負けないくらいの仲良しです!」

「ほうほう。花咲さんは、晴くんのことが好きなのぉ?」

「大大大好きです!」

「ほうほうほうほう」


 俺と花咲さんの仲を確認した風香姉が、ニヤニヤとした笑みをこちらに見せる。


「なるほどねぇ。慕われてるじゃん、晴くん?」

「…………」


 きっと赤くなっているだろう顔を隠すため、俺はそっぽを向いた。


 面倒くさい勘違いしてるんだろうなあ、風香姉。

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