転生したら車でした

ダークマター@darkmatter

第1話 はじまり

「あーあ、平和だなー。なーんか味がないというか」

私は普通にそうぼやきながら街を歩いている。

歩行者信号が赤なので待っているところです。

「そうだなー、なーんかあると面白いのになー」

と言っていたら、猛スピードで四葉のマークがついたプリウスが突っ込んできた。

その時点で脳がフリーズして、気がついたら視界が低い。

「……あれ、私ってどうなったっけ?」

不意にステータスっぽいのがあるから見たら案外強め。

でキャラクターが見れるので見てみる。

ギョッとした。

こ、これって、スポーツカーの70スープラちゃん!?

メールはないし、ど、どうしよう。

ステータスをしまうと、鏡の魔法が使えたので使ってみる。

本当にスポーツカーの70スープラだった。

「えええ!?」

と、言っていたらメールが来た。

ピコン、と音を立てて届いたので見てみたら、めっちゃ強くしたし魔力自動車に転生したから自由に生きれるよーということだった。

「……魔力で動く自動車?」

つまりは、魔力石というこの世界では貴重な存在を埋め込まれた自動車のようで、その手の意思は自動生成されても高値がつくというレベルの貴重なものが埋め込まれているわけで。

狙われないよう攻撃等も覚えているということだ。

と、見ていたらガサッと音がして視線を恐る恐る向けた。

そこには、感情を表せる車……多分podだろう、その車が見ていた。

「あれ? 君どこから来たの?」

「えっと……異世界から飛んできた」

「異世界? あー……もしかして、転生者かな?」

「そうだけど。(ていうかそれで通じるんだ)」

「ボクはpod、君の名前は?」

「私の名前はスープラだよ」

「スープラちゃんか、エンジン何積んでる?」

「え、エンジン……わかんない」

「あ、そっか、ステータス見せれる?」

「う、うん」

ステータスを見せたところ、驚かれた。

「すごいレア車だね! いいなぁ。ボクなんて普通のエンジンだから燃料食うんだよ」

「ね、燃料? そういえばどんな燃料を使ってるの?」

「ガソリン」

「あっはい」

ちなみにこの車たちは普段は燃料を使って走るんだが、レア車はそうじゃないとか。

それが私みたいに、魔力で動く、燃料がいらない車だとか。

つまり選ばれた車みたいなもんだ。

めったにいないので告白されることもあるそうだ。

「とりあえず説明したから街に行こうか」

「そうですね」

ということで走っていくと、でっかい街が見えた。

人間ではなく、すべて車だ。

生き生きとした車たちが働いている。

「こりゃ! またサボって!」

「ひーん! ごめんなさい! ボクはこれから父に手伝いに行くから、案内できなくてごめんね!」

泣きそうな顔してもらっても困るんだが。

「い、いえ、大丈夫です。自分で探検したいからありがとう」

その後二台の車は去っていった。

さてどこから探検しようか。

ゆっくり速度出しつつ、安全に走りつつ探検してみることにした。

挨拶しながらだから気を付けて走ったけど、住みたい街でもある。

と、一台のレースカー、カストールトムススープラが走ってきた。

「君、スポーツカーか……。レースに出てみない?」

「い、いえ、まず住処がないからできるんです? それ……」

「あ、そうか。まず俺はこの街の主というか、市長さんでな」

レースカーが市長なのも珍しいが、カストロールトムススープラは視線を向けた。

「住みたい空き家ならそこにあるぞ」

と、めっちゃきれいなお家が見えた。

家具とかはそのままになってるが、かなりきれいだ。

「住民はこのお家を明け渡す時に言っていたんだ。『新しい住民はとてもレアな子になるだろう』と。その前も変なこと言ってたけど、『私の占いは当たることはあるから気を付けてな』って。他の住民たちからは煙たがられてたからなんとも言えないけど、君なら住めるだろう。どうだい?」

「受け入れます」

「ありがとう。ところでエンジンは?」

「その、魔力自動車というか、エンジンが魔法石の埋め込まれた車としか」

「すごいレアな車だね。なるほど、噂になりそうだね」

「う、噂になっても困るんですが……」

「と言われても、他の住民がもう見ているよ」

「うぅ」

たしかにそうだけど、どうしようと思った。

「とりあえず住処はここで良いかい?」

「そうしてください」

「……よし、住所登録完了」

スープラとして登録されたものの、不安がある。

本当に生活できるんだろうかこれ。


ということで初日はそんな感じで寝ることにした。

そういえば私って、生前何してたんだろう。

思い出せないけど良いか、と思って休むことにした。


翌日。

早速料理をして食べてみる。

口どこやってなるけどそこは言わないでおこう……だって車だし。

その後早速新聞会社に新聞配達お願いをしてみる。

「あのお家に人が住んだんだね、良かった。で、君が新人かぁ」

「そ、そうですが……」

「新聞配達了解、明日からでいいかい?」

「それでお願いします」

「ちなみに、君は知らないけど、レースが毎年行われているんだけど、レースの時期はもう今年は終わってるから、来年になるけど、それまでレース練習するかい?」

「気になりますね。どういうのですか?」

「3月~11月始めまで、シーズンがあって、毎日レース三昧になるけど、そのシーズン次第ではトップクラスのレースに出れるんだ。それが11月中旬になるけど。今は12月だし、寒いからね。で、そのトップクラスのレースに出て優勝したら、なにかが起こるってよく言われるけど毎年同じ車が優勝するからね、たまには参加車両増やしてって頼まれるんだよ、その車から」

「参加してみたいですね。でもそれまでどうすれば?」

「まず市長さんにお願いしてみ?」

と、後ろにその市長さんがいて驚いた。

「なるほど、手続きしてほしいかい?」

「お、お願いします市長さん」

「……手続完了、来年からだけど、タイヤとかも特殊だし、行けるんじゃないかな?」

「えっと?」

「伝説の車がいたんだ、過去に。そいつは悪魔のタイヤ、悪魔の魔法石エンジン、悪魔のブレーキが装備されていたんだ。それにそっくりだから多分……行けるかもな」

「わかりました。それまでエンジン温めておきます」

「気合たっぷりだね。よろしくね」

その後市長さんは去っていった。

「たまに新聞配達しろって怒られるんだよ、あはは……」

「してくださいよ」

「市長さんにも配達しないとね。今年も」

「がんばってくださいね」

その後私は家に帰ろうとした。

「あっ。待って、今日の今朝の新聞ついでだからどうぞ」

今朝の新聞を貰う前にお金がない事に気がついた。

「あ、ウチの新聞は無料だから安心して。お金なんて概念ないから、この世界」

「変わった世界ですね」

「だろ? だから面白い世界って言われてたんだ、過去に。でも、あの時の人間が言ってただけで、帰れたかは不明だよ」

「そうでしたか……帰れてると良いですね」

ということで新聞をもらって一旦帰宅。

その新聞を置いてから、練習走行の場所に行こうと思った。

地図はもらったので(昨日のうちに一緒にもらった)、後で行こうと思った。

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