緑の聖者は砂礫の大地に実りを与える

シンゴペンギン🐧

第1話 「緑の男」

砂礫の大地に花が実らず緑が生えなくなったのはいつだっただろうか?

如何に魔法や科学の力が発展しても安心して暮らせなければ何もならない。


アジャル=スタッカートは心の中でそう呟きながら目の前の地龍を見て毒づく。


「幼体とはいえS級か!」


アジャルスタッカートはこの世界に置ける冒険者と呼ばれる治安維持と自由に世界を駆け巡り民を護り様々な依頼を受ける職業組合に所属しているA級冒険者の一人だ。


魔法素養が低い狼獣人であるが魔法技術のセンスは一流、身体強化にかけても右に出る者はいなく、単身多くの魔物を屠り、あらゆる戦争にも参加して武勲をあげ、冒険者でありながらも一代限りの名誉騎士の称号も得ている。


また誠実であり未来を考える男であることから彼を慕う者達も多い。


今は砂礫の国「ラザフォート」に滞在し、依頼を受けるなかで砂漠の異変を知り調査にきたということだ。



「・・許せ、君も恐らく住む場所を追われてこちらに来たんだろう、死人は出ていないが、国の者を傷つけたなら戦わないといけない」


アジャルは本来地龍は温厚な魔物で滅多なことでは人を傷つけないと知ってはいるし、腹を空かせているとは知っているが、こちらも生きる理由がある。


「無為に命を奪うのは好みではないが!」


「よう、色男、腹が満たさればいいのか?」


突然響いた男の声にアジャルは振り返る。


目の前にいたのは緑のローブを身に纏った軽薄な男、フードを被り欠伸をしながら地龍の前に立つ。


「あーん、なるほど、母ちゃんが病に倒れてんのか、そりゃ悲壮な眼もするわな、暴れたいわけじゃなくて、伝えたかった、そりゃ難儀だな」


緑の男はくくと笑うと


「そりゃ龍言語は取得する物好きはそうはいねえだろうなあ、おい、兄ちゃん、名前は?俺はグリーンマン、しがない旅人だ」


「俺はアジャル=スタッカート、狼獣人のA級冒険者だ。所属はなくフリーの」


「A級か、ソロっていうと結構凄腕だなあ」


グリーンマンはかかかと笑うと同時に地龍に眼を向けると


「じゃ連れてってもらえるか?母ちゃんのとこ、回復魔法もそれなりに取得しているからねえ」


「な、なんだあんた?」


「俺の紹介はまたあとだろ、色男、ついてくるだろ?」


アジャルは目の前の男の言葉に黙って頷いた。





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