芸術家変態論

鏡文志

第1話

全ての芸術家は変態である。


芸術家は、成長し続けなければいけないし、変形し続けなければならない。

大衆は芸術家が成長するように、甘い飴を与え続けなければいけないし、鉄の鞭を打ち続けなければいけない。


それは空へと向かう上昇ではなく、地へと向かう下降でもなく、蚊や蝿のように、平衡の世界を漂いながら這い続け、繰り返す衝突と反発の中を体当たりをしながら、世界とぶつかり続けていく正直さを、表現の内に称えていなければならない。



私の吸った血は、養分となり、血肉となって私の体の中に入りたもうた。

その甘美と引き換えに、私は痛みや痒み成分を、血を吸った証拠として残した。それは私が血を吸った末の、証拠であり、それは決して隠滅することはない。


全て芸術家は、虫のいい話に煽てられて、虫の好かん方向に行ってはならない。


自由と責任は表裏一体であり、ベネフィットを求める以上、リスクは避けて通れぬ不可避である。


芸術家は変形を続けるために、傷つき続けなければいけない。それを不幸と呼ぶのは、庶民の思考であり、芸術家が芸術家である以上、万の傷、千の心の傷は、生涯を豊かにする、変え難き宝物になるであろう。


芸術家はわんぱく坊主でなければいけない。芸術家は、おっぱいをよく吸う子供でなければいけないし、充分な熱量とそれに伴う忍耐精神を持っていなければいけない。そして、それが職務である以上、作品内容は、鑑賞者に耐える質量を持っていなければならない。芸術家万歳!

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芸術家変態論 鏡文志 @kagamibun86

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